第二十話☆ 二日目/ウェーンの住人と認められた瞬間に始まる三文芝居
ヌゥっと、嗄れた顔が天板にうつりこむと、目を細め腰を折り曲げて指の動きに注目される。
「なるほど、あのエリスにも見初められ、メアリーだけじゃなくモテモテじゃのう、ワシももっと若ければ放っておかなかったぞ」
と、おばあちゃん。
演奏中に冗談交じりに言ってくる。
アウッ! 鍵盤の上、一瞬指運びを間違えそうになったなんて言えない。
脳内再生が便りだったアヴェマリアの演奏も終盤。
最後のフレーズに差し掛かった時だ、開いていた天板に沢山の人影。
「貴様ぁ~昨夜は見逃してやったにも関わらず、そのピアノに触るなと言っただろう!」
青髪で幼い顔立ちのなんとなく見覚えのある受付の人を中心にその取り巻きのような数人に獣人と……。
…………。
「リュウ!」 遅れて到着したのは白髪のエリス様だ。
青髪の受付の子が声を荒げ、「ものども! ヤツを捕まえろ!」
と、どこかの茶番劇のセリフ。
もう、エリス様以外は青髪の取り巻きとしか思えない。
エリス様の瞳がボクを心配そうに見つめてるのがわかる。
数人の取り巻きがジリジリと詰めより彼我の距離。
「じゃかぁしぃわぁ! シンシア! 受付の分際で調子にのるでないわぁ」
ボクのすぐ近く、1歩身を引いていたアンおばあさんがボクの壁となり咆哮をあげる。
嗄れた声だけど、叫んだ時の喉から出る声にエッジがまざりその声に凄みが混ざる。
「ばあちゃん!」
「アンばあちゃん!」
「アン様!」
「ギルド長!」
それぞれの呼び方でおばあさんを呼ぶ声、そしてその中にギルド長?
あと一歩の直ぐ間近で取り巻きがピタリと止まる。
一瞬の間をおいて
「この紋所が目に見えぬわけではあるまいな!」
印篭を付きだすようにかかげ、 これもまた日本から持ち込まれた文化だろう。
こんな三文芝居が目の前で繰り広げられるとは思ってなかぅった
「このモノはウィンダミア王国亡き王女、メアリー様が認めた人物!」
何度も練習したのか? イヤ、それなりの場数を踏んだ口上。
がなりあげる声で口上は続けられ「そして、エリス様が見初めた人物!」
…………。
ウェア? 聞き間違いか? “エリス様が見初めた人物ぅぅぅ?”
遠巻きの後ろ、先頭に立って指揮していたシンシアの後ろでエリス様の顔が一瞬にして真っ赤になりその場でフリーズ。
エリス様が真っ赤になってしまったと言うことは聞き間違いではない。
「それはズバリこの者がウィンダミア王国の住人であり我がはじまりの街ウェーンの住人である証明じゃ!」
と締めくくった。
ピアノを中心に静まりかえる空間。
どうしたらいい?
だけど、そんな疑問は直ぐに捌かれて脇に追いやられる。
「ばあちゃん! だけど!」
おばあさん……、 訂正。 ギルド長の言葉に方々からの意見。
「そいつは異世界からの転移者!」
ボクが異世界からの転移者と言うこと。
もう隠す必要もないけど、ボクはこの世界とは別の世界からきた転移者だ。
もちろん転移者だと隠す必要もないとおもっているし、聞かれたら転移者だと答えるつもり。




