第三節 伝える準備、届ける想い
「発表は体育館で、4年生から6年生までが順番に行います。保護者の方にも見に来ていただくので、しっかり準備していきましょう」
担任の言葉に、教室内がざわついた。
この成果報告会は、1~3年生が教室で創作ダンスや楽器演奏を披露し、4~6年生は体育館でテーマに沿ったプレゼンテーションを行う。保護者も自由に見学できる、いわば授業参観も兼ねた一大イベントだ。
チームトレノの4人は、教室の後ろに貼られた模造紙の一覧を眺めながら、自分たちの班のテーマを確認した。
「自分たちの地域の伝統を、他の地域と比較しながら、その未来を考える」
「……なんだか、ちょっと大きなテーマだね」
ユキが眉を寄せて呟く。
「でも、面白そう。私、調べもの好きだし!」
リンは目を輝かせた。
「私は、“伝える”のがちょっと楽しみ」
さちも穏やかに笑う。
「よーし、みんなで力を合わせて、かっこいい発表にしよう!」
ハルの声に、4人の拳が軽くぶつけ合わされた。
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週が明けてからの学校生活では、毎日のように放課後残って図書室で調べものをし、帰宅後はビデオ通話で打ち合わせ。休日にはリンの家やハルとユキの家に集まり、模造紙のレイアウトや発表練習を重ねた。
「うちの地域には、昔から続いてる染物工房があるんだって」
「それ、ユキが調べたの?すごい!」
「この前、地元の神社にお参りに行ってきたよ。そこの歴史も紹介したいな」
「他県の伝統行事と比べるのも面白いかも」
模造紙には、写真やイラスト、調べた内容が少しずつ増え、にぎやかに色づいていった。
リンは得意な英語を活かして、タイトルに「Culture & Future(伝統文化と未来)」という見出しを提案。装飾やレイアウトにもこだわり、デザイン面を引き立てていった。
「でも、あんまり飾りすぎると中身が伝わらなくなるから、バランス大事だよね」
「うん。この文字、さちが書いたの?すごく読みやすい!」
「えっ、私の?……なんか、うれしい」
ほんのり頬を赤らめながら、さちは誇らしげに頷いた。
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「発表の流れ、どうする?」
「最初にハルが地域の概要を紹介して、それからユキが伝統行事について話す」
「私が他県との比較をまとめて、最後にリンが“未来へつなぐために”って締めるのはどうかな?」
「それ、すごくバランスいいと思う!」
模造紙の前で、4人は何度もリハーサルを繰り返した。
言葉に詰まっても、声が小さくても、互いに支え合いながら、少しずつ完成形へ近づいていく。
部屋の隅には、いつものホワイトボードとストレッチマット、ダンベルが置かれたまま。
「発表とトレーニング、両立できてるのすごくない?」
「むしろ、集中力上がってる気がする」
「うん。“メンタルの筋トレ”って感じ!」
夜が更ける前には必ず解散し、それぞれ家で最終仕上げを整える。
その積み重ねが、4人の心に自信と落ち着きを育てていった。
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カレンダーには、赤ペンで丸がつけられていた。
「成果報告会:体育館発表(保護者参観あり)」
その日まで、あとわずか。
4人の気持ちは、しっかりとひとつに結ばれていた。
「ただ調べて終わりじゃない。“伝える”ことが大事なんだ」
伝統の重みを知り、それを未来へとつなぐ。
その使命感が、トレーニングと同じように、4人の心に火を灯していた。




