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第七十話 「Body reboot!」

「この音、ヤマトくんたちかな。ってどうしたの!?」


……やっと着いた。4時間の路程を終え、リットリオの店の扉を石化した腕でガンガン叩くと、先に帰還していたのだろうハルナがその音に気付き扉を開けてくれた。……まあ、扉の前には、腕のない俺と石になったティルピッツがいたんだから第一声が驚きの声になるのも無理ないか。


「悪い、説明は後だ。取り急ぎリットリオと話をさせてくれ」


そんな俺の発言は店の中まで聞こえていたのか、リットリオ本人がゆっくりとこちらに来てくれた。


「これはこれは大層なことだ。あらかた物質を石化するような能力を持つ者と会敵したかな?」


「勘が鋭くて助かる。石化の加護を持つ選民ノ箱庭三銃士、エセックスと戦闘になった。なあリットリオ、この状態を何とか出来るか?」


「心配いらないさ。石を分解する薬品くらい、アタシの創造にかかれば造作もないよ。少し待ってくれ」


流石の頭の回転速度といったところか、俺が説明するまでもなく状況を把握してくれた。……よかった、いくらリットリオといえど人体石化の解除には手間取るかと思っていたからな。


「……だが、その状況なら分解薬だけでは足りないな。……コガ君にはたくさんの借りがあるから多少の出費は致し方ない」


そうしてリットリオは、瞬時に創造に取り掛かる。3分程度の作業の後、工房から戻ってきた彼女が手にしていたのは、カップに入った液体と機械感をまったく感じない薄橙の義手だった。


「その状態で分解薬をかけると、出血多量でコガ君は死んでしまう。だから、石化を解除して即座にこの義手を取り付けるよ。馴染むまでの数秒間は激痛が走ると思うが、それは耐えてくれ。超貴重なミラージュパピヨンの鱗粉まで使ったんだ、根性を見せてくれよ」


「もちろんだ。この礼は別件で必ず返すよ」


俺の覚悟を示し、リットリオに分解薬をかけてもらう。……さあ来い!


「……!! ……なんのこれしき!!」


液体のかかった部位から順番に石化が解除され、出血が始まる。腕を切り落とされたのと同等の痛みが瞬時にして俺の肉体を襲い、声にならない声を上げてしまう。……だが、耐えなければ。


「そしてすぐさまこちらの義手だ! コガ君、もう少しの辛抱だぞ!」


まるで金属を溶接するように傷口と義手を接合させるリットリオ。すると、徐々に痛みが引いていき、数分間の死闘の末に肉体を蝕む苦痛は完全に消え去った。


「はぁ、はぁ。終わったか……。でも凄いな、感覚は元の腕とほとんど変わらないぞ」


呼吸も少し落ち着いてきた頃、俺は軽く手を動かし機能性を確認する。初めての義手ということもあり、動かすまでは不安でいっぱいだったが、実際に確かめてみるとその圧倒的な性能に驚いた。見た目も機能性も人間の腕そっくりだし、創造さまさまだな。


「あまりアタシを舐めてもらっちゃ困るな。だけど、その言葉が聞けて安心したよ」


分解薬の効力を確認し、俺を含めその場にいた全員が胸を撫で下ろす。だが、一息つくにはまだ早いな。


「さあ、最後にティルピッツを元に戻して状況説明といこうか。いつまでも石にしておく訳にはいかないしな」


そうして、俺たちがティルピッツに分解薬をかけると、液体が触れた部分から徐々に石化が溶けていき、1分も経たない内に全身が元通りになった。その顔には困惑の表情を浮かべていたわけだが、彼からすれば峠からリットリオの店に急に移動したような感覚なのだから無理はない。女性陣だけでなく、ティルピッツに対しての状況説明も含め、エセックスとのやり取りを共有しようか。


***


「僕が意識を失っている間にそのようなことが……。ヤマトさん、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」


仲間たちが全員揃ったタイミングで、俺は峠での出来事について━━レイテという名は偽りでエセックスという名が真名だったこと、選民ノ箱庭の三銃士にして石化の加護を持っていたこと、そして死闘の末に彼女が自分自身に加護を使い、石化してしまったことを説明した。


「まさかレイテさんが……」


「あの令嬢はセンミンノハコニワの一員だったか……。それならばアタシを勧誘する時に、世界各地に拠点があると言っていたのにも納得だ」


各々が様々な感情を抱きつつも、会話は順調に進んで行く。そして、エセックスについての説明が落ち着いたタイミングで、俺はポケットから忘れかけていた今回の真の目的を取り出す。


「だが、藤の花は問題なく手に入れることが出来たぞ。次は一角獣の角について教えてもらおうか」


会話のターンを女性陣に譲るという契機にするためにも、俺は手にした藤の花をリットリオに渡す。そんな俺の思惑を察したのか、自然な流れでハルナが会話の主導権を奪ってくれた。


「じゃあ次は私たちの番だね。実はこっちも選民ノ箱庭と会敵してて……」


そこからはハルナたちの旅路についての説明が行われた。要約すると、操血の加護を持つ選民ノ箱庭メンバーと会敵したものの、シャルンの機転により撃退することが出来た。そして、選民ノ箱庭の脅威から解放されたバレンタイン村の手助けもあり、一角獣の角も無事手に入れることが出来たという内容だった。色々あったみたいだが、全員が無事で本当に良かった。


「そうしてこれが、サラトガの持っていた討論者の精神核。加護の内容はさっきも話した通り操血だけど、……ヤマトくん、試してもらえるかな?」


そんなこんな会話も一段落付いたタイミングで、ハルナは持っていた討論者の精神核を俺に渡してきた。話を聞く限り、かなりド派手な加護みたいだけど大丈夫だろうか? まあ、加護を複数個使えるのは俺だけだからやるしかないんだけどな。


「分かった。……はあっ!」


ハルナから受け取った精神核を取り入れ、軽い精神統一のあと加護を使ってみる。……使い方は本能的に分かった。やるぞ! …………だが、そんな俺を待っていたのは華麗とは正反対の情けない姿だった。


「マズイ! 意識が……遠の……い……て」


ハルナの話に出てきたサラトガの戦闘スタイルを参考に、複数の触手を背中から生やそうと試みるも、2本目の生成に入ったタイミングで急激に意識が遠のいていく。おそらく、さっきの出血により血液が不足していたからだと思うが……。なにはともあれ、操血の加護のデビュー戦は、その場に倒れて体を強打するという物理的にも精神的にも痛い記憶で締めくくられるのであった。

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