第十九話 二日目/メアリーに捧げる脳内再生頼りのアヴェマリア
昨夜のアナウンスで“ピアノに触らないでください” の意味はどこかの王国のお姫様のものだったからという理由のようだ。
つまりそれは高級品であり、特別製のピアノだということだ。
そんな高級品や特別製な物を無断で演奏してしまったことに罪悪感。
「おばあさん、ありきたりの曲ですけど弾かせてください」
一言だけ断りを入れ一礼。
せめて符集があれば悩む必要は全くないのに……。
左手は優しく身体に響く低音の音色、コンマ数秒の間を開けて音を重ねるようの右手の音色。
低音が支え、重なりあう二つの音色の調和が広がり、ゆっくりとしたリズム。
このピアノの持ち主の事を考えるとこの一曲しかないという直感。
メアリー姫がどんな思いでピアノを引いていたか、どんな思いで死ぬまで演奏していたかはわからない。
だけど、亡くなるまで愛していたとなるとそれだけ思い入れも深く、凄く大切にしてい、……たんだと……。
(勝手な想像だけど)
でもこれだけは言える事がある!
それは、このピアノがボクとエリス様を引き合わせ、窮地を救ってくれたこと。
【ショパン作曲、アヴェマリア】
この曲はクリスマスに演奏されるイメージが強い曲だけど亡くなった人に向けて演奏される曲でもある。
柔らかく優しい音色を奏でながらメアリー姫を思い、エリス様を思い感謝を込めた演奏を奏でる。
ただ1つ残念なのが、楽譜がなくて脳内再生の記憶を頼りに演奏していること。
ハッキリ言って自信はない。
メアリー姫の趣向、そしてあんおばあさんの求める曲種かどうかはわからない。
だけどぼくは記憶を頼りにリズムと音の強弱を意識する。
せめて、楽譜が欲しい。
譜集! ドビュッシーかシューベルト……。
わがままをいえば全ての譜集。
ボクは邪な願望を抱きながらも身体に染み付いた演奏スキルを存分に発揮させる。
集中集中! 脳内再生が頼りだから、失敗ほ許されない。
ほぼ決まった位置でしか動かなかった指先が、光りの尾を引いて移動した時だ。
いままでピアノの真横で聴いていたおばあさんがボクの隣で鍵盤を覗き込んできた。
「素晴らしい指捌きじゃのう」
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