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絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第8章】届ける想い、伝える未来

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第二節 仲間のぬくもり

──静かな午後。


さちは自室のベッドに腰かけ、水入りのダンベルを左右の手に一つずつ持っていた。


ゆっくりと、片腕ずつ交互に持ち上げる。力を込めるたびに、腕の内側に熱が宿っていく感覚が蘇る。


(……少しずつ、戻ってきてる)


鏡に映る自分の上腕。

繰り返してきたトレーニングの成果が、しっかりと形になって現れていた。


「……よかった。ちゃんと、戻ってきてる」


ほっとしたように、さちは小さく笑った。


つい最近まで、自信をなくしかけていた。でも今は違う。

筋肉が応えてくれる。それが、さちの心に確かな“手応え”として響いていた。


(今なら、なんでもできそうな気がする)


無理はしないと決めていた。けれど自然と身体は動き出す。

軽いセットで腹筋、背筋、スクワット……次第にリズムが戻ってくる。


「やらなきゃ」ではなく、「やりたい」と思える感覚。

その“変化”が、さちには何より嬉しかった。


「ふぅ……」


一通りのメニューを終えた頃、玄関の鍵が開く音がした。


「さち、ただいまー」

台所から、母・真由美の声。


「おかえり……」


ドアを開けて部屋をのぞいた真由美は、床に置かれたダンベルを見て目を見開いた。


「……トレーニングしてたの?」


さちは、少し照れながらうなずいた。


「ちょっとだけ……。でも、身体が動くようになってきて……つい」


「ふふ、それならよかった。シャワー浴びて、さっぱりしてきたら?」

「うん」


真由美は優しく笑い、キッチンへ戻っていった。


──少し後。


シャワーを浴びてパジャマに着替えたさちは、ベッドに腰を下ろしながらトレーニングの本をめくっていた。


“休養もトレーニングのうち”

“継続は力なり”


ページの隅に書かれた言葉が、今のさちの心にしみわたる。


――そのとき。


「ピンポーン」


玄関のチャイムが鳴った。


「はーい」


真由美が出ると、そこにはハル、ユキ、リンの3人が立っていた。


「あら、来てくれたのね。ありがとう」

「お見舞いに来ました!」

「さち、大丈夫そうですか?」

「まだ本調子じゃないけど、ずいぶん元気になってきたわ。どうぞ、上がって」


3人は丁寧に挨拶をして、さちの部屋へと向かった。


「えっ、みんな……来てくれたの!?」


ベッドにいたさちは、思わず立ち上がろうとしたが、ユキがすぐに手を伸ばした。


「いいのいいの。寝ててよ!」

「でも……うれしい」


さちの笑顔に、3人もほっとしたようにうなずいた。


「あ、これ今日の授業の板書と配布プリント。宿題の内容もまとめてあるよ」

ハルがルーズリーフとファイルを机の上に並べる。


「ありがとう……ほんとに、助かる」


ユキがふと床のダンベルに気づき、目を丸くした。


「まさか……さっきまでトレーニングしてたの?」

「うん、軽く……だけど」


「もう、筋トレ以外考えてないでしょ!」

ユキが笑って小突くと、ハルとリンも思わず吹き出した。


「だって……自然に、体が動いちゃうんだもん。みんなと一緒にやってると、少しずつ変われるのが楽しくて……。今日、久しぶりに腕が“応えて”くれて……嬉しくなっちゃったんだ」


さちの真剣な声に、3人は静かにうなずいた。


「さちは本当に、変わったよ」

「最初のころとは、別人みたい」

「でも、“今のさち”が、一番かっこいいよ」


その言葉に、さちは思わず目を伏せた。


「ありがとう……でも、私……自分が情けなくて……。ちょっと油断しただけで、みんなと離れちゃった。1日、一緒にいられなかっただけなのに、それがすごく……寂しくて、悔しくて……」


絞るような声とともに、さちの目から一筋の涙がこぼれた。


それは静かに、頬を伝い落ちていった。


「……さち、その涙は、がんばってきた証拠だよ」

ユキが静かに言う。


「そう。自分を責めなくていい。さちがここまで変わったこと、私たちが一番よく知ってる」

ハルの言葉に、リンも力強くうなずいた。


「We’re always together. Forever team “Toreno”!」


「……うん」


涙をぬぐいながら、さちはようやく笑顔を浮かべた。


──4人の目が合い、空気がまた少し明るくなる。


「そういえば、今日の学級活動で“成果報告会”の話が出たの」

「地域の伝統と未来がテーマなんだけど、調べることはさちも一緒に決めたいから、明日先生にそう伝えることにしたよ」


「……ありがとう。私も、ちゃんと考える」


自然な流れで、4人の“話し合い”が始まっていく。


次の目標に向かって。

また、4人で一緒に歩き出すために――。


挿絵(By みてみん)

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