第六十八話 「結果はいかに……」
「あなたは! 先ほどはお助けいただきありがとうございました!」
歩くこと数分。こじんまりとしながらも、生活感のある集落に辿り着くと、母性溢れるふくよかな体格の女性が私たちを出迎えてくれた。その感謝の言葉は、シャルンちゃんを見据えて告げられていることから、おそらくサラトガに拘束されていた人の一人だろう。
「……いえ、わたしは当然のことをしただけですから」
「そう謙遜なさらず。このような辺鄙な村に来られた以上、何か目的があるのでしょう。お礼として、我々に出来ることであれば何でも致しますので、お申し付けください」
そのような会話のキャッチボールをしていると、外れの方から次々と女性がやってきた。年齢層としては10代から20代が9割以上を占めており、彼女たちのまとめ役であろう中年の女性が数人といった感じだ。リットリオさんの発言通り、清純な雰囲気を纏った麗しい女性ばかりだね。
「そう言っていただけるのでしたら……。実はわたしたち、一角獣の角を探しにこの村まで来たのです。もしよければ、ご案内していただけると助かります」
「やはり一角獣様が目的ですよね。もちろん協力させていただきます! 彼らが活発に活動するのは夜明け前。半日程度ございますので、それまでどうか我々の村でお休みください」
シャルンちゃんの発言を受け、予想通りといった表情を見せる村の方々。対応に慣れているみたいだし、ここは先方の提案を受けておこうか。
***
「人数が多いと一角獣様は怯えてしまいますので、私のお供はここまでとさせていただきます。彼らにお会いするには運も必要となりますが、ご健闘をお祈りしております」
翌朝、村の方と私たちは日が昇る前に村を出発して、一角獣の生息地である森へと向かった。森内を1時間ほど歩きやっとのことで辿り着いたこの場所は、生い茂る木々と澄んだ湖から神聖な雰囲気が伝わってくる、一角獣との遭遇率が一番高いとされる理由がハッキリと分かる場所だった。
そして、同行してくれた村の方を後方に残し、私たち三人は湖のほとりへと徐々に近づいていく。到着して数分が経過したころだろうか、パカパカという馬の足音のような快音が耳に入ってきた。
「二人とも、あれが一角獣じゃないのか!」
アクイラちゃんの発言通り、木々の間から見えたのは、白い馬体と特徴的な一本角。おそらくあの子が私たちの探し求める一角獣なのだろう。
「……あまり大きな物音を立てないようにですね。わたしたちの方へ来てくれるといいのですが」
「村の方いわく、人間から歩み寄ると怖がっちゃうみたいだから、私たちは待つだけだね」
私たちはその場に座り込み、彼を刺激しないように来る時を待つ。……5分ほど経過したころだろうか、警戒を解いたのか私たち三人の元へ彼が近寄ってきた。
「ヒーン!」
そして、彼は私たちを品定めするように匂いを嗅ぎ、安心した様子でその場に横たわった。
「……わたしたちは気に入られたと考えていいのでしょうか?」
「たぶんそうなんじゃないかな? 合わない人だった場合、暴れるって話だし」
そうして赤子のような態度を示す一角獣を撫でてあやしていると、ふとした瞬間に手元にずしりとした感触を感じた。
「ヒヒーン! キュルキュル!」
そこにあったのは、白く輝く腕ほどの物質。私たちが求めていた一角獣の角だった。
「わあ、ありがとう! これを貰ってもいいのかな?」
私の言葉に対して、一角獣は返事をするようにその場をくるくると回り、来た道を戻っていく。これで、目的達成だね。
「お疲れさまでした! 皆さまでしたら、必ず一角獣様に気に入られると思っていました。それでは村に戻りましょうか!」
そうして、私たちは同行してくれた方と一緒にバレンタイン村に戻った後、レオパルトへの帰路につくのでした。




