第百四話/三日目昼 手渡しされた花束にエリスは何を思ったのか?
ふんわり柔らかくさわり心地のいいエリスの髪。
頭をポンポンと撫でると「リュウ……」、と……エリスはそれに答える。
エリスはびくびくと震えていた。
ボクが完璧に演奏できなかった事に関しては後回し。
「結婚式はあれからどうなった?」
「それなら……、 テリーとマリオンはほーちゃんの背中に乗って麓までおりて戻ってきたところだ」
と、元の世界の結婚式についてベルチェにもそれなりの知識があったようだ。
「ブーケトスとか言ったか?」 エリスは胸をポンポンと、花束を出す。
バニラの香水で香り付けされたものではなく、くっきりと自然なバニラの香り。
「まさか……!」 ブーケトスまで再現したとなると、エリスが食いつかないはずはない。
ちいさな星形の花弁がアクセントになっている、白で統一されたおしゃれな花束……。
「ああ……、貰ってしまった」
ブーケトスと聞いて、投げられたブーケをエリスがキャッチしたわけではないようだ。
「リュウの世界では、花嫁が投げたブーケをキャッチしたものが次の花嫁なんだろ?」
その通りだ。 元世界の結婚式では、花嫁が投げたブーケを奪い合うのが常のブーケトス。
予想した展開とは違う、まさかの手渡し。 手渡しの場合どうなるか聞いたことがない。
「ブーケトスは投げたものをキャッチが基本だから渡されるのはどうかわからないよ」
次の花嫁になれるかどうかと聞かれたハズだけど、ボクは思わず答えをはぐらかす。
エリスなら、じゃぁ! 次は私達の番だな! と返してくると思った。
だけどエリスはブーケを抱き締めるように抱え、「それにしてもやっぱりいい香りだな」
と、落ち込んでいたのがウソのように表情を変える。
……。
ブーケの香りをあじわうかのように花束に顔を埋めたエリスにボクは思わずドキっとした。
すごく安らいだ表情……。
ーーポタリーー
だけどぼくは花束に顔を埋めるエリスが花束に一粒の涙を溢したのを見逃さなかった。




