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第七十七話 「ヤマモトヒュウガ④」

「……勢力拡大が停滞してきたな」


エセックスが仲間に加わって半年が経過したころ。彼女の持つ情報屋としての能力が予想以上であったこともあり、もの凄い速度で周囲の小国を傘下に加えていった。しかし、組織の規模と管理難易度は比例するようで、支配下にある地域が片手で数えられなくなったぐらいから勢力拡大に陰りが見え始める。


「……私は基礎的な教育すら満足に受けておりませんので、武芸全能の加護でしかお役に立てません」


全身を漆黒の鎧で覆うという新しいスタイルを確立したネルソンから、謝罪の言葉が発せられる。彼の言う通り、支配下地域の管理は主にエセックスに頼んでいたわけだが、彼女も政治能力は並程度だということもあり、一人体制での為政には限界が来ていた。そんな時、


「ヒュウガ様。ある噂を手に入れました。MBTIとしての素質を持ちながら、圧倒的な政治能力も兼ね備えたホーネットと名乗る者がいるそうです」


情報収集に出かけていたエセックスが帰還と同時に頼もしい言葉を聞かせてくれた。


「よくやった。だが、その噂を手に入れる際に、俺との約束は破ってないよな」


「もちろんでございます。体を使った一切の計略を禁ずる。ヒュウガ様と約束して以来、一度も破ったことはございませんわ」


「それでいい。強者である我々選民ノ箱庭が、そんな弱者の代名詞のような行為をしていいはずがないからな」


「お褒めに預かり光栄です。もっとも、この体は既にヒュウガ様だけのものです。禁止されていなくてもヒュウガ様以外に身を委ねるつもりはございませんわ。……抱いていただける日を今か今かと待っておりますのよ」


結果だけでなくその過程にも一安心したところで、俺はエセックスの情報を参考にして正式な指示を出す。


「冗談はよせ。だが、その情報を手に入れてきたことには感謝する。……ネルソン、そのホーネットとやらを仲間に加えに行くぞ」


「……御意」


「エセックスは引き続き、MBTIおよび保持者のいない精神核の捜索に当たってくれ」


「うふふ、仰せのままにですわ」


***


「おい、この国の王であるホーネットと話がしたい。ここを通せ」


「私がホーネットです。ですが、こう見えて多忙でして、面会は一部の人に限定しているのですよ。……そうですね、丑の刻のみ光るとされる夜光石を献上するのであれば、面会を考えてもよいでしょう」


◇◇◇


「ホーネット、こいつがお目当ての品だ。半年もかかっちまったが、これでお前と話せるんだよな」


「……!? 随分と面白い人だ。いいでしょう、面会の時間を設けますので私についてきてください」


◇◇◇


「そういえば、貴方達の名前を聞いていませんでしたね」


「確かにそうだな。俺の名前はヤマモトヒュウガ。そしてこいつはネルソンだ」


◇◇◇


「随分と早いお出ましですね。……この様子だと、奴らの感情は殺意のみ。加護による無力化は難しそうです。となると、戦闘による応戦のみですが、いかんせん数が多すぎます。万事休すですね」


「ホーネット、お困りのようだな。仕方ねえから助けに来てやったぜ」


◇◇◇


「敵は全員駆逐したぜ。約束通り、仲間になってもらおうか。提唱者の精神核保持者にしてローカスト教国の国王、ホーネット!」


「……その提案、喜んでお受けいたします。この私をいかようにもお使いください」


◇◇◇


1年以上にわたる長い交渉期間を経て、俺たちは無事ホーネットを仲間に加えることが出来た。武力、諜報力、政治力に長けた三銃士が揃ってからは、順調に勢力を拡大し、ランドルフ、バージニア、イラストリアス、フランクリン、サラトガとMBTIの仲間も増やしていった。色々あったが、今となってはどれもいい思い出だ。

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