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絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第8章】届ける想い、伝える未来

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第一節 仲間のために、できること

「……さち、今日はお休みです」


担任の先生の朝の一言に、教室が一瞬静まり返った。


「えっ?」とハルが小さく声をもらし、ユキとリンも同時に顔を上げる。


「どうしたのかな……」

「昨日まですごく元気だったよね」

「風邪かな……?」


3人は顔を見合わせた。目は、ほんの少し驚きに見開かれている。


「あんなにトレーニングしてても、風邪ってひくんだね……」

ハルがぽつりとつぶやいた。


「それだけ、がんばってるってことよ。身体、限界だったのかも」

ユキが、昨日のさちの様子を思い出すように目を細めた。


「とにかく、今日はさちのぶんも、ちゃんとがんばろう」

リンのまっすぐな言葉に、3人は静かにうなずいた。


1時間目が始まると同時に、チームトレノの3人は行動を開始した★。


ハルはいつも使っているルーズリーフの束から、余白の多いページを手際よく分けた。


「このページに1時間目と2時間目、ユキ、お願い」

「うん。じゃあ、私は3時間目と4時間目ね」

「私は、さちがもらえなかった配布プリントをまとめておくわ」

リンはファイルを取り出し、丁寧に名前を書き入れて分類を始めた。


板書にはいつもより少し時間がかかったけれど、3人は一言も文句を言わず、それぞれの役割を集中してこなした。


そして5時間目、学級活動の時間。


「みんな、11月半ばに行われる『成果報告会』の準備を始めます」

担任の先生が、前に出て話し始めた。


「このクラスのテーマは、“地域の伝統とその未来”です。他の地域と比べながら、自分たちの住んでいる街の歴史や文化を調べて、まとめてもらいます。班に分かれて、模造紙やスライドで発表できるようにしましょう」


教室がざわつき、クラスメートたちは班分けの相談を始める。


だが、誰もチームトレノの4人を誘おうとはしなかった。


「トレノの4人は、もうチームだもんね」

「うん、いつも息ぴったりだし」


それが“当たり前”のように受け入れられている空気だった。


ハル、ユキ、リンの3人は、小声で相談した。


「やっぱり、さちを交えて決めたいよね」

「うん。誰が何を調べるかも、一緒に決めたい」

「じゃあ、先生に伝えよう」


3人は手を挙げ、担任に声をかけた。


「先生、私たちの班は4人チームです。でも今日はさちがお休みなので、明日までに話し合って、報告します」

ユキが代表して伝える。


先生は少し驚いたように目を見開き、やがて笑顔になった。


「そうか、ありがとう。チームトレノの結束は素晴らしいね。もちろん、それでいいぞ」


その返事に、3人は顔を見合わせてにっこりと笑った。


放課後。


トレーニングを終えた3人は、それぞれの役割をこなしながら準備に取りかかった。


「プリントとメモ、ファイルに全部まとめたよ」

「ルーズリーフも、読みやすいように色分けしておいた」

「お見舞いだから、お菓子とかも少し持っていこうか?」


ハルがバッグを整理しながら言う。


「さち、喜ぶかな……」

ユキが少し不安そうに呟く。


「喜ぶに決まってるよ。さちにとっても、わたしたちにとっても、チームトレノは“ひとりも欠けちゃいけない”から」

リンのその言葉に、ハルもユキも力強くうなずいた。


「じゃあ、行こう。さちに会いに」


日が落ち始めた街を、3人は歩き出した。


さちの不在を、ただの“欠席”にしないために。

チームとして、友達として、心からの思いを届けるために──。


挿絵(By みてみん)

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