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シックスティーン・セレクテッド ~MBTI冒険記~  作者: 有馬 潤哉
第六章 「再来の王都レオパルト」
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第四十二話 「ミッションクリア」

「よし、戻ってきたぞ! さっそく開発に取り掛かるとしようか!」


そこからは特に問題もなく、夕方ごろにふもとへ辿り着き、そこから丸1日かけてレオパルトまで戻ってくることができた。出発から換算すると3日に渡る長旅だったにも関わらず疲れを見せる様子のないリットリオは、馬車を降りるとすぐに店へと向けて歩き出した。一息つこうかと思ったが、発明家である彼女の構想があったまっている好機を逃さないほうがいいな。


「まずはコガ君たちの装備を作るとして……。ふふっ、そこからはアタシの時間だ。原子力、必ずモノにしてみせる」


ボソリと何か呟いたリットリオについていくように、俺たちも歩みを進める。


***


「少し待っていてくれたまえ。素材さえ集めてしまえば、アタシの加護でちょちょいのちょいさ」


店にたどり着くと、リットリオはすぐさま奥に進んで行く。ちらりと見えたが、そこには鍛冶屋でよく見るような炉や薬を調合するような壺があった。最初に訪れた時はここまで入ってこなかったから分からなかったけど、おそらくここが加護を使う工房のような部屋なのだろう。……でも、話は聞いていたけれど実際に加護を使う姿は見たことがない。創造……、いったいどのような加護なのだろう。


「その表情……、そういえばアタシの加護を見せたことがなかったね。せっかくの機会だし直接見せてあげよう」


そんな俺の気持ちが顔にまで出ていたのか、リットリオは披露するかのように周囲から素材らしきものをかき集め炉の中に入れた。


「高温で素材を一つに溶融させて……」


そして数秒後、中で一つの塊となった物を取り出し机の上に置くと……、


「こうだ!」


近くに放り投げられていた腕の長さほどのハンマーを拾い、大きく深呼吸したと思うと、手にした獲物で机上のソレを力強く叩きつけた。


「す、すごい。一瞬して剣が……」


そこから、俺が理想としていた形状の片手剣が完成するまでは一瞬だった。素材探索中にある程度の希望は伝えていたが、まさかこれほどまでの再現度とは。


「アタシの加護、創造。造りたい物の形状や特徴を脳内でイメージすれば、固体であればハンマーひと振り、液体であれば攪拌一巡で完成させることができるんだ。複雑なものほどより細部までイメージしなけらばならないし、必要な素材は自分で考えなければいけないけど、それはコイツがあれば心配いらない」


そう言ってリットリオは自分の頭をコンコンと指さす。元から持っていた彼女の地頭があるからこそ、これほどまで有効活用できるのか。その加護から生まれる新しい装備、今から楽しみで仕方がない。


「というのがアタシの加護なわけだけれども、さっそく持ってみるかい?」


そう言ったリットリオは純白に輝く片手剣を手に取り、軽々しくこちらに投げてきた。ギリギリの所で掴むことができたが、……予想外の重量に体が少しよろめいた。


「軽い……。今まで使っていた剣の半分くらいじゃないか?」


「ふふふ、君の必殺技は速さを活かした十連撃と聞いていたからね。強度を維持しつつも、限界まで軽量化を図ってみたよ。そしてこっちが……」


鞘から抜き、新しい剣を手に取り眺めていると、リットリオからもう一振り別の剣が投げられた。漆黒に輝いていること以外は手に持っているものと同じ形状をしており、使用感に差異はなさそうだ。


「色違いのバージョン2といったところかな。分身に持たせてやるといい」


なるほど、分身用に用意してくれたのか。これなら戦闘力は二倍以上だ。背中に二刀流のように二本差ししておけば、携帯性も問題ないしな。


「ありがとう! うまく使いこなして見せるぜ」


「喜んでもらえて何よりだ。さて、次はナグモ君かな」


感謝の言葉を告げ、俺が新たな獲物の帯刀方法や使用方法を考えている間に、リットリオは次の工程へと移っていた。先ほど同様に、炉へ素材を入れハンマーで打ちつける。ものの数分で完成したのは、鋼鉄をも砕けそうな鋭さを持つ紅色のレイピアだった。


「ほいっと。今使っているのが鎧に砕かれたとの話だったから、こちらは強度を意識して造ってみたよ」


俺の時と同じように、リットリオからハルナへレイピアが投げ渡される。ガシャガシャと聞こえてくる剣と鞘の擦れる音からはその強度と硬質性が伝わってくる。


「ありがとうございます! 大事に使いますね!」


「いいってことさ。名前はまだ決めていないから、自由に付けてあげてくれ。その方が愛着も湧くだろう。アタシは残る二人用の素材を取ってくるからさ」


ハルナにレイピアが手渡されたことで、武器作成から装飾品作成へと移るようだ。それにしても名前か……。


「そうだな……。この白い方は旭光(キョッコウ)、黒い方は月光(ゲッコウ)にする。対照的な色を持つコイツらにはピッタリな名前だ」


「だったら私は烈風(レップウ)って名前にしようかな。風のように攻撃するのを目標にね」


ワクワクした表情でリットリオを待っている二人(特にアクイラ)を横目に、俺とハルナは新しい武器に各々名前を付け終わった。そのタイミングで、ちょうど準備が終わったのか、リットリオが奥にある倉庫のような場所から戻ってきたみたいだ。


