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第七十九話 「Three of SIXTEEN・SELECTED!」

「…………」


周囲に見えるのは()()()と変わらない見慣れた通学路。それ自体はなんら変哲のない光景だ。……ただ一点を除いて。


「大和くん! 月が……!」


俺たちが学校を出たのは17時。どれだけ下校に時間がかかったとしても、満月がハッキリ見える時間帯になるはずなんてない。慌ててスマホで時間を確認すると、


「日曜日!? そんなはずないだろ!?」


画面が示したのは11月15日(日)という日付。下校直前に陽菜を誘い、夕食を共にしようとした11月12日(木)から3日も後の日付だった。そんな未知の光景に困惑していると、


「隊長、捜索願の出されている高校生の二人を見つけました!」


警察官らしき風貌の男性が、歓喜の声を上げながらこちらに近寄ってくる。捜索願? もしかして俺たちのことなのか?


「よかった! 金曜日に捜索願が出されてから、警察総出で君たちを探していたんだ。だけど、無事そうでよかったよ。いったん病院で様子を見るから僕についてきてくれ」


謎の時間経過に捜索願という単語。現実を整理しきれないながらも、俺と陽菜は眼前の大人の指示に従い、街一番の病院に向かった。


***


「大和、心配したんだから!」


「陽菜ちゃん! 怪我はないかしら? ほんとに、ほんとにあなたが生きていてよかったわ!」


病院に到着すると、そこでは俺と陽菜の両親が心ここにあらずといった表情で俺たちを待っていた。生まれてからほぼ毎日見てきた顔のはずなのに、少し久しぶりに感じるのは気のせいだろうか。


「あ、ああ。俺は元気だよ」


「私も体調に問題はないよ」


「お母さま方。申し訳ございませんが、健康確認のためにもう少しだけお子様をお預かりしますね。数日容態を観察した後は、元の生活に戻れると思いますので」


咄嗟に抱き付いてきた母親と軽い抱擁を交わし、看護師の指示に従い俺たちは病室に運ばれる。その道中、看護師から現在俺たちが置かれた状況について話を聞くことが出来たが、どうやら俺たちは3日ほど行方不明になっていたようで、それが今日発見されたらしい。そして、数日入院して体調に問題がないかを確認してから元の生活に戻されるとのことだ。……この3日間の記憶がないのが少し怖いが、体調に異変は無いし、何も問題がなかったと考えようか。


そのように看護師と雑談をしながら病室に向かっていると、別の看護師二人が世間話をしている声が耳に入ってきた。


「聞いたかしら。今日だけで三人も行方不明の子供が見つかったらしいわよ。それも、その中の一人は3年も前から捜索願が出されてたみたいで、生きていたのが奇跡の子よ」


「あぁ、あの前髪の子か。捜索願の届出人が親じゃなくて学校だった。随分複雑な家庭環境だったみたいだけど、誰かに匿われてたのかしら? まあ、いずれにしろ若い命がたくさん助かってよかったわね」


今日だけで三人。おそらくその中の二人が俺と陽菜だろうが、珍しい経験をしたヤツが他にもいるなんてな。


「着きましたよ、古賀大和さんと南雲陽菜さん。お二人はこの部屋で数日過ごしていただきます。何か困ったことがあれば、ナースコールで呼んでくださいね」


そのように聞き耳を立てながら歩みを進めていると、315号室━━俺たちが入院する大部屋にたどり着いた。案内してくれた看護師を見送った後、病室の扉を開けると……、


「ご、ごめん。け、怪我はないかい」


同じタイミングで部屋から出てこようとした、左目が隠れる位置まで伸ばした前髪が特徴的な少年とぶつかってしまう。年齢はおそらく俺たちとそう変わらないだろう。


「大丈夫! 俺の方こそ前を見てなくてごめんね」


何はともあれ謝罪を行い、体勢を崩した少年に手を差し伸べる。すると彼は、服についた埃を払いながら言った。


「あ、あまりこの病院に慣れてなくて……。俺、今日から入院だからさ」


へえ~。奇遇だな。


「そうなんだ。実は俺たちも今日から入院なんだよね。といっても数日だけど」


同じ病室で生活する上、年齢も近いんだ。せっかくなら仲良くなりたいな。


「……! そうだ、自己紹介がまだだったね。俺の名前は古賀大和。そして、……」


「私の名前は南雲陽菜です。これからよろしくおねがいしますね」


「ず、随分距離が近いみたいだけれど、どういう関係性なの?」


「ハハッ、ただの幼馴染だよ」


言われてみれば、以前より距離が近い気がする。まるで、数々の死線を共に潜り抜けた相棒のような。


「……よしっ! これで俺たちの自己紹介は終わりだ! キミについても教えてくれよ。こうして同じ病室になったのも運命だと思うし、友達になりたいからさ」


そんなこんなで自分たちの説明を終え、俺は相手に自己紹介を促す。友達になりたいという言葉は紛れもない本心だ。そんな俺の言葉に対して、眼前の少年は密かに微笑みながらこう告げた。


「……フフッ、……友達か。そうだね、俺も自己紹介をしないとだね。俺の名前は━━」

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