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第七十一話 「絶景」

「おはよう、ヤマトくん。もう大丈夫かな?」


……そうか、俺は操血の加護をうまく使えず気絶したんだったな。視界の隅に移る時計の針は、最後の記憶から30分ほど進んでいた。でも、時間は分かったけどここはどこだ?


「……ああ、おはよう。ちなみに、ここはどこでオマエ以外はどこに?」


視線の先には天井とハルナの顔しか見えない。それに、頭の裏に伝わるのは今までの人生で感じたことの無い、不安定ながらも柔らかい感触だし、俺は一体どういう状況にいるんだ?


「……あはは。実は私とヤマトくんだけを個室に移してもらったの。貧血で倒れちゃったから静かなほうがいいかなって。……それと、もう立ち上がれそう? 実は私も結構恥ずかしくて……」


……なるほど。ハルナの表情や頭部に伝わる感触から察するに、俺は今膝枕をされているんだな。いくら相手が腐れ縁の幼馴染とはいえ、男として喜ばしい環境にいたわけか。


「悪い、気を使わせちまったな。でも、オマエの膝枕のおかげで回復が早まった気がするよ。ありがとな」


「……もうっ、調子いいんだから……!」


そんな軽口を叩きながら、俺たちは仲間たちの待つ店の中心部へと戻る。ハルナ以外にも心配かけただろうし、早く無事な姿を見せないとな。


***


「ナグモ君の専属看護はどうだったかい?」


店の中心部に戻ると、四者四様の表情で俺たちの帰還を待つ仲間たちの姿があった。まだ体力が全快したわけではないが、心配かけない程度には体が動いているはずだ。


「ハルナが静かな場所で休ませてくれたから回復できたよ。だけど、もう操血の加護は使えないかな。あれは、外部から血液を摂取するのが前提な加護みたいだ」


「確かにそうかもね。サラトガも戦闘前には血液を補充してたみたいだし、人間を躊躇なく喰べられる彼専用の加護みたい」


仲間たちとの再会のあと、俺が発した第一声は、新たな精神核の用途についてだった。かなり高い能力を持つ加護だから、出来れば使いこなしたかったが常人には扱えない代物だったみたいだ。


「なるほど。だったら、センミンノハコニワ討伐の切り札は新しい加護ではなく、要望のあったこの道具となるわけだね」


そうして、リットリオが俺たちの前に掲げたのは、天色に輝く手のひらサイズの宝石だった。


「これは、君たちから要望があった加護を無効化する宝石、バニッシュメントジェムだ。効果時間は1分弱しかないうえに、効果発動後は砕け散ってしまう。……生かすも殺すも君次第だ、健闘を祈るよ」


一問答の後、俺はリットリオからバニッシュメントジェムを受け取り、慎重に触れないと簡単に砕けてしまいそうなそれを丁重に扱いながら懐にしまう。これであとは敵との最終決戦に向かうだけだ。


「……センミンノハコニワのアジトに関しまして、わたしはホーネット様の付き添いで何度か行ったことがあります。道案内ならお任せください」


「助かる。……敵のアジトに乗り込めばもう後戻りはできない。みんな覚悟はいいか?」


「もちろんだよ! そのためにこれまで頑張ってきたんだから!」


「ボクも準備は出来てるんだぜ! 二人が元の世界に帰っちまうのは寂しいけどな」


「僕も協力いたします。……兄さんの敵でもありますしね」


こくりと頷いたシャルンを最後に、全員の意思確認が終わる。……さあ最終決戦だ。

そうして俺たちはシャルンの案内の元、選民ノ箱庭リーダー ヤマモトヒュウガの待つ総本山に足を進めるのであった。

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