第三十二話 「終戦、そして」
「ヤマトくん、終わったんだね……」
俺が仲間の所に合流すると、こちらから話すまでもなく、全員戦闘の終了を認識していた。一番ボロボロになっているティルピッツも命に別状はなさそうな様子だし、ひとまず安心だ。
「あぁ。きちんと論理学者の精神核も回収してきたし、この悲劇が繰り返されることはないはずだよ」
俺は右ポケットから論理学者の精神核を取り出し、証拠品のようにみんなに見せる。
「死体操作の加護……。ヤマト、どうするんだぜ?」
「……俺はこの加護を使うつもりはないよ。体に取り入れはするけど、取り入れるだけだ。……この加護は、命の感覚を鈍らせる……と俺は思う。うまく使えば死ぬこと前提の特攻だって出来てしまうこんなチカラは、俺たち人間が使っていいものじゃないはずだよ」
ぽつぽつと言葉を整えながら話す俺に、みんなはコクリと頷いてくれた。
「ヤマトさんの思いはよく伝わりました。僕もその考えには賛成です。論理学者の加護は使わない、……でしたらこちらの加護はいかがでしょうか」
そう言って、ティルピッツは俺が手にしているものとそっくりな物体をポケットから取り出した。
「これは冒険家の精神核です。分身の加護を使えるようになる兄さんの形見……、これをヤマトさんに持っていてほしいんです」
それは、ビスマルクが持っていた冒険家の精神核だった。この精神核の持つ加護、分身はレーヴェで目にした通り非常に強力なもので、うまく使えば戦略の幅が広がることは間違いない。ただ……、
「そんな大切なものを俺が貰ってもいいのか?」
大切な家族の形見を俺が貰ってしまっていいのだろうか。MBTIの肉体は死亡と共に消滅してしまうため、これが唯一の遺品になるわけだが。
「僕はこれ以上精神核を取り入れることができません。だったら、複数個の精神核を取り入れることができるヤマトさんに使ってもらうほうが有意義ですから。……きっと有効活用するほうが兄さんも喜ぶと思いますし」
感傷に浸るような表情で、言葉を紡ぐティルピッツ。……それならば……。
「分かった。俺が受け取ることにするよ。……絶対にビスマルクの……お兄さんの遺志を継いで選民ノ箱庭を討伐するぞ!」
俺はティルピッツから精神核を受け取り、自分の持っていたもう一つと合わせて二つ同時に体内へ取り入れる。【死体操作】の加護を持つ【論理学者】の精神核と【分身】の加護を持つ【冒険家】の精神核。……よし、しっかりと自分のものになったな。
「それじゃあそろそろ戻ろうか。みんな心も体も疲れちゃったよね」
優しげなハルナの言葉を聞き、改めて問題が一段落したことを自覚する。そのせいか、たまっていた疲れが一気に襲ってきたし、足早にここを去るとするか。しかし、
「おい主人公。ここで逃がすわけにはいかないなぁ。俺の野望のため、……そして仲間たちの復讐のためお前にはここで死んでもらうことにする」
神様は俺たちにそうすることを許さなかったみたいだ。




