第三十一話★ 二日目/ギルド長にイチャイチャをみられてました!
ーーッ!!ーー
メアリーのピアノが置かれた空間の向こう側!
通路。 死角になっていた曲がり角……。
そこからひょっこり現れたのは聞き馴染みのいい嗄れた声の老婆。
「ギルド長!」
エリスが頬を真っ赤にしたながら叫ぶと同時、「アンおばあちゃん!」
同じタイミングで叫ぶ。
本来は誰もいないところで行わなければならない愛しい人とのキスをこんな公の場で夢中になる。
しかも、誰も居そうにないから! 見られてはいないからと調子にのっていた。
だけどみられていた!
まさかの目撃!
ボクはピアノの前でドキドキしながらチラリとエリスを一瞥。
ピアノの橫で何事もなかったかのように焦り、朱色に頬を染める。
言い訳も説明もできない状況。
パニックになりながら両手の人差し指をチョンチョン。
エリスとはじめて出会ったこの場所。
あの時と全く状況が違う。
この状況をどう切り抜けるか?
ボクの視線に気付いたように髪を揺らして、真っ赤な顔で伏し目がちな瞳と目が合う。
どうしよう? エリスの瞳が心情を物語っている。
そんな心の中でエリスの声を受け止めるけど、ボク自身どう切り抜けたらいいかわからない。
だけど、そんな不安をよそにギルド長であるアンおばあちゃん……。
「カカカカッ!」と、楽しそうに笑い。
「気にしなくていい!、この僅かな時間でここまで中が進展するとは思ってなかったからなによりじゃ」
ボクとエリスがこんなとこでしていた事を責めるわけでも追及するでもなくまさかの展開。
「クックックックッ!」と皺だらけの顔をさらに皺だらけのしながら楽しそうに笑う。
そして……。
「この周辺を一時的に聖域にしたからのぅ、気にしなくていいぞよ」
なんと、エリスとのキスシーンを最初から応援していたかのような聖域化!
「まぁ、今頃は領主館は大混乱じゃろうがな……」
聖域化してくれたのは嬉しい。 だけど、ぼくがバケモノに拐われたことに疑問を抱きながらも
「メアリーもこんなに熱いのははじめてで喜んでるみたいじゃぞ!」 と……。
そして、「リュウのことを気にいっているみたいじゃ」
まるでメアリーの存在を感じているかのように老婆は言う。
そうだ。 ぼくはこのピアノに許された存在だと。
おばあちゃんがこのピアノをメアリーと呼ぶこと、そしてメアリーがまるでここにいるかのような発言。
メアリーの存在についても疑問が残るのはいうまでもない。
おばあちゃんだけじゃなくメアリーにまで見られていたとなると、穴があったら入りたい!
「この聖域も間もなく解けるじゃろう、後始末はワシに任せて二人は愛の逃避行なんてどうじゃ?」
おばあちゃんに見られ、メアリーにもみられているといわれ悶々する中、アンおばあちゃんが爆弾を落とすような提案。
伏し目がちだったエリスの瞳がパっと見開くとその瞳の中にハートが浮かんでいる……。
「ルフィも間もなく来るじゃろうて、こっちは上手くやっとくから数日だけ温泉街にでも身を隠すことじゃな」
ボクがどうするべきか迷いながらエリスと視線だけで会話。
考える余地はない! と、心の声。
ルフィが来るとなると面倒な事になるのはわかる。
最早エリスは温泉旅行……。
否っ!
愛の逃避行に身を捧げるつもりでボクの手を握る。
エリスのボディーランゲージを受けとめると、コクリと頷き意思表示。
「抜け道はワシの部屋を使うといい! 着替えや準備はワシの部屋に用意してあるからのぅ!」 と。
ギルドからの抜け道を知っているかのようにエリスが手を引く。
背後からの掛け声に「おばあちゃんありがとう!」
とエリスは返し、その脚はまっすぐにギルド長の部屋へと向かう。




