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絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第2章】初レースと手にした自信

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第三節 プールに飛びこむ勇気

週明けの放課後。梅雨の合間に、気持ちのいい青空が広がっていた。


ハルとユキは、スイミングスクールの入り口でサンダルに履き替え、濡れた床に気をつけながらプールサイドへ向かっていた。そのとき——


「……あれ、あそこにいるの、さちじゃない?」


ユキが指さした先、受付近くのベンチに、さちが見慣れない競泳水着姿で立っていた。隣ではスクールのコーチが穏やかに話しかけている。


ハルとユキは目を丸くして駆け寄った。


「さち!? なにしてるの!? ……って、水着……!?」


さちは少し驚いたように振り返ると、照れくさそうに笑って言った。


「……ふたりがここで習ってるって聞いて、私もやってみたいなって思ったの」


「えっ!? じゃあ、今日から!?」


「うん。さっき入会手続きしたよ。お母さんにも、ちゃんと話した」


前日の夜、リビングで——


「お母さん。私、水泳、始めてみたい」


母・真由美は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに優しくうなずいた。


「理由、聞いてもいい?」


「ハルちゃんとユキちゃんがやってて、すごくかっこよかったの。今まで水泳って、なんとなく苦手だったけど……今ならやってみたいって思えるの。自分から何か始めたいって、初めてかも」


真由美は、そっとさちの手を握った。


「その気持ちが、うれしいよ。がんばっておいで」


そんな出来事を、照れながらさちは語った。——


「さち、君の姿勢は素晴らしいよ」


隣にいたコーチが、やさしい口調で声をかけた。


「それに、その身体つき……まだ泳いでいないのに、腹筋がしっかりしている。見れば分かる。努力してきたんだね」


「……えっ、本当ですか?」


コーチはにっこりとうなずいた。


「うん。トレーニングの成果が体に表れているってことは、それだけで素晴らしいことだよ。水泳は全身を使うスポーツだ。きっと、すぐに上達するはず」


ハルとユキが、さちの両脇に肩を寄せた。


「じゃあ、今日からは3人で泳げるんだね!」


「がんばろう! 夏までに50m泳げるようになるって、言ったもんね!」


「……うん!」


プールサイドに反射した水面の光が、3人の笑顔をやわらかく照らしていた。


その日のさちは、ビート板を使って初めての蹴伸びに挑戦し、バタ足で何度も水を蹴った。フォームはぎこちなかったけれど、水の中にいることの楽しさと、ひとつずつできるようになる喜びが、心にじんわりと広がっていた。


“また一歩、わたしは変われた”


そう思いながら、帰り道の夕焼け空を見上げた。


挿絵(By みてみん)

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