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第七十二話 「決戦の地へ」

「まもなく到着予定です。あの角を曲がれば年季の入った古城が……、あれです!」


シャルンの誘導とティルピッツの運転の元、選民ノ箱庭のアジトへと駆ける俺たち。馬車で1日と少しの旅程の後、辿り着いたのは築数百年は下らないであろう古びた城だった。そのサイズは城というには比較的小さく、元の世界にあったホームセンターくらいの規模感といったところか。生活感のない外観から察するに、ローカスト教国のように国民を束ねておくための城というよりは、首脳陣が住むためだけの城なのだろう。


「あれか。……でも、選民ノ箱庭のリーダーが住む城にしては人の気配がなさすぎないか。警備の人間は居ないのか?」


「そうですね。ヒュウガ様はMBTI以外をこの城に近づけることがありませんでしたので、警備の類は居ないと思われます。……ちなみに、ホーネット様はわたしがMBTIであることをセンミンノハコニワの皆様に隠しておりましたので、わたし自身、城の中には入ったことがないのです」


なるほど、そういうことか。……確かに、MBTI至上主義を唱えるヤマモトヒュウガの前でシャルンを乱雑に扱うと、どう思われるか分かったもんじゃないからな。用心に用心を重ねるホーネットらしいブラフだ。


「ということは城の中の構造は、シャルンちゃんも含め誰も分からないわけだね。事前に対策が練れないのは心配だけど、臨機応変に対応できるよう心の準備だけはしておこうか」


「そんなにビビる必要はないんだぜ。こっちには力強い仲間が5人もいるんだ。ボクたちが力を合わせれば敵なんてないんだぜ!」


「そうですよ! リットリオさんに作ってもらったアイテムもありますし、僕たちが負けるはずがありません。さあ、乗り込みますよ!」


確かにハルナの言う通り、万全の状態で向かえるわけではない。だけど、俺たちが力を合わせれば敗北の二文字などあるはずない。……さあ、最終決戦だ。


そうして俺たちを乗せた馬車は、城の入り口近くまでラストスパートをかけるのであった。


***


「……入るぞ」


馬車を降り、俺たちは城の入り口らしき5メートルほどの扉を開ける。内装も外観通りといったところか、一部分塗装も剥げており必要最低限の生活をするための居城という印象を受ける。


「薄暗いね。慎重に歩かないと転びそう……」


ハルナの言う通り、外部からの光源は無く、俺たちの足元を照らすのは等間隔で壁に設置されたランプだけだ。警戒に警戒を重ねながら歩みを進めていくと、大広間のような場所に辿り着いたわけだが、……この場所に足を踏み入れた瞬間、今まで一切感じなかった俺たち以外の気配が肌を震わせた。


「久しぶりだな。主人公……いや、コガヤマト」


俺たちが進んできた方向と正反対。数十メートル奥から、聞き覚えのある声で俺の名前が呼ばれるのが聞こえた。


「……ああ、こちらこそ久しぶりだな。だが、そっちから来てくれるなんて探す手間が省けて助かったぜ」


黒のケープフードで顔を覆った男と、全身を漆黒の鎧で覆った男。声の主はもちろん、俺たちが倒すべき敵━━ヤマモトヒュウガとネルソンの二人だった。


「随分と威勢がいいことだ。……それもそうか。たくさんのMBTIを屠ってきた以上、己の力に自信を持つのも当然だよな。……俺の大切な仲間たちをな」


…………。


「だが、お前たちの躍進もここで終了だ。俺には最後の腹心であるネルソンがいるのだからな。……もう前回のように逃がしはしない。何があってもお前たちの息の根をここで止める。頼んだぞネルソン、いつも通り擁護者の加護━━身体能力強化をかけてやるからよ」


「……御意」


ヤマモトヒュウガの合図を皮切りに、ネルソンはこちらに向けてゆっくりと距離を詰めてくる。その姿が前回交戦したときよりも大きく見えるのは、加護によるものか、はたまた全力で俺たちに殺気を向けているからだろうか。


「ヤマトくん、ここは私たちに任せて。……君は、君にしかできないことに集中してね」


そんなネルソンに対して、俺からも距離を詰めようとしたところハルナの腕によって動きを阻止される。


「そうですよ。ここは僕たちに任せてください」


「ヤマト様が活躍しやすいように舞台作りはしっかりしますので」


「さあ、みんな行くんだぜ!」


そうして俺以外の仲間たちがネルソンに向かって突撃していく。……頼もしい仲間だ!

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