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7 待ち合わせ

「暇だ。。」

意気揚々と村を出てから10日ほどたった頃か。

最初はいつ戻ってきてくれるかとワクワクしながら待っていたが、流石に数日経った頃には気持ちも落ち着いてくる。


「鳥になりたい。。」

大樹の大きな木の枝に背中を預け、両手両足をブラブラとしながら空を飛ぶ鳥を見てそう呟くのだった。


「そもそもあれって約束だったのかしら。」

時間が経つにつれあの時話していたことも曖昧になってくる。

あの時言ってくれたことはその場しのぎのウソだったのか。


「はあ。。」

ため息も何回ついたことか。

このままここにいても仕方ないのかな。


バサバサバサ!

「うわわっ!」

大樹の近くを大きな怪鳥が飛んでいく。

力が完全に抜けていたためその風圧でそのままズルリと下に落ちる。


ドシン!

「いたい。。」

人間であれば軽く骨折はしていたであろう高さだが、鬼族の強靭な肉体にはかすり傷程度である。

そのためすぐに立ち上がることなど造作もなかったが、立ち上がる元気がなかった。


「一度鬼族の村に帰ろうかしら。。」

期待1%、諦め99%になろうとしていた時、話声がこちらに聞こえてくる。



「お頭ー!人間が落ちてきやしたぜ!」


山賊か?

あまり身なりの良くない中年の男性が私を指さしながら遠目に見える人間に対して大声で呼びかける。


「人間?!遺跡の宝を横取りしようってか?!」

最初に近寄ってきた中年の男性よりより大柄な男はノッシノッシとこちらに向かってくる。

大柄と言っても鬼パパに比べたら石ころみたいだが。

後ろには数人の仲間たち。

彼らもお頭と呼ばれるその大男の後ろをぞろぞろとついてくる。


どうやら遺跡にあるお宝目当てでやってきたみたいだ。


「石のゴーレムが倒されたって噂だったが、人間の女が降ってくるなんて話は聞いてねーぞ。」

大きな手で頭をガシガシとかく。


石のゴーレム!

私は横になっている私にワラワラと近寄ってくるその男たちより石のゴーレムが倒された噂というのワードが気になってしまった。

噂が流れているということはフィンたちが街まで戻って状況を周囲に話したということ


「フィン、無事に帰れたんだ。。」

私がボソッと呟くのをジロジロとみてくる。


フィンが無事に街まで戻れたということの安心感と同時に、じゃあなんで戻ってくれないんだという気持ちも溢れた。


「やっぱりあの約束は嘘だったんだ。。」

ポロポロと涙が流れる。


こんな森の中で大樹から落っこちてきてボロボロ泣いている女とはいったい何者なのか。

山賊たちは興味よりも不気味さを際立たせて引いている。

「魔物が化けてんのか?」

不振に思っていた時、人影が飛び出してきた。


「貴様ら!ミーアから離れろ!」

ざっと飛び出してきた影は、山賊たちを押しのけて、彼らの目線の先にいた女性に駆け寄る。


その人影は倒れているミーアを抱きかかえて、

「ミーア大丈夫?待たせてごめんね。」

と素敵な笑顔で私に話しかけるのだ。


涙でにじんでいた視界がクリアになっていくと、その人物がはっきりと見えてくる。

茶色のサラサラした肩まで伸びた髪を後ろで一つにくくる、その整った顔立ち。

それは10日前にここで出会った彼だった。


「フィン!」

私は思わず彼に抱き着く。


「わわ!」

勢いがついてしまったものだからフィンは後ろにお尻をついてしまう。


「フィン!フィン!フィン!」

会えないのかと思った。でも来てくれた。

私のことを覚えていてくれた。

それがどんなに嬉しいことか。


先ほどの涙とは別の意味で嬉し涙が溢れる。


「な、なんだこいつら。」

山賊たちは私たちのやりとりをなおも不審な様子で伺っている。


それに気づいたフィンは挨拶もそこそこに立ち上がり、

「女の子相手になにをやっている!」

と山賊たちに向かって腰に差していた短剣を抜き彼らに向ける。

あの時の毒蛇を仕留めたものと同じ短剣だ。


「いや俺ら別になにもしてないけど。。」

なあ、とお頭と呼ばれている大男が周りに呼びかける。


「嘘をつけ!横に倒れて泣いていたじゃないか!女の子相手に大人数で卑怯だぞ!」

山賊たちはどうしたもんかと思っているが、私はそれどころではない心中だった。


お、女の子!!

女の子扱いしてくれた!!


なんて嬉しい響きなの!

私はキラキラした目をフィンに向ける。


鬼族では男も女もこどもも老人もなにも関係ない。

武を極める彼らにとって女の子などという概念はないのだ。


私はジーンと甘いその響きを噛みしめていた時、

「ミーア!行こう!さすがに大人数相手では君を守り切れる自信がない!」

そう言ってフィンは私の腕を掴んで走りだそうとする。


守る?!

私を守ってくれるの?!

それってお姫様みたーい!


なんて心の中は半狂乱状態ではあるが、

「あ、ちょっと待って。」

と私はササっと走って大樹の根元に置いていたヒョウ柄のカバンを手に取る。


そして再びフィンと手を繋いで走りだす。


「フィン!どこに行くの?!」

先導してくれるフィンに私は叫ぶ。


「もちろん街さ!約束しただろ!」

覚えていてくれた。

あんな立ち話でしたような話を。


私はこれから向かう街への期待より、目の前を走る彼の後ろ姿にドキドキするのだった。




「いや、だからなんだったんだ。」

あっという間の出来事に理解が追い付かず取り残される山賊たち。


「さあ。。」

一番最初にミーアを見つけた男が答えたのだったが、その答えを教えてくれる人はもういない。




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