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4 毒蛇

「僕はフィン マックベル。」

持っていた布を水筒から少し水を垂らしてから体についた血を拭く。


「私はミーア!フィンはここで何をしていたの?」

ここは森の中でも入り口から割と深い位置にある。

深い位置にあるということは必然と魔物も強くなってくる。

何かしら理由がなければここにはいないだろう。


「実は。。僕たちの仲間の一人が先日襲われてしまって。その際にナイフで刺されたんだけど、ナイフに毒がついていたんだ。」

彼は体を拭きながら説明してくれているが、ここに来た理由を話し始めると少し顔つきがこわばる。


「毒?」


「そう、しかも通常の毒消し薬では治すことができかったんだ。」

彼の顔がより強くこわばる。


「僕は彼をどうしても助けたかった。王宮にある文献を読み漁って助ける方法を寝る間も惜しんで探して、そしてあらゆる毒に対する特効薬があることを知った。ここに来た理由は、この遺跡の中にいるベネノスネイクという毒蛇からとれるエキスが特効薬の素材になるからなんだ。」


「蛇からそんなすごいものができるのね。」

蛇と言えば姉の大好物である蛇の蒲焼くらいしかイメージがなかったわ。

神妙に話す彼とは裏腹に私の脳内は筋肉もりもりの姉が美味しそうに蛇を食べる姿を想像する。


「幸いにも遺跡の入り口付近にその蛇は生息しているらしいから、その蛇を倒したらすぐ脱出しようって計画だったんだ。でもまさか入り口の前に石のゴーレムがいるなんて思わなくて。」


「そこで私が出くわしたのね。」

ちょうどやられる寸前だった時に見つけられて良かった。

先ほどのことを思い出して私はほっと安心する。


「ええ、貴女が偶然にも助けれくれなければ我々は全滅してしまうところでした。友人を助けたくてここまで来たのに、我々が死んでしまったら元も子もないですよね。」

彼は体を拭いていた手を止めてハハっと自傷気味に笑う。


「僕って本当に馬鹿だな。いざという時にまるで役に立たない。。」

頭を下げて布を掴んでいた手に力を入れる。

悔やむ様子をみると今だけではない後悔があるのだろうか。


「馬鹿じゃないわ。」

私の声にフィンは下げていた頭を上げる。


「お友達のためにこんな森の中まで来るなんて誰にでもできることではないわ。だって死ぬかもしれないのよ?」

彼の目の前まで行って顔を突き合わす。


「貴方が友人のためにここまで来れたこと馬鹿にする人なんていない。もちろんそこに寝ているお友達たちだって。私はあなたを尊敬するわ。」

彼の眼を真っ直ぐに見て正直な私の気持ちを話す。


「ありがとう。伝説の鬼族に言われると嬉しいな。」

フニャっと笑う彼の顔が可愛くて少しだけドキっとする。

男性を可愛いって思うなんて変かしらと両頬を両手で覆いながら赤くなる顔を隠す。


「でもせっかく倒してくれたけど、この状態で遺跡を探索することも出来ないし。どうしたものか。」

他に方法はないかと考え始める彼に向かって私は遺跡の入り口付近を指さす。


「蛇ってあれは違うの?」

私は入り口付近をウロウロしているお腹が横に広がっている紫色の蛇を指さす。

私の言葉を聞いた彼が私の指を刺した先にいる蛇を見る。

「え!」

蛇をみた彼は驚いた後カバンの中から一冊の本を取り出す。

パラパラと少しめくって止めたページには目の前にいる蛇と同じ紫色の蛇の絵がのっている。


「同じね!」

私は彼の背後から本を覗きこんで、絵と実物を交互に見ながら同じだと興奮する。


「なんで。。」

予想外のことに体が動かないみたいだ。


「貴方が入り口付近にいるって言ったんじゃない。」

彼はハッとして

「そ、そうか。入り口付近って遺跡に入った先にいるのかと思った。僕の勘違いだったのか。」

石のゴーレムが邪魔をしてたけれど、今はいないため入り口付近が開けて見える。

元々この付近の草むらにいたのかもしれない。

どちらにせよ石のゴーレムとの戦闘は不可避だったが。


「あの蛇は猛毒を持っていますが、戦闘力自体は高くありません。」

そう言うと彼は腰に差していた短剣を取り出す。

蛇に気付かれないように足音を立てずに近くまで行くと甘い匂いのした丸い食べ物をいくつかばらまく。

恐らくその蛇の好物なのだろう。


予想通り蛇は食べ物に寄ってきた、その瞬間彼が蛇の口めがけて上からナイフを突き刺す。

蛇の大きな口が上から刺されたナイフによって地面と縫い付けられる。

自由になる体はバタバタしているが、一番やっかいな猛毒が出てくる口さえ塞いでしまえばなんてことはない。


「あれが毒蛇。」

私はあの紫色の蛇を見てよく夕飯の食卓に出てきた蛇だったと思い出す。

「そう言えば鬼姉があの蛇食べた時に喉がビリビリするのが癖になるーって言ってたわね。あれは毒だったんだ。」

毒蛇の口が開かないように縄で結んだ後に瓶に詰めているフィンを見ながら私はなるほどと頷くのだった。



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