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シックスティーン・セレクテッド ~MBTI冒険記~  作者: 有馬 潤哉
第六章 「再来の王都レオパルト」
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第三十六話 「王都再来」

フランクリンのアジトを逃げ出してから丸1日程度だろうか。俺たちはやっとのことで、目的地としていた王都レオパルトに到着した。久しぶりに来たけれど、以前訪れた時と変わっていないな。


「へぇ、これがレオパルトですか。噂には聞いていましたがこれほどとは」


馬車を降り、街の探索を始める俺たち。ティルピッツはこのような大都市に来るのは初めてのようで、その発展度合いに驚きが隠せないようだ。(ちなみに、馬車は質屋に売り払った。持ち主はもう不在だし、馬のためにもこれが最善策だろう)


「この街のことならボクに聞いてくれたまえ。なんでも知ってるんだぜ。なんでもだぜ」


全員が初めて首都に来た田舎者のような眼差しをしていたこともあり、アクイラは自信満々に自分の存在を主張している。自分に頼ってほしいという感情がありありと伝わってくるし、お言葉に甘えて力を借りようかな。


「心強い言葉だ。だったら、武器屋を案内してもらおうかな」


「任せろなんだぜ! 武器屋といったら……、確かこっちに国営の大きな武器屋があったはずだぜ」


アクイラに案内されるまま、俺たちは大通りの隅にある武器屋へと向かう。煌びやかな装飾が施された3階建ての大きな建物は、外観を見ただけで街一番の武器屋であることが容易に理解できるものだった。


「さっそく入ろうなんだぜ」


アクイラを先頭に、建物の中へ入る。しかし、期待に胸を膨らませた俺たちを待っていたのは予想外の言葉だった。


「申し訳ございません、お客様。違っていたら申し訳ないのですが、おそらく軍の方ではないですよね?」


「そうですが……」


「実は数日前より当店は軍専属となりまして……。資材にも限界がありますので、最近新設されたセンミンノハコニワ対応部隊に優先販売となってるんですよ」


なるほど、そういうことか。彼らにも彼らの立場があるだろうし、「俺たちも選民ノ箱庭を追ってます!」なんて言っても特別扱いを受けるのは難しいだろう。


「分かりました、それならば仕方がないですね。……ちなみに、この街に他の武器屋ってあるんですか?」


「武器屋ですか。……あるにはあるんですが……」


やけにもったいぶるな……。何か問題があるのか?


「店主が変わり者でして……。腕は確かなのですが気分によっては対応してくれないらしいんですよ」


変わり者か……。だけど、腕は確かなのなら行ってみる価値はありそうだ。


「とりあえず行ってみようなんだぜ。ボクがこの街にいたころは無かったはずだから、地図をくれると助かるんだぜ」


「分かりました。そういうことでしたら、この街の地図をお渡ししますので有効活用ください。彼女に気に入られることを祈っていますよ」


そう言って店主がカウンターから出したのは、業種問わずたくさんの店が載ったこの街の地図だった。じっくり眺めてみると、街の辺境のほうに小さく「店名:アタシの店! 登録業種:武器屋」と書かれた店がある。他に武器屋は見当たらないからここだと思うけど……すごい店名だな。


「ありがとうございます。行ってみますね」


俺たちは店主に別れの挨拶を告げ、目的地へと向かう。入り組んだ路地裏を曲がりに曲がりたどり着いたのは、手作り感満載の「アタシの店!」と書かれた看板が掲げられたこぢんまりとした建物だった。


「これが本当にお店なんですかね?」


その建物は店というよりは家というほうが近く、俺もティルピッツと同じ印象を受けた。話を聞く限り変わり者らしいし、外観なんて特に気にしない性格なのだろう。


「だけど、この街で生き残っている以上、その品質には自信があるんじゃないか? とりあえず入ってみるか」


入り口の扉を開け中に入ると、足の踏み場も無いほど乱雑に物が転がっている光景が目に飛び込んできた。転がっているものに統一性はなく、玩具のようなものからネジのような何かの部品、盾のような装備品まで様々だ。……だけど、ここ武器屋だよな? そもそも店には見えないし、百歩譲って剣や槍が転がっているならまだしも、そのほとんどがネジや歯車、モーターのような部品じゃないか。


