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絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第7章】重なる過去とつながる未来

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第二節 誇りと絆がつないだ日々

さちの家を後にし、夕暮れの空の下、4人はリンの家へと歩いていた。

トレーニングを重ねる日々は、いつしか「当たり前」になっていた。

――その当たり前が、今ではとても大切で、特別なものに思えた。


到着したリンの家。

玄関を抜けて奥に進むと、トレーニングルームにはマットが敷かれ、壁には器具や鏡、ダンベルラックが整然と並んでいた。


「今日もがんばろう!」


ハルが手を叩き、練習が始まる。


筋トレの合間には、リンに教わった柔軟運動も欠かさない。

最近では3人とも、I字バランスや180度開脚にかなり近づいてきていた。


「ほら、見て! ここまで開くようになったよ!」


ユキが足を伸ばして見せると、リンが拍手して声を上げた。


「すごいよ、ほんとに! ちゃんと続けてるのが伝わってくる!」


さちは照れながらも、小さくうなずく。


「最初は絶対ムリって思ってたけど……やれば変われるもんなんだね」


汗を拭きつつ笑い合う中、ユキがタブレットを取り出す。


「ねえ、ちょっと面白い動画見つけたんだけど……これ、やってみない?」


動画のタイトルは《リズム体幹》。

リズムに合わせて足を開閉しながら手を交互につき、最後はゆっくりプッシュアップ――まるでダンスと筋トレが合わさったような動きだった。


「これ、かっこいい! やってみたい!」


さちが真っ先に挑戦するが、タイミングが合わず、マットにごろりと転がる。


「うー……難しい……!」


「これは練習が必要だね」


ハルが真顔でうなずいた。


「よしっ、じゃあこれも“トレノ”のトレメニューに追加!」


「リズムトレノ、始動だね!」


「新しい挑戦、楽しもう!」


笑い声がトレーニングルームに響いた。



その夜、ハルとユキの家。


「ただいまー」


「おかえり。……ねえ、今日ね、警察の方からお電話があったのよ」


母・あかねの言葉に、ふたりは思わず顔を見合わせる。


「昨日のこと……?」


「そう。あなたたちが、溺れていた子を助けたって。すごく立派だったって、お礼を言ってくださったの」


あかねは穏やかに笑ったが、少しだけ表情を曇らせた。


「でもね……もし川の流れがもっと強かったらと思うと、ぞっとするの。だから、今回のことは本当に誇らしいけれど、これからは――自分の安全も、ちゃんと考えて」


静かな声に、2人は少し照れくさそうにうなずいた。


「……うん。わかってる。でも、大丈夫だったよ。チームで動いたから」


「うん。みんながいてくれたから、できたんだよ」


2人は自室に戻り、あの日のことを思い返しながら、仲間の存在をかみしめた。



翌日、体育館では全校集会が行われていた。


「……それでは、これより表彰式に移ります」


司会の先生の声に、生徒たちの視線が壇上へと集まる。


最初に呼ばれたのは、ハルとユキ。


「県大会にて、白水ハルさんは優勝、白水ユキさんは準優勝という素晴らしい成績を収めました。おめでとうございます」


校長先生から、立派な賞状が2人に手渡される。


続いて――


「全国大会では入賞には至りませんでしたが、その健闘が認められ、敢闘賞が授与されました」


ふたたび壇上に立った2人に、驚きと尊敬の入り混じった拍手が送られた。


その後――


「次に、夏休みの自由研究にて、金賞を受賞した3名を表彰します。白川さちさん、白水ハルさん、白水ユキさん、前へどうぞ」


さちは少し緊張しながらも、胸を張って壇上へと進む。

初めての表彰状。受け取るその手には、確かな実感があった。


校長が壇を降り、式が終わるかと思われたそのとき――


「まだ、もうひとつ表彰があります。今回は、特別に警察署長より感謝状の授与です」


ざわめく体育館。


「白川さちさん、白水ハルさん、白水ユキさん、リン・ハリソンさん、前へどうぞ」


4人が前に出ると、警察署長が笑顔で迎える。


「皆さん、先日は児童を救助していただき、本当にありがとうございました」


額入りの感謝状が読み上げられ、一人ひとりに手渡される。


「これは、あなたたちの勇気とチームワークへの感謝の証です」


司会の先生が補足する。


「先日、川で溺れかけた低学年の児童を、4人が協力して救助してくれました。その冷静な判断と連携は、大人たちからも高く評価されました」


会場から大きな拍手が起こった。


4人は顔を見合わせ、照れたように笑い合う。

だがその笑顔の奥には、たしかな誇りと絆がにじんでいた。


風が涼しさを増し、校庭の木々がほんのりと色づき始める。

季節は、静かに――9月から10月へと移ろおうとしていた。


挿絵(By みてみん)

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