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シックスティーン・セレクテッド ~MBTI冒険記~  作者: 有馬 潤哉
第六章 「再来の王都レオパルト」
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第四十四話 「傾国の美女」

リットリオの店を出発した俺たちの足は、無意識のうちに宿が多く集まる街の中心部に

向かっていた。


「リットリオさんの新発明ってどのようなものなのでしょう。おそらく、僕みたいな田舎者は見たことがないような道具なんでしょうね」


明日に控える新発明との邂逅に胸を弾ませながら街を歩いていると、大都市らしい豪華な城が目を引く中心部にたどり着いた。ここに来るのは2回目だが、何度見ても凄いな。……だが、今回は前回と違い、城以外にも俺の目を引く光景がそこにはあった。


「レイテちゃ~ん。いつになったらチューしてくれるの~。おじさんもう我慢できないよ~」


「うふふ♡ それはもう少し仲良くなってからよ。その方が燃えるじゃない」


傾国の美女という言葉を体現したような、透き通った黒髪と見る者の理性を奪うような美貌を持つ女性が城から出てきたのだ。男の本能をくすぐるような猫撫で声で、隣にいる自身の倍は生きているだろう男性に語りかけるその姿は、十数メートル離れた場所にいる俺ですら視線を奪われるほど妖艶だった。


「それより、この前は協力してくれてありがとうございましたわ。だけど申し訳ございません、お相手のスケジュール的にお城まで来てもらうのは難しかったみたい。せっかく、サインに印鑑も貰ったのに……」


「いいよいいよ、気にしないで。レイテちゃんのお願いだったら何でも聞いてあげるよ! なんてったって、おじさんはレオパルトの大臣なんだから」


「やっぱり頼りになるわ! これからも彼女として大切にしてね♡」


「でへでへ。名残惜しいけど、仕事があるからおじさんは戻るね。レイテちゃん、バイバイ」


そんな女性の投げキッスを背に受け、男性は城の中へ戻っていく。そのような光景を横目に眺めていた訳だが、そんな俺を待っていたのはまさかの出来事だった。


「……!? すみません! ちょっといいかしら」


歩きながらチラチラ見ていただけだったのに、なんとその女性と目が合ってしまったのだ。そして、その上向こうから俺たちに話しかけてきたって訳だ。……秘密の関係性ぽかったし、見てたこと怒られるのか?


「はぁ、はぁ。その特徴的な見た目……、あなたたち、センミンノハコニワを倒して回ってるという噂のMBTI集団よね。よければお話を聞かせてくれないかしら」


だが、俺の予想はいい意味で裏切られた。駆け足で近寄ってきた彼女は、怒る訳でなく人当たりのよさそうな雰囲気で俺たちに話しかけてきたのだ。その態度に胸を撫でおろしたわけだが……。……しかし胸か。


「久しぶりに走ったから疲れてしまったわ。……そうだ、自己紹介がまだでしたわね。わたくしの名前はレイテ。世界中を旅する、しがない新聞記者ですわ」


遠目に見ても感じていたことだったが、改めてこの距離で目にすると、嫌でもその豊満な胸が視界に飛び込んでくる。そんな彼女が駆け足で近寄ってきたわけだから、揺れる胸元を見たティルピッツは既に鼻血を出して倒れていた。


「あ、ありがとうございます、……じゃなかった。確かに、俺たちがその噂の集団だと思いますが……」


絶景を目にしてうっかり本音が出てしまったが、正気を取り戻し返事をする。だが、新聞記者にまで注目されるとは、俺たちの影響も大きくなったものだな。


「やっぱり! わたくしの目に狂いはなかったわね。どんな相手に対して、どんな戦法で戦ったのか気になりますわ。よければあちらのカフェでお話を聞かせていただいても?」


そう言った彼女はぐいっと体を前に出し、俺に身を寄せてきた。あと少しで体同士が触れ合おうとした瞬間、間にハルナが割ってはいってきた。


「す、すみません! 実は私たち、この後予定がありまして……。立ち話程度でしたら可能なんですが、お店でゆっくりというのは……」


「あらあら、ハルナ様はずいぶんとヤマト様がお気に入りのようですね。あなたがたとの関係性は壊したくありませんし、ここは諦めるといたしましょうか」


「お気に……!? そういうのじゃありませんから!」


魅惑的な笑みを浮かべながら、レイテはハルナにからかうような口振りを仕向ける。珍しく動揺を見せるハルナだったが、そんな彼女を横目にレイテは話を続ける。……ん? そういえば俺たち名乗ったっけ?


「ですが、最後に皆様へお願いがあるのです。最近勢力を伸ばしてきているローカスト教国という国があるのですが、情報集めに苦戦しておりまして……。噂によるとそのトップはセンミンノハコニワの中枢を担う三銃士の一人のようなのですが、もしよければ調査をお願いしてもよろしいでしょうか?」


だが、そんな疑問の感情も彼女の口から出た選民ノ箱庭の三銃士という単語により一瞬にして吹き飛んだ。それは、警戒の色を強く示していたハルナや気絶したティルピッツをからかっていたアクイラも同様だったようで、全員の表情が変わるまでそう時間はかからなかった。


「中枢を担う人物ですか!? その人物について詳しく教えてください!」


そんな俺の言葉は考えるよりも先に出ていたのだろう。大きな声に驚いたのか、少しレイテは目を見開いた様子を見せたが、淡々とした口調で話を続けた。


「閉鎖的な国なのか、実はわたくしも詳しくは知らなくて……。ただ、センミンノハコニワにいる人物がトップを張っているということしか」


敵の加護や規模感など詳しいことは分からないのか……。だが、選民ノ箱庭でも重要なポストにいる人物との接触は是が非でも行うべきだ。


「分かりました! その頼み、俺たちが引き受けます! 任せてください」


「あら、心強いお言葉ですこと。それでは、お願いしてもよろしいでしょうか。報告に関しましては急ぎませんので、次お会いしたときにでも。主要な都市を回っておりますので、いつかはお会いできますわ」


そう言った彼女は、「実はこの街に来た理由は、人探しでして。そろそろ行かないとまずいので失礼しますね」と言い残し路地裏へと消えていった。謎多き人物だったが、彼女のおかげで俺たちの次の指針が決まりそうだ。


「おい、ティルピッツ! 起きるんだぜ! オマエが寝ている間に次の目的地が決まったぞ」


「三銃士か……。今まで以上に気を引き締めないとね」


明確に言葉を交わさずとも、仲間たちの雰囲気から察するに、全員次の目標をローカスト教国に掲げていたようだ。確かに強力な相手かもしれないが、俺たちにはリットリオのくれた新装備と明日受け取る新アイテムがある。選民ノ箱庭の真相に近づくためにも、このチャンスはものにすべきだ。


「よし、今日は明日に向けてしっかりと英気を養おう。リットリオの新発明を受け取り次第、ローカスト教国に向かうぞ!」


そうして、意識を取り戻したティルピッツに詳細を話しながら、本日の宿へと向かう。リットリオの斡旋してくれた豪華絢爛な宿で、旅の疲れを癒し明日に備えるとしよう。


***


「まさかこの街に主人公たちがいるとは思わなかったわ」


巨匠の勧誘及び大臣の信頼関係維持のためにこの街に来たわけだけど、予想外の人物と出会ってしまったわね。ヒュウガ様から奴らの容姿については聞いていたから気付くことができたけれど、動揺が表情に出ていなかったかしら。


だけど、それにしても雰囲気は予想と違っていたわね。何というか世間の荒波に揉まれていない、人畜無害そうな感じで。


「まぁ、そんな彼らの運命もここで終わりだけれどね」


ヒュウガ様の話によると、ずいぶんわたくし達の仲間をいたぶってくれたようですわ。ですが、このレオパルト━━ローカスト教国の隣国で出会ったのが運の尽きですわね。あそこにはホーネットがいます。彼ならば国民をうまく使い、ヒュウガ様のお手を煩わせることなく、始末していただけるでしょう。


「いけないわ。今の私はさすらいの新聞記者レイテよ。気持ちを切り替えなくてわね。噂によると、巨匠は頭の切れる変わり者らしいから、感情に訴えかけるよりも相手にメリットを提示して理論で説得する方が効果的かしら」


脳内をグルグル回っていた思考を一つにまとめ、センミンノハコニワ三銃士の一人であるエセックスから、世界を旅するしがない新聞記者レイテに気持ちを切り替える。わたくしは、ヒュウガ様より組織運営のための情報収集及びMBTIの勧誘を任されているのよ。ヒュウガ様の期待に応えるために頑張らないと。……神から与えられた美貌、ひいては女という武器を使ってでも。

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