「すみません。武器を買いに来たんですが」


どこに店主がいるのか、そもそも店内にいるのかも分からないので大声で来店を告げる。鍵は空いていたし、いるとは思うんだけど……。


「店主さ~ん、いますか~」


ハルナも次いで店主の名前を呼ぶ。すると、店の奥から癖のある、けれど女性のものとはっきり分かる声が聞こえてきた。積み上げられた本や転がっているガラク……用途の分からない謎の部品に隠れて姿は見えないが、声質から判断するにおそらく俺たちより少し年上くらいだろうか。


「なんだい。うちは武器なんて売ってないよ。そもそも今日は店を開ける気分じゃないんだ。今度にしてくれ」


えっ、武器屋じゃないのか!? それに入り口にはOPENって書いてたぞ!


「地図に武器屋って書いてたので来てみたんですが……、違いましたかね?」


「あぁー、そういえばこの店を作った時は武器造りにハマってたからそれで登録したっけ。でも、今は武器の気分じゃないんだよな~。今は機械、からくりの時代だよ。人間や家畜の力だけを使うなんて前時代的すぎる、機械を使えばもっと便利になるはずだろ。だから、アタシは蒸気機関を発明してやったというのに、皆井戸水のくみ上げにしか使わない。あの発明は画期的だ、うまく使えば高速で動く乗り物を造ったり、服や武器の大量生産だって出来るはずなのに。ブツブツ……」


なんだなんだ!? 奥から捲し立てるようにひとり言を呟く声が聞こえてくる。変わり者という評判はこういうことかな。ただ、一向にこちらに来る気配がないけど、奥に進んでもいいのだろうか。


店主に会いに行くべきか、それとも退店すべきか迷っていたところ、痺れを切らしたアクイラの声が聞こえてきた。


「むーん、ここにいてもラチが明かないんだぜ。武器を買うよりも、加護を鍛える方向で修行しようなんだぜ」


相手に聞こえちゃうから大きい声でそんなこと言わないの、とは思ったが俺も内心同じようなことを考えていた。彼女の言う通り、武器は他の街で調達することにして、まずは加護の強化に勤しむほうが効果的かもしれない。特に俺なんかは冒険家の加護を手に入れたばかりだし、成長の余地がたくさんあるからな。そう思った矢先、


「何!? 加護だと! 君たちもMBTIなのかい! 詳しく話を聞かせてくれたまえ! 武器なんていくらでも作ってあげるからさ。ささっ、すぐ片付けるから、こちらに来てくれ!」


大声をあげながら奥から店主が走ってきた。無造作に伸ばされたピンクのロングヘアーをかき分けるように乗せられたゴーグル、そして上下とも動きやすそうな作業服を身に纏った女性は、見た目よりも効率重視! という様相だった。その女性は店の中心にあった机に向かうと、机上にあった大量のモノを腕で払い落し、「早く来たまえ」といった表情で俺たちを呼び寄せる。だけど、君たち……も?


「よしよし、環境も整ったことだしさっそく話を聞こうかな。君たちの加護は何だい? いや、その前に持っている精神核について聞こうか。違うな、最初に聞くべきは君たちが本当にMBTIなのかだね。いや~失敬失敬」


まずい、こちらから話を切り出す余地がない。どうしたものか……。


「……!? そういえば自己紹介を忘れていたよ。アタシの名前はリットリオ、【巨匠】の精神核保持者で、その加護は【創造】。造りたいと思ったものは何でも造れるという加護さ。素材は必要だけどね」


だが、幸いなことに聞きたかったことは向こうから話してくれた。加護は創造か、第一印象通りといった内容だな。……だが、リットリオ……?


