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シックスティーン・セレクテッド ~MBTI冒険記~  作者: 有馬 潤哉
第六章 「再来の王都レオパルト」
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第四十一話 「サービスタイム?」

「やっと着いた。早く汚れを落としたいぜ」


数分歩き、俺たちは流れの緩やかな川にたどり着いた。平均的なサイズであろうその川は、人が数人入り水浴びをするには十分すぎる大きさであり、ようやくこの不快感から解放されるのかと思うと胸が高鳴る。


「じゃあまずは男の子が行っておいで。私たちは待っておくから」


ハルナの気遣いから、まずは俺とティルピッツに川の使用権が与えられた。男の水浴びなんて時間もかからないだろうしさっさと済ませるとするか。


***


男の水浴び、5分で終了。特筆すべきこともなく、体を洗い流し別の服に着替えて女性陣の元へ戻った。強いてあげるなら、改めてティルピッツのバキバキに鍛え上げられた肉体を見て驚きの声を上げたくらいだが、そのくらいだ。別に男の裸が見たい奴なんていないだろうしな。……って俺は誰に言ってるんだ。


「お待たせ。俺たちは終わったから後は自由に使ってくれ」


そのまま、女性陣の待つ場所に戻り使用権の交代を告げる。少し驚きの表情を見せているのは、彼女たちの予想より早かったからだろうか。


「早かったね。それじゃあ今度は私たちが使わせてもらおうかな。……絶対覗いちゃだめだからね、向こうの方行っててよ!」


ハルナは鋭い視線のまま、あそこに行けと言わんばかりの態度で川から死角になる木陰を指さす。命も惜しいし、言われた通りの場所で束の間の休息タイムとしようか。


「水浴びなんだぜ! ヒャッホー!」


しかし、俺たちが木陰へと動く前にアクイラが早々と衣服を投げ捨て川へとジャンプする(もちろん、見てないぞ!)。ただ、そんなことをすればハルナからのご指導が入るわけで……。


「こらー! 男の子のいる前で裸になっちゃダメでしょ!!」


「仲間なんだからいいだろ~。ハルナが気にしすぎなんだよ~」


「ダメです! アクイラちゃんも年頃の女の子なんだから気を付けないと」


そんな二人の掛け合いを聞いた俺とティルピッツは、万が一にもアクイラの姿が視界に入らないよう示し合わせたように木陰へと足早に移動した。


「はっはっは、君たちは元気だね。それではアタシも汗を流すとしようか。……コガ君にピッツ君、アタシを見るのならバレないようにやるんだぞ」


移動中すれ違いになったリットリオから、からかいの言葉が投げかけられる。……あの様子のハルナがいるのに行けるわけないだろっ! 

だが、そんなこんなで女性陣の水浴びタイムが始まったようだ。


***


「ハルナもリットリオも早く来いよ~! 冷たくて気持ちいいんだぜ」


「……もう、アクイラちゃんったら。私も行くから少し待ってるのよ~」


「普段は湯浴みや水浴びなど数日に一回だが、こういうのも悪くないな」


アクイラの声を皮切りに、水しぶきの音が徐々に大きくなる。意識的に見ないようにすることはできても、聞かないようにすることは難しい……。これは勘弁してほしいな。


「わぁっ! 冷たくて気持ちいぃ~。宿と違って自然に囲まれてるからよりヒーリング効果があるのかな? ってアクイラちゃん!?」


「ハルナ~! 久しぶりに裸を見たけど、やっぱりおっぱい大きいな~。ボクもこんなに大きくなりたいんだぜ」


アクイラがハルナに飛びついたのか、ひときわ大きな水しぶきの音が聞こえてきた。……それと同時に俺たちを惑わせるような言葉も。


「せっかくだからボクがもっと大きくしてやるんだぜ。そ~れ!」


「ちょ、ちょっとアクイラちゃん! 人の胸をそんな風に触らないの! だ、だめ~!」


聞こえてくる言葉は、より大きく激しいものとなっていく。その声から意識を逸らすように周囲を見回していると、隣にいたティルピッツが鼻血を出して気絶していた。村育ちの15歳の少年には刺激が強すぎたか。


「はっはっは、ずいぶんと楽しそうだね。アタシも混ぜておくれよ」


「リットリオもこっち来るんだぜ! ……ってスゲー! ハルナよりおっぱいでかいんじゃないか!? それにケツもめちゃくちゃだ!」


「褒めていただいて何よりだ。よければ触ってみるかい?」


「いいのか!? それでは遠慮なくなんだぜ」


その触れ合いにリットリオも参戦したのか、声色が一つ追加された。……そうだよな、出発の時に見たタンクトップ姿ですら凄かったもんな。……っていかんいかん、心を無にせねば。 


「す、すごいんだぜ……。顔がすっぽり入っちまった……」


「はっはっは、どうやらアタシの胸は普通の人より大きいみたいだからな。こんなもの飾りだと思っていたが喜んでもらえて何よりだ」


「も、もう二人とも……! 早く終わらせないと時間までに下山できませんよ! 男の子たちも待ってるし」


まずい! そろそろ戻ってきそうだ。おい、ティルピッツ! 目を覚ませ!


「少しはしゃぎすぎてしまったね。アクイラ君、戻るとしようか。……街に戻ったらまた遊んであげるからさ」


「ちぇー。約束だからな」


聞こえてくる音が、徐々に水しぶきから陸地を歩く足音に変化していく。大きくなる足音に焦りながらティルピッツを軽いビンタで叩き起こしていると、3発目で意識を戻すことができた。


「あれ、僕は何を?」


「ティルピッツ! みんなが戻ってくる! 平静を装うんだ!」


「え、え? 分かりませんけど分かりました!」


雑な指示だったが、ティルピッツは意思をくみ取り、何事もなかったような表情で立ちぼうけてくれた。これで無事女性陣を出迎えられそうだ。


「二人ともお待たせ~。ってどうしたのティルピッツくん!? 顔中血まみれにして」


「そうそう! コイツさっき蜂に刺されちゃってさ」


クソッ! 慌てていてよく見てなかったが顔が鼻血で汚れている。咄嗟にごまかしたけど大丈夫か。


「そ、そうなんです! よりによって顔を刺されちゃいまして。ですが、もう痛みもないので大丈夫ですよ」


うまくティルピッツも話を合わせてくれた。空気の読める男で助かった……。


「それならいいんだけど……。たぶんアクイラちゃんとリットリオさんもすぐ来ると思うから出発の準備しておいてね」


ふぅ、うまくごまかせたようだ。安心して一息ついていると、残る二人の声が聞こえてきた。


「待たせてしまってすまないね。アクイラ君とじゃれあっていたら時間がかかってしまったよ。それでは元の道のりに戻るとしようか」


その声と共にリットリオがバッグからオトサ君を取り出し、下山が続行される。さあ、ここから先は山を降り街に戻るだけだ。もう、ハプニングが起こらないことを祈ろう。

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