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40 私の王子様

どれくらいの時間が流れたのだろうか。


恐らく時間的には一瞬だったのだろう。

けれど。

私にはこの瞬間がとても長く感じた。


ずっとこの時間が続けばいいのにと思った。



「ミーア。ごめん。」

静まり返った空間でフィンが言葉を発する。

彼は何を謝っているのだろうか。

また私が変なことを言ってしまったのだろうか。


「ごめん。」

またしても謝罪の言葉を告げるフィン。



「フィン。何を謝っているの?」

静まり返ったこの場で言葉を発するのは少し緊張したが、フィンが何を考えているのか聞きたくて返事をしてみた。


フィンは少しだけ考えた後。


「ミーアが王子様と恋がしたいって言っていただろう。」

重い口を開く。


そう言えばそれも夢の一つでフィンに話したこともあったっけ。

覚えていてくれたんだ。


「本当はエイリーク王子と元々友人だったから、紹介しようと思えば出来たんだ。でも紹介したくなかった。」

フィンは優しいからそんなことまで考えてくれていたのか。


「いいよ。フィン。たとえ友人でも王子様を紹介なんて易々と出来ないだろうし。」

私は本当に気にしていなかった。

だって紹介されたところでただの一般人と恋愛に至るなんてことも難しいだろう。


「違う。」


「え?」

何が違うんだろう?

私はフィンの言葉を待つ。


「俺がミーアをエイリーク王子に紹介したくなかったんだ。」

私はフィンの言葉を静かに聞く。

なんとなく返事をしずらくて。


少しの静寂の後にフィンが口を開く。



「好きだ。」



「ミーアが好きなんだ。」



「あの日僕を救ってくれた。」



「なんてことないことでも笑顔で楽しむミーアに惹かれたんだ。」



「誰にもミーアを渡したくなかった。」



「君をエイリーク王子に見せたくなかった。」



「君が好きだから。」



私は思わずフィンを抱きしめた。

抱きしめてくれたフィンを抱きしめ返すように。


言葉が出ない。

フィンの思いに返事をしたいのに。

もう何を言ったらいいのかわからない。


だって私だって。


「ごめん。」

また謝ってくるフィン。



「僕は王子様なんかじゃない。けど、誰よりもミーアを愛してる。」

そう言いながら抱きしめる腕を更に強くする。



「私の王子様はフィンだよ。」



私は考えることを止めた。

思っていることをそのまま言う。



「絵本の王子様なんてどうでもいい。」


言葉を取り繕う必要なんてない。


「フィンのことが好きなの!フィンがいいの!フィンじゃなきゃ嫌なの!」


こんな私を愛してくれたフィンに。

私は私の感情をそのままぶつけた。


涙が溢れ出てくる。


悲しいからじゃない。


彼を好きで好きでたまらないから。


「フィンのことが大好きなの。でもフィンみたいな素敵な人が私のこと好きになるわけないって思ってた。言わないつもりだったの。」


フィンは私を抱きめながら私の話を聞いていてくれる。

その抱きしめる強さが彼の意志を強く感じることが出来る。



「ミーア。」


フィンが私を呼ぶ。

優しく、けれどどこか心強く。


私を確認するように私を呼ぶ。


私は返事をする代わりにフィンの瞳を見る。

愛しい人を見るように。

愛して欲しいと懇願するように。



するとフィンの顔がゆっくりと私に近づいてくる。


私はゆっくりと瞳を閉じる。



フィンは私に口づけをしてくれた。

それは優しく。

絵本の王子様が眠っているお姫様を起こすように。


でもこれは絵本ではない。

私は呪いにかかってもないし、フィンは魔法を解く王子様なんかじゃない。


キスをしたってはい、ハッピーエンドです。で物語は終わらない。


私たちはこれからも一緒に過ごしていく。

きっと時には喧嘩だってする。


でも私は貴方と一緒にいたい。

貴方と一緒に年をとっていきたい。


ずっとフィンの傍にいさせて欲しい。



彼はなおも私のことを抱きしめる。

私が夢じゃないんだと知らしめてくれるように。



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