第百話 三日目 朝/メアリーのぶちギレ
「アワワワッやめろ! そこまでする気はなかったんじゃ」
牧師を見下ろして睨みつけるように仁王立ち。
「た……、助けてくれぇ」
その場にペタンと腰を落としてマヌケ面の牧師。
「ボク達の結婚式を台無しにしようとしたんだもんね?」、牧師の弱々しく怯える顔を見下ろして一言。
こんな場面、最初から最後までエリスが見たら憤怒の如き振る舞いになるのは当然。
「ボクが男だって気付かなかった事にはなにもいわないよ!」
後で誰かに言われるんだけど、この時のボクはネジが跳んでたらしい。
バサッと、牧師の目の前で自分でスカートを捲りあげたなんていえない。
「プレドちゃん、そのくらいにしようか? あとはこのメアリー様がおしおききするわぁ」
と……、不自然に揺れるカーテンと牧師の襟首を掴んで持ち上げるゴーストハンド。
「全く、リュウぅう! もっと早くウチを呼びなさい!」
と、見覚えのある青い瞳の日本人の顔立ちで青いドレスのメアリー。
神秘的な顔立ちとその可愛らしさからは想像できないほどの豹変。
悪鬼も黙る鬼の顔。
「ねぇ、あんた! ウチらが酒も飲めないとかいってなかったかしらァァァ?」
つい数分前にエリスが投げた聖書が、暗幕に吸い込ま、『アウチッ!』とか言ってたような。
牧師も牧師だけどメアリーもメアリーで悪ガキやヤクザとおなじような因縁をつけている。
壁はないけどドンッ! と壁ドンしたり、ガツン! と股ドンしたり
「それに、この結婚式、ウチ、凄い期待してんのよ! 運命よ! う・ん・め・いィ!」
なんとメアリーまでがこの結婚式に期待してるそうだ!
「この世界でもどこの世界へいってもこの運命で入場から誓いのキスなんてないのよぉぉっ!」
メアリーがこの結婚式に並々ならぬ期待を寄せているのがわかる。
「アンタッ! わかるぅぅぅ?」
「ぅぅぅぅぅ……」
と情けない声で怯える牧師
氷のように冷たい瞳で牧師の長いヒゲを引きちぎる勢いで引っ張るメアリー。
「あうあうあうぅっ!」 と、さっきまでの勢いが恐怖で声が震えている。
「それからねぇっ!」 と、語気を強め牧師の胸ぐらを掴み、「酒は天下の回り物よ! アンタに、あの小娘をバカ呼ばわりする道理はないわぁ!」
と胸ぐらを掴んで前後に激しく揺らす。
泣く子も黙る怒涛の勢い。
棒を投げればヤクザにあたる!そんな勢いでメアリー。
牧師に謝罪も言い訳もさせる間を与えない物凄い剣幕!
僕たちと同レベルだなんて言えない……。
だけど、鬼のような形相で牧師に想像以上の恐怖とトラウマを植え付けたのは間違いない。
牧師の襟首を掴んでいた手がスゥゥッ、と消えると牧師がそこに「グヘェ……」と座り込むように項垂れる。
「まぁ……、こんなもんでいいかしら?」、悪鬼も黙る鬼の形相がスゥッと消える。
メアリーはニッコリと笑ってボクに踵を返して、スゥッと、フェードアウト。
だけどきえかかった背中で振り返ると、「プレドちゃん、ボク達の結婚式、メアリーすごく期待してるから、頑張ってね」
と、親指を立てて応援してくる。
それがまるで夢だったかのように何事もなく、聖域化が解除されると思った。
「プレドちゃん! 何か困ったこととか助けて欲しいことがあったら直ぐメアリーを呼ぶんだよっ!」
と小窓から話しかけるようにメアリーがひょっこり顔を出し、それだけいうと、 「それじゃ、もうすぐ聖域化解けるからね! 頑張って……。」