「リットリオさん!? ヤマトくん、この人、昔達成したオオカミ退治の依頼主だよ!」


……!? そうだ、資金調達のために受けたオオカミ退治の依頼主がリットリオだった。たしか、天才発明家で大金持ちとの話だったか。


「なんてことだ! 君たちがアタシの希望を叶えてくれたんだね! いや~あのオオカミには本当に困っていたから助かるよ、あそこにはいい素材がたくさん眠っているというのに。まぁ、素材にダメージが無かったのはよかったけれど。ということは、軍でも苦戦していたという話だったし、君たちは戦闘向きの加護を持っているという認識で間違いないかな?」


たくさん話す人だな……、だけど一息ついた一瞬の隙を見つけ会話を切り出す。


「そうなんですよ。俺とこちらの彼女、そしてそっちの少年が近接戦闘向きの加護ですね」


「そうだそうだ、アタシのことについて話しすぎちゃったね。君たちの加護について詳細を聞かなければ。いったいどういう加護なのかな?」


まずは名前、そして持っている精神核とそれに宿る加護をリットリオへと話す。途中、彼女のペースに持っていかれそうになりながらも数十分かけて全員の自己紹介を終えた。


「なるほど、君たちの特徴については分かったよ。なにやら武器を探してるみたいだが、それはどうしてなんだい? アタシ自身こんな感じだが一応人間なんでね、MBTIの加護を使って大量虐殺を計画しているなんて聞かされたら協力はできないよ」


目的か。それはもちろん選民ノ箱庭討伐だ。


「私たちは、今世界を賑わせている選民ノ箱庭を討伐するために旅をしているんです。困っている人々を助けるためと、……私とヤマトくんが元の世界に戻るためにです」


「元の世界、一体どういうことだい? ……いや待てよ、当ててみせよう。君たちは何らかの事象によってこの世界に転移してきたのだろう、それならば君たちの変わった名前や容姿にも合点がいく」


さすが発明家といったところか。高い頭の回転力と異世界転移なんていう未知の可能性も受け入れる姿は、加護がなくとも名を轟かせていただろう能力の高さを窺わせる。


「そうなんです。この世界より少し技術の進んだ別の世界から何も分からぬまま連れてこられちゃって」


「技術の進んだだと!? ちなみに聞くが、その世界ではアタシの開発した蒸気機関と類似の技術は使われているのか!?」


「想像しているものが同じでしたら200年ほど前に……」


「なるほど。そういうことなら交換条件だ。アタシは君たちの望む武器を造ってやる、もちろん最高品質でな。だから君たちには、元いた世界とやらの情報提供と、素材集めの手伝いをお願いしたい。悪くはないとは思うがいかがかな?」


難しい話題だったこともあり、ハルナが主導して話を進めてくれる。蒸気機関なんて単語しか知らなかったから、情報提供はハルナにお任せしてしまうけど、素材集めなら問題なく手伝える。修行にもなりそうだしな。


「難しい話は分かんないんだぜ。だけど、素材集めは任せてくれなんだぜ」


「僕もヤマトさんたちのいた世界については何も分からないので、素材集めでよければ」


「俺はあまり賢くないから提供できる情報に限りがあるけど、それでもよければ。もちろん、素材集めには全力を尽くさせてもらいますよ!」


「私はもちろん構わないです。専門家ではないのでそこまで込み入ったことは分からないですけど、本は結構読んできたので基本的なことなら」


「それなら交渉成立だね。アタシも準備があるから出発は明日の朝ってことでどうかい? こう見えてもアタシ、お金はたくさん持ってるから資金面の心配はいらないよ。馬車を用意しておくから街の中心にある乗り場に集合しようか」


リットリオの心強い言葉で交渉が閉められる。さて、出発は明日か。どんなことが起きるか分からないし、今日は体を休めることに専念しよう。

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