第五節 冬へ続く挑戦
成果報告会が終わった翌週の月曜日。
校庭には赤や黄に色づいた落ち葉が舞いはじめ、季節は確実に冬へと向かっていた。
「……寒くなってきたね」
登校中、ユキが手をこすりながらつぶやく。
「うん。でも空気が澄んでるから、気持ちいい」
さちがその隣で背筋を伸ばす。
「今日からまた、いつもの日常に戻るね」
ハルが言うと、リンがにっこり笑って頷いた。
「でも、もう前の“日常”とはちがうよね。あの発表で、また少し強くなれた気がする」
教室では、成果報告会の感想が黒板に貼られていた。
「すごかった」「感動した」「うちのクラス、かっこよかった」――
その中に「チームトレノの発表は、まるでプロのプレゼンみたいだった」という一文を見つけて、4人は思わず顔を見合わせる。
「えへへ……プロは言いすぎじゃない?」
ユキが小さく笑い、さちが肩をすくめた。
「でも、うれしいよね。私、自分の声が届いたんだって思えた」
「また何か、次の目標がほしくなるね」
ハルが言うと、リンが手を上げた。
「Let’s set a new goal. For winter.(次の目標、立てよう。冬に向けて)」
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その日の放課後、4人はリンの家のトレーニングルームに集まっていた。
寒さ対策として、ストレッチの時間を長めに取りつつも、筋トレのメニューは相変わらずハードだ。
「冬は基礎力を伸ばす季節。だから、地道に、でも着実に強くなっていこう」
ハルがホワイトボードに書き出す。
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【冬のトレーニングテーマ】
・持久力をさらに伸ばす
・柔軟性の維持と向上
・食事と栄養のバランス管理
・リズム体幹の完全マスター
・来年春の記録会に向けた基礎強化
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「あとさ、さち」
ユキがふと思い出したように言う。
「そろそろ、水泳の市大会の予定って出てなかった?」
「うん。たしか……来月の半ばに案内がくるはず。出場したいって思ってる」
「そのためにも、フォームの見直し入れとこうよ」
リンが言うと、ハルがさっとタブレットを取り出した。
「じゃあ、また動画でフォームチェックね。あとは食べる量も意識しないと」
「うん。最近、すぐお腹すいちゃって、いっぱい食べてるけど……筋肉になってくれてるのかな?」
さちが笑うと、3人もつられて笑う。
「トレノの身体は裏切らないよ」
「がんばった分、ちゃんと返ってくる」
トレーニングルームの鏡の前に並んだ4人の姿には、春とは比べ物にならない変化があった。
ただ細いだけではない、芯のある力強さが、力こぶにも腹筋にも表れていた。
「寒さに負けずに、もっと強くなろうね」
「うん。“冬の絆”って名前つけちゃう?」
「……いいじゃん、それ!」
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季節は、11月中旬。
冬の足音が、すぐそこまで近づいていた。




