第二十五話☆ 二日目/異世界事情とエリス様の不安
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彼女は不安気な表情でぼくを見詰めて話しはじめる。
「この世界は平和で退屈な世界だ……。」
ボクの首に絡む腕の力が緩くなり、赤い瞳が僕をまっすぐに見詰めている。
続けて軽く息を吸い込み、「この世界には戦争もなければ魔王も存在しないの……」
確かに、僕が知ってるファンタジーの世界や異世界に比べたらこの世界は平和だ。
「リュウにとって戦争に巻き込まれる事や魔王との戦いで苦痛や喪失で絶望的になることはないから安心して」
この世界は絵本のように平和に満ち溢れた世界だと……。
まっすぐな瞳でエリス様は話しはじめ、ゼロ距離で寄せていた身体に僅かな隙間をつくる。
「ぼくはまだこの世界に来たばかりでこの町から一歩も出てないからなんとも言えないよ」
ぼくはこの世界の事を全く知らない。
この世界について知ってる事といえば、賢者の石と呼ばれる鉱石が生活の支えになっている事、それから獣人と人間が共存している世界だという事くらい。
「この世界は冒険者にとっては凄く退屈なものなの……。
そして転移者であるあなたにとってもね」
確かに全ての冒険者にとってワクワクするものやゾクゾクするようなスリルがなけるばスゴく退屈だし、面白くない。
「確かに人って退屈は嫌いだし、スリルを求めてしまうよね?」
胸を熱くするものがなければどうするか? 人々はスリルを求めて冒険にでてしまう。
ぼくは昨夜と同じように彼女の話しを否定せずに耳を傾ける。
「そうだ。 だからこそ、全ての冒険者はスリルを求めてしまう。 それはもしかしたらリュウ、あなたも……」
つまり僕が楽譜を探すためにギルドで情報を集めたり自ら赴いたり、時にはこの世界の危険な場所へ言ったり……。
「だから、リュウもギルド頼みにしないつもりであろう?」
その通りかも知れない。
ぼくはエリスに最高の演奏を聴かせるために楽譜を求め、もしかしたらもある。
僕の回答に反対も否定もせず、真剣な表情でうけとめてコクリと頷く。
だけど、僕の言葉に彼女は一度緩めた腕に再び力を込めゼロ距離!
そしてボクを見詰めるように顔を上げるとエリス様の瞳に涙が溜まり今にも泣きそうな雰囲気。
だけどそれを我慢して一瞬だけワナワナと震える。
「だからお願いだ! わたしの側にずっと居て欲しい!」
「もしどこか遠くにいくことがあっても必ず戻ってきて……」
僕とエリス様が産まれたままの姿で抱きしめ合い、それを包み込むように流れる清流。
彼女が何を言いたいのか、なんとなく理解できた。
恐らく、今までに何らかの理由でエリス様の側にいた人がスリルを求めて帰らぬ人となってしまったのだろう。
昨夜、彼女が寂しかったという慟哭に僕は納得する。
「だ……。」
エリス様は、ボクが大丈夫と言おうとした瞬間、ゴクリと唾液を呑み込み一度目を閉じて見開く。
そして……。
ーームグッ!ーー




