第四節 歩いてたどり着いた“おもいで”
東京駅に到着した大型バスから、次々と生徒たちが降りていく。
ひんやりとした朝の空気の中、秋晴れの空には高く白い雲が浮かんでいた。
「東京って、なんか空の色も違う気がするね」
ハルが首を伸ばして高層ビルを見上げながらつぶやく。
「空気も澄んでて気持ちいいし、今日は最高の遠足日和だね」
ユキが笑顔で応える。
さちも、真新しいトートバッグを肩にかけながらうなずいた。
「国会議事堂、テレビでしか見たことなかったけど……本物は迫力あるね」
午前中は全クラスでの国会議事堂の見学。
重厚な建物の中、議場の荘厳な雰囲気に包まれながら、議員の仕事や政治のしくみについて学んだ。
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そして――午後の自由行動。
班ごとに分かれて、地図を手に出発していく中、チームトレノの4人も駅前の歩道に立った。
「じゃあ……出発しよっか。目指すは“おもいでミュージアム”!」
さちの声に、全員がうなずく。
「公共交通? もちろん……使いません!」
ハルがにやりと笑った。
「徒歩で行くってだけでテンション上がるの、私たちくらいだよね」
ユキが呆れたように笑う。
「トレーニングもかねてだよ。筋トレだけじゃなく、持久力も大事だしね」
ハルが冷静にまとめ、4人は地図を頼りに歩き出した。
カフェやショップが立ち並ぶ街を抜け、30分ほど歩いた先に、目的地「おもいでミュージアム」が姿を現す。
「着いたーっ!」
ハルが両腕を広げて叫ぶ。
博物館の入り口は木造のアーチで、どこか懐かしい雰囲気を漂わせていた。
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中へ入ると、1階には昭和の教室や駄菓子屋、商店街のジオラマが並び、4人は目を輝かせて見て回った。
「これ、さちのママが子どもの頃の時代じゃない?」
「電話がダイヤル式だよ! 見たことない!」
「なんか不思議だけど、あったかい感じがするね」
そして2階の体験コーナーへ。
「こちらでペンダント作り体験ができますよ~」
スタッフの女性が笑顔で迎えてくれた。
4人は席につき、丸いガラスの中から自分の色を選び、刻印に入れる文字を考える。
「私は“TRENO”って入れる!」
「私も!」
「じゃあ、みんなおそろいだね」
「いいね、それ。これから先も忘れないために」
道具を使って刻印を入れ、チェーンを通す頃には、4人とも無言で集中していた。
完成したペンダントは、それぞれの胸元で静かにきらめいていた。
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「……すごくいい思い出になったね」
さちが静かに言う。
「ここまで歩いてきたのも含めてね」
ユキが笑い、4人は館のテラスへ出て、秋空の下でお弁当を広げた。
「これが小学生最後の遠足って、ちょっと信じられないよね」
リンが空を見上げながらつぶやく。
「でも、最高の一日にできたと思う」
と、ハル。
4人は胸元のペンダントに手を添えながら、それぞれの心に残る“おもいで”を静かに確かめていた。




