第一節 運動会、そして“チーム・トレノ”
9月の中旬、朝の空気は少しだけひんやりとしてきていた。
セミの声も静まり、かわりに木々の葉が風にそよぐ音が耳に残る。
「……よしっ、今日は肩まわり中心の補強メニューいくよ!」
ハルの号令が響き、リンの家のトレーニングルームでは、いつもどおりの空気が流れていた。
「片手プッシュアップ、もう少し回数いけそう?」
「リン、レッグレイズで脚の高さキープしてみて。そう、10秒カウント!」
「ふぅ~……トレノのメニュー、今日も容赦ないなぁ……」
「だって“バランスよく強くなる”のが目標でしょ?」
笑いと汗が混じる空間で、4人は全力で自分たちを追い込んでいた。
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その日の昼休み。
教室では、担任を中心に、運動会の騎馬戦メンバーの相談が始まっていた。
「さて、6年2組の騎馬戦メンバーを考えようか。……うちはマッスルな女子が多いからねぇ」
「先生、それ絶対、あの4人のこと言ってますよね!」
クラスのあちこちで笑いが起きる。
「……だって実際、“マッスル女子カルテット”じゃん? 水泳+体操の混合パワーユニット!」
「異論なし……あの4人、下にしたら絶対崩れない……」
先生もおどけながら黒板に書き出した。
《マッスル女子チーム》:ハル、ユキ、さち、リン
「ちょ、ちょっと! 名前が強すぎるってば!」
ハルが苦笑しながら手を挙げると、ユキとさちも肩をすくめて笑った。
「先生、私たち、ちゃんとしたチーム名あります。“チーム・トレノ”です!」
「“キズナ・トレーニングノート”の略で、“トレノ”!」
「へぇ〜! かっこいいじゃん!」
クラス中がざわつくなか、西園寺先生も満足げにうなずいた。
「よし、“チーム・トレノ”。その名前でいってみよう!」
「リンが上に乗るんだよね?」
「うん。リンが一番軽いし、バランス感覚も抜群だから、安心して任せられる」
「それに、上からの動きや姿勢って、体操の経験が活きると思う!」
リンは少し照れながらも、しっかりと頷いた。
「わたし、みんなのtrustにこたえるね。日本での思い出、もっともっとspecialにしたいから!」
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放課後。
4人は再びトレーニングルームに集まり、ホワイトボードに新たな目標を書き加えていた。
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【運動会・特別トレーニング目標】
•騎馬戦で全戦勝利!
•体幹&持久力アップ(立ち姿勢・サポート力)
•リン:体幹+バランス感覚の強化
•全員で“たくましい背中”を目指す!
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「騎馬戦って、一瞬の勝負だけど、そのためにどれだけ仕上げられるかが勝負だよね」
「“トレノ”の名にかけて、負けられない……!」
「背中で支えるパワー、ガチで育てるぞ〜!」
「わたし、絶対落ちないようにbalanceと脚力、もっと鍛えるね!」
夕焼けに染まる窓辺で、並んで立つ4人の姿は、かつてないほど頼もしく――
まさに「チーム」そのものになっていた。
運動会という大きな舞台。
そこで彼女たちは、「自分たちらしさ」で挑む決意を固めていた。




