第二十三話☆ 二日目/鉱山に植え付けられた故郷の技術
鉱山ギルドと書かれた多きな施設。
ヘルメットとグローブも当たり前。 革鎧のような装備を着せられて、トロッコ列車でガタンゴトンとゆっくり。
運搬用のコンテナにエリス様と2人。
前方の牽引車には二人の獣人がトロッコ列車のシーソーを濃いでいる。
向かうのは最奥の作業現場だそうだ。
照明としての明かりはなく、通路を照してるのは頭上を浮遊する火の玉がバチバチと燃えているだけ。
耳を済ますとどこからともなくピアノの音色。
リズミカルな作品の音色ではなく等間隔で同じ音が、ピロリン、ピロリンと鳴ってる。
「このピアノの音は迷路のようになってる坑道で迷子防止の役割をしているんだ」
そういえばルフィが、ピアノは鉱山で音がなるだけのカナリアとして使われていると言っていたのを思い出す。
「もし、迷子になったらピアノを頼りに進めばいいからな」
と、今まで順調に進んでいたトロッコが減速する
「この急勾配を上らなくてはならないからな、ここをのぼればあとはくだりだけだ」
どうやらエリス様はこの鉱山に何度も足を運んでいるかのような口調。
「えっほ! えっほ! えっほ!えっほ!……」
獣人の掛け声が坑道に響く。
ボクもトロッコを濃いでみたいなんて言えない。
でも、ボクがトロッコを漕いだら全然進まないだろうな……。
頂上に到着したのか? トロッコが停止する。
「よし、ここからは揺れるからな! しっかり捕まってろよ」
浮遊する火の玉に照らされてコンテナの縁に捕まるエリス。
揺れるだけなら大丈夫!
トロッコならそんな大した事はないだろうと、そんな考えは甘かった。
次の瞬間、ボクは死ぬかと思った。
獣人がゆっくりとシーソーを上下させて前進させてまもなく……。
獣人がシーソーに捕まるように身構えると飲み込まれるようにトロッコが傾く。
ゴォォォ!と、トロッコの車輪がレールを叩きつける。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
想像以上の速度にぼくは絶叫する。
だけどエリス様は余裕そのもの。
しっかりとコンテナの縁に捕まり火の玉の明かりで照らされた顔が笑っている。
「のあぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
ジェットコースターもびっくりのスリル!
しっかり捕まってなければそれは生命に直結。
「きゅあぁぁぁぁぁぁ!」
しかもただの傾斜だけではなく、右に左にコンテナをギシギシと揺らして、さらにガタガタガタガタガと上下に揺れる。
「トロッコで怖がるなんてリュウがはじめてだぞ! プププ」
エリス様がコンテナで怖がるぼくをみて笑いだしたのは減速してゆっくりとしたスピードになった時だ。
「はぁ、はぁはあ……。死ぬかと思った」
エリス様が楽しそうに笑いだしたときには、炎の明かりに照らされて赤く染まる剥き出しの岩や亀裂ができた岩場。
そして、坑道内に作られた頑丈な物置小屋のような前。
トロッコ列車の停車駅みたいな場所。
あちこちからピアノの音がピロリンピロリンと違う音が反響し、ピアノの音を書き消すような轟音が響く。
「少し歩くけど大丈夫か?」
エリス様が心配してくる。
「あんな思いしないなら大丈夫だよ」
トロッコ列車で絶叫アトラクションの体験をさせられる事に比べたら歩く事くらい平気だ。
「ここがウェーンの財源。 賢者の石の採掘場だ」
ぼくは思わず左手の薬指に嵌めた指輪を見つめる。
「この採掘場での装備やトロッコ列車ももちろん異世界人の技術だ」
思った通り。ピアノや食料、エンターテイメントだけでなく、さらに高度なトロッコ列車というものまでこの世界には沢山の文化や技術がある。
「退いて退いて退いて~」
と、荷物を運搬する一輪車や荷車がゴトゴトと音を立てて横切る。
頭上を浮遊する火の玉だけが光源かと思ったけど、それ以外にも通路のあちこちで賢者の石が灯りを灯し揺れている。
ピアノの音と時折響く轟音、どこか遠くで響く落石の音。
「爆破させるぞ~!」
「総員待避~」
五番通路開通したぞ! このまま三番と繋げて通路を作れ!」
「三班は運搬と撤去! 四班と五班は、ここの掘削!
「おい! そこの邪神! 寝てるなよ」
「女神様もよっぱらてるなぁ!」
……。
さらに沢山の掛け声があちこちから響き、場違いな掛け声もある。
だけど凄く活気があっていい雰囲気なのは間違いない。
「こっちだ」
エリス様のふわりと揺れる白い髪と、場違いな甘いバニラの香り。
ぼくは彼女を見失わないように目をそらさずについていく。
「これが市井に出回る賢者の石の原石だ」
エリス様が通路のあちこちに落ちている拳ほどの大きさの石を拾いあげる。
ゴツゴツとした歪な形。
見た目よりも少し軽い感じだ。
「ここからさらに石を割り鉱物を採取したり! おおきいものはそのまま賢者の石となる」
なるほど、確かに、良く見るとところどころガラスが埋め込まれているかのようにキラキラとしている。
「リュウに見せたいのはこの先だ。 ちょうどウチの真下」
エリス様の案内。
ちょっとした掘っ建て小屋があり、やはり賢者の石による揺らめく灯り。
耳を澄ませるとサァァ~っと水が流れる音。
金網で仕切られた特別な場所のような雰囲気。




