表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第8章】届ける想い、伝える未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/50

第四節 伝統と、わたしたちの未来

朝の空は秋らしく澄みわたり、体育館の前には保護者たちが続々と集まりはじめていた。


この日は、年に一度の成果報告会。

体育館の内部はすでに準備が整い、フロア全体を三つの区画に分け、各学年が模造紙を貼り替えながら順番に発表を行っていた。


発表は、学年ごとの時系列ではなく、三学年が同時進行でそれぞれのブースで行う形式。

さち・ハル・ユキ・リンの保護者たち――真由美、あかね、たくみ、キャサリン――は、6年生の区画に集まり、子どもたちの出番を静かに待っていた。


「なんだか、こっちまで緊張するわね」

あかねが小声でつぶやき、隣でたくみが苦笑する。


「でも、4人なら大丈夫。いつも通り、ちゃんとやってくれるわ」

真由美の声には、穏やかな信頼がにじんでいた。


「それに、あの子……さちは、あの3人と出会って本当に変わった」

ぽつりと漏らした言葉に、キャサリンがそっと頷いた。


「They changed each other. That’s real friendship.(お互いを変えたのですね。本物の友情です)」



その頃、6年生の区画では、発表の準備に取りかかる子どもたちの声が飛び交っていた。


「模造紙、こっちに持ってきてー!」

「ホチキスある? ペンが足りないよ!」


チームトレノの4人も、自分たちのブースに模造紙を貼り付け、リハーサル通りの立ち位置に整列していた。


「よし、声出していこう」

ハルが背筋を伸ばして言う。


「うん。楽しもうね」

ユキが頷く。


「リン、セリフ完璧だよ」

さちが微笑むと、リンも親指を立てて応えた。


「Let’s go, Team トレノ!」



司会の先生の合図で、6年生の発表が一斉に始まった。


「こんにちは。私たちは、地域に残る伝統と、これからの未来について調べました」

ハルの明瞭な声が、体育館全体に心地よく響く。


模造紙には、地域の地図、伝統行事の写真、神社の歴史、そして昔の街並みのスケッチが丁寧にレイアウトされていた。


ユキが、地元の年中行事とその背景をわかりやすく紹介し、

さちが、他県との比較やそこから見える課題を説明。

そして最後に、リンが英語と日本語を交えて締めくくった。


「We must respect the past, but we also have to create the future.(過去を敬い、未来を創るべきです)」



「……素晴らしい……」

発表を見終えた真由美の目には、ひとすじの光が浮かんでいた。


あかねとたくみは目を合わせ、静かに頷き合う。

キャサリンは、まるで我が子を見るようなまなざしで4人を見つめていた。


「They did great. So confident, so united.(本当に素晴らしかった。自信にあふれていて、一つになっていたわ)」



発表を終えてブースに戻った4人は、肩の力が抜けたようにその場に座り込んだ。


「終わった……」

ハルが安堵の息をつく。


「ちゃんと伝わったかな……」

さちの不安げな声に、ユキが穏やかに笑った。


「大丈夫。みんなの表情、真剣だったし、伝わってたよ」


「あとで感想聞いてみよっか」

リンが嬉しそうに微笑む。



報告会はまだ続いていたが、4人の胸の中には、すでに一つの達成感と確かな手応えが宿っていた。


体育館の窓から差し込む秋の光が、模造紙の上をやわらかく照らしている。


そして、季節は静かに、冬へと歩みを進めていた。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