プロローグ
新作です。
「ん、う~ん」
朝が来たのか、目が覚める。しかし、其処にあったのはいつも馴れ親しんだ布団の感触ではなく、とても硬く冷たい強いて言えばタイル張りの床のような感覚であった。
(何だ?寝相が悪すぎて布団から転がり出てしまったのか?)
等と考えながら目を開けるとわかった。俺が眠っていたのは自分の部屋ではなく暗い独房のような部屋だった。
「なっ!なんだこりゃ!」
思わず口から大声が出る。直後に部屋の隅にあったスピーカーから男の声が聞こえてきた。
「おはよう、雨夜誠くん。よく眠れたかな?まあ、わざわざ強めの麻酔を使ったのだからよく眠れて当然なのだがね。」
それは人を小馬鹿にしたような、しかし何処か真面目な気性を感じさせるそんな声だった。
「お前は誰だ⁉俺をここに連れてきて、いったいどうするつもりだ!」
思わず大声で怒鳴る。しかし・・・
「ああそうそう、言い忘れていて申し訳ないのだが…この音声は各部屋のスピーカーに備え付けられた録音なので、何を喚こうが叫ぼうが私には聞こえないから知っておいてくれ給え。」
無慈悲な音声が流れる。怒鳴った直後に言われると少し恥ずかしくなってくる。なので黙って聞くことにした。
「では本題だ、と言いたいところだが。部屋の扉の鍵は開けてある。さっさと部屋から出給え。本題はそれからだ。・・・ツ〜〜」
音声が言い終わると同時に音声が終わる。胸の中のイライラを抑えつつ、これ以外に方法はないと自分に言い聞かせ扉に近づいてドアノブを捻り少し押す。確かに鍵は掛っておらず簡単に開いた。そして、部屋の外に出ると同時に俺は昨晩あったことを思い出すのであった。
本題とは何なのか。