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39 緑色のドレス

舞踏会に着ていく服も例の高級ブティックで着させてもらった。

私もちゃんと働いてお給金をもらているのだから、自分で買うって言ったけれど許してはもらえなかった。


前にお城に行った時の上品なドレスではなく、今回は舞踏会のため、フリルがふんだんについた華やかなドレス。

今回のドレスが自分に選ばせて欲しい、とフィンが選んでくれたドレス。

エメラルドグリーンの綺麗な色がよく映える。

綺麗だな。

まるでフィンの瞳の色みたい。


私は気分を良くしながらエイリークが待つ舞踏会へと足を踏み入れたのだった。


会場である広間にはたくさんの貴族たちが色とりどりのドレスを着ている。

ここにいる人たちみんな貴族なのかしら。


変なことしないように気を付けよう。

私が身を引き締めていると。


グニ。


「ふえ?」

フィンが私のほっぺを左右に引っ張っていた。


「ふぃん、はにふるのー。」

この会場でなにをふざけているのか。

「ごめんごめん。ミーア。怖い顔してたからさ。せっかくだから楽しもうよ。」

タキシードに身を包んだフィンが私に笑いかける。

いつものフィンもカッコいいけど、着飾ったフィンもまた素敵だ。


「そうね。緊張するけど、せっかくの機会楽しむわ。」

こんな機会滅多にないのだし、楽しもう、そう思っていたところに王様とエイリークが入ってきた。


王様は皆に挨拶した後に、アーノルト王子が王太子ではなくなったこと、エイリークが代わりに王太子に即位したことを簡潔に伝えた。

難しい話は今すべきではないと思ったのか。

まあ話さなくても、アーノルト王子が悪行して追放された話はもう庶民の間でも話題になるくらいだから説明しなくてもいいか。


王様の挨拶の後にエイリークが挨拶をする。


「私はこの国をより良くしたいと思っている。ついて来て欲しい。」

彼の演説はこの場にいる者に届いたのか、終わった後は拍手喝采だった。

元々大半の者がエイリークを指示していたって言われているくらいだったからね。


そんな王子様とお知り合いになれるだなんて、何が起こるかわからないわね。


その後は美味しい食事を楽しんだり、エイリークたちと話したり。

楽しい時間を過ごした。

「お前。ミーアちゃんのドレス。独占欲の塊だろ。」

エイリークと話していた時よくわからないことを言っていたな。


傍らにいるオーケストラが音楽を奏でる。

その音楽に合わせてダンスホールにいるカップルたちが踊りだす。


その光景のなんて煌びやかなことか。


「素敵。」

私はダンスは踊れないけれど、その光景が私の好きだった絵本の一ページにソックリだったため嬉しい気持ちになった。


「ミーアは踊らないの?」

フィンが私に尋ねる。


「いやいや。私ダンスなんて踊ったことないもの。」

本当は踊ってみたいけど、さすがにこのスポットライトを浴びている空間で踊る勇気はない。


フィンが少し考えた後。


「こっち来て。」

「え?!」

私の腕をグイっと掴んで広間からバルコニーへと出る。


いつの間にか外は暗くなっている。

星空がなんて綺麗なんだろう。


広間へと繋がるステンドグラスの扉からは中からの喧騒が少し漏れている。

反対にこのバルコニーには今は他に人はいないため静寂だ。

そのコントラストが私に現実感をなくす。



「ミーア。おいで。」

手を繋いでいたフィンが、こちらに近づくように言う。

もう十分近い位置にいたはずだが、私は更に一歩フィンに足を踏み入れる。


私とフィンの間にはもうほとんど距離はない。

ドキドキする。


「僕が教えてあげるよ。」

そう言うやいなや彼はステップを踏み始める。


「ふぃ、ふぃん!」

私はフィンの動きに合わせて慌てて足を動かす。


「誰もいないから恥ずかしがらないで。ほら。いちに、いちに。」

フィンは私にわかりやすいようにステップを踏みながら教えてくれる。


「いちに、いちに。」

私はステップを踏みながら自分の足を見つめる。


フィンってどうしていつも私のことを考えてくれるんだろう。


いつもそうだ。


いつも私のために頑張ってくれる。


いつも私が喜ぶことをしてくれる。



「ありがとう。」



私は俯きながら、自分の足のステップを見ながら言う。

フィンは黙っている。


「フィン。私に楽しいこといっぱい教えてくれてありがとう。」

ステップを踏み続けながら言う。


「私に幸せをいっぱいくれてありがとう。」

今までの思い出が蘇る。

フィンがいてくれなかったら私は今もあの村にいたと思う。

別にあの村はあの村で好きだったけど。


でも。


それ以上にたくさんの経験が出来た。

あの村にいたら出来なかったことがいっぱい出来た。


好きな男の子が出来た。


私にはもう十分過ぎるくらい幸せだった。


そう思っていた時。


ぎゅっとフィンに抱きしめられた。

音もなく。

宝物を抱きしめるように、けれど力強く。

自分の思いを抱きしめるように、彼は私を抱きしめたのだ。












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