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第三十話 二日目/舞台はあの名作の甲板の上



えっと…………。


 見覚えのある景色に、シチュエーション。

 つい今まで領主館で新しい部屋。


 信じられないくらい大きな部屋で沢山の人と獣人。


 そして、ぼくが疲労で動けなくなっていたところに、ミチルが馬のションベン……。


 否! ポーションを飲ませてくれて一瞬で復活したのに驚いていた時だった気がする。


 元の世界と同じように赤く染まった夕焼けに包まれて侘しさを感じていた瞬間だ。

 その後、なにが起きたのか覚えていない!


 気がつくと、つい昨日と全く同じピアノを前に座っていた。


まさかのループする世界?

 

 違う! ボクの記憶ではこれはループの世界ではなくて現実。


 その証拠に昨日と違う点!

 大勢の人と獣人が行き来していたのに、今は数人の人と獣人だけ。


 そして、この後に館内アナウンスが流れたはずなんだけど……。


 「リュウではないか!」


 

 そう、エリスと会わせ鏡のように息ぴったりの同じ仕草をしたはず。


「随分グロッキーで倒れたみたいだけどもう大丈夫なのか?」


 そう、ボクはルフィに運ばれてベッドに寝かされていた。


 エリスの両手がボクの両手を握り体調を気にする。


 「この世界のポー……。」


この世界のポーションは凄いよ! 流石ファンタジー世界! と言おうとした時だ!


〔緊急事態発生! 緊急事態発生! リュウヒビキがバケモノに拐われました!〕


ボクがバケモノに拐われた?!


〔全ての冒険者及び、ギルド職員は至急ヒビキ リュウの確保と保護!〕


 「なぁ? リュウはバケモノに拐われたのか?」


 ふんわりと甘い香りでボクを包みながら赤い瞳で見つめボクを指差す。



 〔これは緊急クエストです! これは緊急クエストです〕


 手刀を作り左右に振る。


 館内の賢者の石が照明として照されている中、左手に嵌められたリングが青い光の尾を描く。



「リュウが、無事ならそれでいい。 私も一区切りついたからな……」


 と、思わせぶりな瞳でボクを見つめる。


ボクは瞬時に理解する。

 鍵盤蓋を開けると規則正しく並ぶ白と黒の鍵盤。


鍵盤の上を右手と左手がゆっくりとしたテンポで奏でる。


 この時間にこれを演奏するのは反則かもしれないけど豪華客船のテーマソング。


 この、心と身体に響く調和の取れた音が響くと、指先がいつものように動いているのを感じる。


 フットペダルも活用しさらに音を重ねるとこの映画のワンシーン。


 大きなクルーズ船の甲板の上!


 潮風を全身に感じながら両手をひろげ、そのままヒロインと抱き合い濃厚なキス。


  何故今、自分がこの曲をチョイスしたのかはわからない。

 

 だけどピアノの直ぐ横で背中を預け、瞳を閉じるエリスの満足そうな顔を見れば、このチョイスがドンピシャなのは言うまでもない。


 閑散としていた館内がまるで二人だけの世界のように響く。


 地下坑道のあの空間での濃密な時間をおもいだす。


 伴奏と旋律が絡み合う度に、エリス様の唇の感触と温もり。


 この映画の曲の間奏部。


 普通は短い間奏だけど敢えて間奏を長引かせる。


 彼女は気付くか?


 メロディに身を委ねていた瞳がうっすらと開く。


  ボクの視線に気付いたように見詰めて返すと、やっぱりきた。


 エリス様の腕がボクの肩に回されてそのまま大胆に、まるで映画のワンシーンのように求めてくる。


 ここが公の場所だというのを忘れてエリスは唇を重ねてくる。


 彼女に視界を奪われているけどボクの指先は鍵盤の上を離れずに演奏を続けている。

 

 完璧に覚えている曲なら目を閉じても演奏できる自信はある。


 もちろんエリス様もボクの演奏を邪魔しないように、気を遣っている。


 まるでこの曲目を知ってるかのように……。


 地下坑道での濃厚なキスを思い出させるかのように今!


 エリスの唇と触れ合い、クライマックスを迎える。

 そしてその濃密な時間は、それがまるで夢であったかのように儚く、最後のワンフレーズ。


 名残惜しみながら彼女の唇がゆっくりと離れ、夢ような時間が終わる。

 否……、終わろうとした。


 残り最後の一小節……。



「ホッホッホッホッホッホ、おお二人さん熱いの~!」





お読みくださる読者様の存在に尊敬と感謝を!

 貴重なお時間をいただきまして、すごく嬉しいです。

 ブクマや評価、感想レビューなどしてくださると励みになります。


※ 活動報告に創作裏話もあるのでお暇な時にどうぞ

 お読みくださる全ての皆様に栄光と希望と祝福がありますように!

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