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シックスティーン・セレクテッド ~MBTI冒険記~  作者: 黒潮 潤
第一章 「異世界生活初日」
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第三話 「敵意を持つ侵入者」

「ボスノメイレイニヨリ ニンゲンタチヲ ハカイスル」


時は数分前にさかのぼる。市壁を破壊し侵入してきた、全身を筋肉の鎧に覆われた屈強な男が本能に従うように破壊行動を繰り返す。カタコトの言葉を話し知性は低いように思えるが、その怪力には目を見張るものがあった。赤子の手をひねるが如くレンガ造りの市壁を破壊できる身体能力はおそらく精神核の加護によるものだろう。


「センミンニハコニワ様のお出ましって訳か。だが、オレたちの目が届く範囲で悪いことなんてさせねえよ」


ゆうに2mは超えるであろう体躯を持つ侵入者に対して、ビスマルクとグラーフは臆することなく正面から啖呵を切る。意図的に侵入者の意識を引くような立ち回りは、住人の避難を考えてのことだろう。


「ビスマルク、僕の準備はもう大丈夫だ! いつでも行けるぞ!」


「了~解。オレの準備もバッチリだぜ!」


ある程度住人たちの避難が進んだところで、二人は戦闘態勢に入る。それぞれが加護を使い、身体能力が強化された二人のビスマルクが侵入者の目前に立ちはだかる。MBTI同士による戦闘の火蓋が切って落とされた。


「オマエタチ MBTIダナ。チョウドイイ ボスヘノ テミヤゲニスル」


武器をうまく使う技術はないであろう侵入者は、最も信頼できる自分の肉体を利用しビスマルク目掛け渾身の右ストレートを繰り出す。風を切る音すら聞こえてきそうな高速のパンチは、グラーフの加護がなければ避けることのできない速度だった。


「今まで見た中で一番速いパンチだったぜ~。こんな相手にはオレなんかじゃ勝てねえかもなぁ~。だからさ、ハンデを与えると思ってアンタの加護を教えてくれよ~」


しかし、グラーフの加護がかかっている今、あからさまな挑発を返すことができる程度には容易に避けることができた。普通の感性であれば一発で挑発と分かるビスマルクの発言だが、脳まで筋肉でできていそうな侵入者にその本心は見抜けない。気持ちよくなった侵入者はペラペラと自分の解説を始めていく。


「フフフ、ナラバ オシエテヤロウ。オデノナマエハ バージニア。【キギョウカ】ノカゴヲ モッテイル。オデハ トクベツダカラ アタマノネジヲ トバスコトガデキルンダ。ソウスレバ カベヲ コワスノモ カンタンダッタ」


バージニアと名乗る侵入者の発言によれば、彼は【起業家】の精神核に選ばれた人間で、その加護は【脳のリミッター解除】だという。レンガ造りの堅牢な壁を破壊できたのもそのおかげとのことだ。


「アンタがバカで助かったぜ。ペラペラと喋ってくれてありがとな」


「……!? オマエ オデヲ ダマシタナ。ユ、ユルサナイ!」


知性の低い侵入者に対し、挑発を繰り返していくビスマルク。その発言に怒り狂ったバージニアは感情をぶつけるようにビスマルクへ襲い掛かる。お互い自分の肉体のみを獲物とするステゴロ同士の戦闘は、一進一退のまま膠着状態となっていく。


「コイツの肉体は異常だぜ。クリティカルだと思った攻撃も対してダメージが入ってねえ」


「僕も限界まで加護を使っている! 君に負担をかけるようで申し訳ないが頑張ってくれ!」


分身と連携したビスマルクの連撃はバージニアの筋肉の鎧に阻まれ、バージニアの繰り出す一撃必殺の近接攻撃もビスマルクの俊敏性の前には空を切るだけだ。どちらも決め手に欠ける状態のまま時間だけが進む中、先に仕掛けたのはバージニアの方だった。


「セントウスタイルヲカエル。オマエニハ パンチ ヤ キック ジャナイ。コレデイク」


バージニアは、目の前の敵から距離を取るように後ろへ下がる。すると、自分が破壊した街の壁の破片を手に取り、投球動作を取った。


「クラエ オデノ ヒッサツワザダ!」


バージニアは腕を振り下ろし、倒すべき相手に向かって破片を投げつける。元は街の壁ということもあり、刃がついていたり爆発物が内蔵されていたりはしないため、普通の人間が投擲してもダメージソースとはならない代物だ。しかし、MBTIとなると話が変わってくる。

バージニアの手から放たれた一種の兵器とも呼べる破片は、銃弾ほどの速度でビスマルクへと襲い掛かった。


「あ、危ねえ。間一髪か……」


突如とした戦闘スタイルの変化にビスマルクは戸惑いながらも、瞬時に反応しギリギリの所で破片を避けきる。しかし……


「危ない! 逃げるんだ!!」


逃げ遅れたのか、はたまた戻ってきてしまったのか。ビスマルクに避けられたことで直線運動を続けている破片は、通りの真ん中で立ちすくんでいた少女に牙を向ける。グラーフが少女に気付いた時にはどうすることもできない距離まで脅威は迫っていた。

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