表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/82

一日目/ぼくは出会い系魔法で召喚されたらしい

貴重なお時間ありがとうございます


 自分で演奏しているからこそわかる精密で正確な演奏に身体の内側から熱くなるのがわかる。


 テンポも音の強弱も一瞬たりともミスってない。


 沢山の視線に拘束され、みられていることを忘れるくらい演奏に没頭していた時だ!



ーーそのピアノには触らないでくださいぃ!ーー


 ピアノへ触ってはいけないという注意がされたような気がしたけど手遅れだ。


 


 鍵盤から視線をそらすと彼女は舞うように踊っている。


 赤い衣装が燃え上がる炎のように揺れ、舞い上がる。 


 両手を拡げクルリとターンをしたかと思えば軽やかにジャンプして着地。


 幻想即興曲の激しい旋律に合わせるかのようにピアノの周りを周回。


 始めからこの曲に合わせるような動きにボクの胸は高鳴る。

 

 彼女に負けてはいられない!


 この場を凌ぐという理由とはいえ、ボクもそれに応えなければならない。


 今までに何百回と繰り返し演奏し身体が覚えているとはいえミスは許されない。


 笑顔を作り、全力で踊る彼女のためにも!


 


 

 鍵盤の上の指先は左手と右手が別々の生き物のように違う動き。


 数え切れないほどの打鍵とそれに答えるように響くピアノの音色。


 燃え上がるような情熱と、儚さと切なさ、穏やかさと優しさを醸し出している。


 ボクたちを取り囲む観衆はその場から身動きが出来ないかのように見ている。

 

 ボクの演奏に聞き入っているのか? それとも、彼女の踊りにみいられてしまったのかはわからない。


 彼女が僕の前を過ぎる度にキラキラとした瞳がボクをみつめているような感覚。  





 そしてスピード感のある序盤から一転、ゆっくりとしたテンポにも合わせるように彼女は全身を使い優雅に踊り続ける。

 

 ボクは思わず息を呑むと自分の胸がドキドキしているのに気付く。

 

 観衆がボク達に釘付けになっているように、ボクも彼女に釘付けになっている。


 ダメだ! 今はこの場を凌ぐために演奏に集中しなくてはならない!


 

 幻想即興曲の演奏とそれにぴったり合うような彼女の踊り。


 本音をいえば、このままの時間がずっと続いて欲しいと願う。


  最後の小節に入るころには伴奏と旋律が織り成す心地好さ。


 ボクは残念な事に初対面であるのに関わらず彼女の虜になってしまったことに気付く。


 僅か4分前後の演奏が終わるとその余韻に浸りながら息を吐きだす。


 

 目を綴じて数秒。 作法にのっとり鍵盤蓋を閉めて礼。


 白髪の少女が肩を上下させて息を切らしている。

 

 彼女への最初の一言、『踊って!』 の指示に最初は戸惑っていたけど、直ぐに雰囲気を掴み躍りだした。

 

 激しい踊りではないけどメロディに合わせるようにピアノの周囲を動きまわる優雅な動きは幻想的の一言だった。


 



 ボクの周囲、否。 ボクと白髪の女の子を取り囲む観衆からポツポツ、と降り始めた雨のように手を叩く音。


 『ねぇ、やったわよ! これでこの場を凌げるかしら?』


 息を切らしながら聞いてくる彼女にボクはその橫に立つと万雷の拍手に包まれ、「この拍手が答えだよ」


 と、平静を装いながら一言。


 改めて周囲の観衆に向けて腰をおる。


 「はぁ……。よくみたらエリス様じゃないですか?! そちらの方は?!」 


 アナウンスの声の主であるシンシアだ。


 子供のように幼い顔立ちで青い髪。


 笑顔のままでいれば凄く可愛いのだろうけど、しかめっ面と口調がその可愛らしさを台無しにしている。


 「彼は私の客人だ! 最近流行りの出会い系の魔法で知り合った」


 出会い系……。 ちょっと待って、ここがボクにとって異世界なんだけど、ボクの世界にも出会い系のアプリとかイロイロあるのにまさか、異世界でも出会い系!?


 出会い系に関しては古今東西やることは同じ。 話して、会ってする事するだけ……。


 なにをするのかはご想像にお任せするとして、でも昨今の出会い系では闇バイトへ直結するものもあるらしい。


 というかボクにはこのエリスと呼ばれた彼女となんらかのやりとりは一切していないのだけど……。


ボクは転移者だとしてエリス様?

 白髪の彼女も、転移者だと思ったけど……。


 「続きはウチでしよっ☆」


 と、キラキラと輝く瞳を向けてウィンク。


 シンシアに踵を返すと同時赤い衣装を翻しボクの手を握って引っ張ると、強引にその場を離脱。


 ボクを取り囲む人たちが身動きできなかったのは彼女の存在を知っているから?

 

 しかも様付けされてる立場だから、から?

 エリス……、エリス様だっけ?

 彼女は一体?




 


読みくださり、ありがとうございます。

 少しでも続きが気になりましたら、次のおはなしも読んでもらえたら嬉しいです。

 ブクマ、評価感想等頂けたら励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