「その声を聞く限り、ちょうどいいタイミングだったようだね。さあピッツ君、次は君の番だ」


するとすぐさま素材を炉に入れ、これまで同様ハンマーで叩いた。俺やハルナの武器を作るときは金属風の素材であり用途が想像しやすかったけど、今回は石や砂のような自然感溢れるものだ。完成するものが想像できないけど……。


「一体どのようなものを造っていただけるのでしょう……?」


期待感の中にほんの少しの不安が入り混じったような表情で完成の時を待っているティルピッツ。そんな彼に差し出されたのは、モノクル━━いわゆる片眼鏡だった。


「これは、レンズを通して得られた視覚情報を、脳を介さず体に伝えてくれる装飾品さ。ピッツ君は、予知はできるけど、現在の動きと予知した動きが同時に見えて対処が難しいとのことだったから、現在の動きの対策を一任できるこんな装備品を造ってみたよ。片眼鏡にした理由は、装備していないほうの目で予知した動きを見てもらうためだがいかがかな? あと、投げると壊れそうだから取りに来てくれ」


ぱっと見た感じ、レンズも普通だし、外観に特別な装置が付いているわけでもなさそうだ。だけど、ティルピッツがリットリオのもとへ向かい、受け取ったモノクルを装備するとそんな感想は一瞬にして吹き飛んだ。


「うわあ! 情報が一気に……!」


ティルピッツが周囲を見渡す速度が変わったのだ。視界にとらえた物を即座に分析できているというか……。分かりやすく言えば、すべての動きに対し、熱々のやかんに触ったときの反射速度を適応しているような。


「反応強度は操作できるようにしているから、場面に応じて使い分けてくれ。……あと、慣れてきたころに感想を教えてもらえると助かるな」


「もちろん大丈夫です! この装備を使って皆さんのお役に立ってみせますから!」


未知の感覚に戸惑いながらも、さっそくメモリを調節して順応しているティルピッツ。そのような情景の中、後回しにされ続けたアクイラが駄々をこね始めた。


「そろそろボクの番じゃないのか! リットリオ、早く見たいぞ~」


「はっはっは、最後まで待たせてしまったアクイラ君にはとびきりキュートな物を考えているから安心したまえ」


「とびきりキュートだと! 楽しみなんだぜ!」


だが、ここ数日のふれあいでアクイラの扱い方を理解したのか、不機嫌になり始めた彼女を軽くいなして、最後の創造に取り掛かる。数分後、リットリオが手にしていたのは宣言通りアクイラに似合いそうな猫耳風カチューシャだった。


「すごい! こんなの付けたら、みんなボクのレディーとしての魅力にメロメロになっちまうんだぜ」


「はっはっは、そいつは装着者の聴力を強化する優れものだ。より繊細に、より遠くまで精霊の声が聞こえるようになれば、君の加護で出来ることも増えるだろう。コガ君の持つ起業家の加護みたいなリスクも無いしね」


トテトテと足音が聞こえるような足取りでリットリオの元に近寄ったアクイラは、頭にカチューシャをつけてもらっていた。その後、すぐに耳に手を当て集中力を高めるようなポーズを取った訳だが、瞬時にその効力に気付けたらしい。


「遠くまでミンナの声が聞こえる……。あっちも……、あそこまで……」


「声を聞く対象が精霊とのことだったから少し不安だったけど大丈夫みたいだね。精霊もそれほど大きく人間と変わらないという事かな」


そんなアクイラの姿を見て、目的の物が造れたことに安心できたのか、ウンウンと頷くような形で省みるリットリオ。だが、これで全員分の装備品を造ってもらったことになるな。


「これで、全員新装備を手にいれられたな」


「そうだね。ティルピッツくんもアクイラちゃんも似合ってるよ!」


「俺たちは大きく見た目が変わる装備じゃないからな……。ティルピッツは知的な印象が増して戦闘スタイルとのギャップがより大きくなったし、アクイラは今まで以上に子供らしさが増していい感じだな」


「このー! ボクを子ども扱いして~! すぐに大人のレディーになってやるからな~!」


そんな他愛もない掛け合いの中で笑顔が生まれ、円満な雰囲気が周囲に漂う。


「さて、これでお互いの目的を達成できたようだな。アタシは君たちと集めた素材を使って新発明を造る予定だから、ひとまずここでお別れだな。また、困ったことがあれば店に来てくれたまえ」


そのような雰囲気の中、依頼主であるリットリオによって会合は閉められた。おそらくこの話ぶりだと、数日家にこもって発明をし続けるのだろうし、長居して邪魔してもいけないな。そうして、俺は「情報収集のために屯所にでも行こうぜ」なんて言葉と共に仲間たちと店を後にした。


「ふっふっふ。原子力よ、待っていたまえ。アタシが君の力を存分に引き出してやるからな」


だが、入り口の扉を閉める直前に聞こえたその言葉で、俺とハルナの足取りが一瞬……止まった。

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