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第二十話 「束の間の休息」

「すみません。昨日依頼を受けたオオカミ討伐のクエストなんですが、ボスと思われる個体を討伐してきました。……報告はこんな感じで大丈夫ですかね?」


受付の女性に対して事の顛末を告げる。昨日顔を見たばかりだというのに、久しぶりに会うような感覚に陥るのは、それほど今日が濃密な一日だったからだろうか。


「ほ、本当ですか!? それでは、ただちに調査隊の方を向かわせますので数時間こちらでお待ちください!」


彼女の話によると、俺たちを疑っているのではなく、洞窟が清浄化されたことを正式に表明するためにも調査隊による確認が必須らしい。俺たちにとっても、第三者の証明があるほうが助かるし好都合だ。


「それじゃあ時間もちょうどいいしお昼にしない? 昨日は簡易食料で済ませちゃったし外に食べに行こうよ!」


ハルナの言う通り、時計を見ると時刻は正午を指していた。確かに腹も減ってたしちょうどいいな。


「だったらボクがいいところを案内するんだぜ! 昔行きつけだったお店があるんだ」


威勢のいい声を発したアクイラが、俺とハルナの手を引きつつ、屯所の入口へと向かう

。彼女がいつも以上に明るく振舞っているのは、戦闘で疲れた俺たちを元気づけようとしてくれてるからかな、なんて思ってみたり。


「よし、だったら案内してもらおうかな!」


アクイラは薄い胸を張りながら、「楽しみにしてるんだぜ!」と自信満々に告げた。屯所の受付の人によると調査隊が戻るまで数時間はかかるみたいだし、ひとつ気分転換としようか。


***


「ここがそのお店、美味しいピザが食べられるんだぜ」


彼女に連れられてやってきたのは、チーズの匂い漂うレンガ造りの建物だった。ただでさえ昼下がりのお腹がすく時間帯なうえに、俺の体は戦いによりエネルギーを求めていたみたいだ。おそらく、周りにも聞こえたであろう大きさでお腹が鳴る。


「お腹がすいてたのはボクだけじゃなかったんだな」とからかわれながらも、店に入り各自一枚ピザを注文する。提供された順番は少しバラバラだったが、到着したものから順に口へと運び、全員違わず舌鼓を打つ。その後、味の感想などを言い合っていたら時間などあっという間に過ぎ去った。今から屯所に向かえばちょうどいい時間かな。


「ごちそうさまでした。もうちょうどいい時間だし屯所に向かおうか」


ハルナも同じことを考えていたようで、満場一致で方針が決まった。さて、報酬を貰いに行くとするか。


***


「みなさま、お待ちしておりました! 洞窟内にオオカミは一頭も見当たらなかったとの報告です! これで、正式に報酬をお渡しできますね」


クエストの成功が正式に確認できたからだろうか、受付の女性は満面の笑顔で感謝を告げてくれた。……笑顔はやっぱり力になるな。


「す、すごいんだぜ。これだけ稼ごうと思ったら何回ショーをしなきゃなんだぜ」


机の上に置かれた報酬は、依頼書通り150万リーブ。これだけあれば、当分不自由ない生活ができるだろう。これからは食事も宿も1ランク上の生活ができるぜ!……なんて考えていたが、「無駄遣いはさせないからね」というハルナの言葉により報酬は彼女の懐に入った。……残念な気もするけど、客観的に見たらそれが最適解だよな。


「リットリオさんには街に戻ってきた時に伝えておきます。……いつ戻ってくるかは想像もつきませんが。ですが、あの洞窟の猛獣には本当に困ってたようですので喜ばれること間違いなしだとは思いますよ!」


せっかくだし、依頼主であるリットリオとは会っておきたかったが、いないなら仕方がない。大陸一の王都だし、また来ることもあるだろう。その時に挨拶をすればいいか。


「ではよろしくお願いします。……さて、お金も手に入ったことだし、俺たちは本来の目的に戻ろうか」


先立つものも手に入ったことだし、選民ノ箱庭討伐の旅へ戻ろうとしたところ、屯所に慌てた様子の兵士が入ってきた。


「みんな、大変だ! センミンノハコニワが声明を出してきた。5日後にチハ村を攻撃する……、そんな声明をだ!」


選民ノ箱庭だとっ!? そう感じたのは俺だけではなかったようで、屯所で待機していた他の兵士たちもざわつきだす。


「嘘だろ……。チハ村ってあの辺境のだろ」


「5日か……。今すぐ準備してもギリギリ間に合うかどうか……。でも見捨てるわけにはいかないな」


聞こえてくる会話から察するに、今から急いで出発してもギリギリ間に合うかの場所にあるチハ村に、選民ノ箱庭が宣戦布告を仕掛けてきたようだ。。……俺たちなら少人数だし時間短縮できるかも。そう思い立ち、隣にいる二人に視線を向け告げる。


「行こう。選民ノ箱庭が来るって分かってて見捨てるわけにはいかないよ。シビアなスケジュールかもしれないけど、絶対に後悔はしたくないんだ」


そんな俺の言葉に、二人は頷き返してくれた。地図はグラーフから貰ったものがあるし、迷うことはないはずだ。頼む、間に合ってくれ。


そうして、俺たちは金に糸目をつけずに速さが自慢という御者を探し出しチハ村へと急行した。

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