26 ドレスアップ
ここで私がこんな高そうなドレスはいらない、と言っても堂々巡りで時間だけ過ぎてしまうと思ったので、私は覚悟してドレスを選ぶことにした。
たくさんの色とりどりのドレスはどれも本当に素敵で、どれにしようかと悩んでしまう。
色々見て結局私が選んだのは、一番初めてにフィンからもらったスカーフと同じピンク色のドレス。
今日もフィンがくれたスカーフで頭の角を隠している。
「フィン、このドレスでもいいかしら?」
どのドレスでも良いとは言われていたがもしかしたらこれだけ法外な値段ということもありえる。
私はフィンにお伺いをたてた。
「もちろん。あちらに試着室があるから着替えてきてもらってもいいかな?背中のファスナーとかは止めずらいだろうから、店員さんに少し手伝ってもらうと良いよ。」
て、手伝うって。
洋服を着るのに手伝ってもらったことがなかったので少し戸惑ってしまう。
けれど私の心配をよそに店員の女性は慣れた手つきでドレスを着るのを手伝ってくれる。
最初こそ私はどうすればいいのか硬直していたが、実際ドレスというものは一人で着るには大変だということがわかった。
指示されるがままに袖に腕を通したりと、二人三脚でなんとかドレスを着ることが出来た。
ここの試着室は街中にある洋服屋さんの試着室みたいに、店の一角にカーテンを引くタイプではなく、小さいながらも完全に個室タイプの試着室だった。
部屋の中にはドレッサーもついていて、ドレスを着たらそのドレッサーについている椅子に座るように言われた。
私はもう特に疑問に思うこともなく、言われた通りにしようと半分諦めの気持ちでドレッサーの前に座った。
「ではお化粧の方していきますね。」
化粧。
街中で女の子たちが顔に何かを塗るやつだったっけ。
頬を赤くしたり、目元をキラキラさせたり、やってみたいなって思いながらもハードルが高くてやっていなかった。
それを今からやってもらえるのか。
それはとても楽しみだと先ほどまで戸惑っていた気持ちが楽しみに変わる。
店員さんは鮮やかな手つきで私の顔にその化粧なるものを施していく。
私はドレッサーについている鏡を見ながら自分の顔がどんどん変わっていく様を楽しんでいた。
私が楽しんでいたからか化粧はあっという間に終わってしまった。
もう少し見ていたかったな、と残念に思っていた時、
「マックベル様。ご準備が整いました。」
と店員さんがと扉を開けて個室の外にいるフィンに対して声をかける。
「ありがとうございます。」
私の準備を手伝ってくれたお礼を店員さんに言いながらフィンが個室に入ってくる。
「ミーア、どうか。な。。」
フィンは入ってきて私を見るなり固まってしまった。
え、え、なんで固まるの?!
鬼族の私にドレスはやはり身分不相応だった??!!
「ご、ごめんフィン!せっかく用意してもらったのに私なんかにはこんな素敵なドレスは似合わないよね?!!」
私は慌ててフィンを不快な思いにさせてしまったことを謝る。
するとフィンは私に一歩足を進めて近寄ってきたと思ったら、
「ごめんミーア。」
謝りながら私をギュッと抱き寄せるのだった。
私は何故謝られたのか、何故今抱きしめられているのか。
わからないことだらけで頭が真っ白になってしまった。
「ミーアがあんまりにも可愛くて、言葉が出なかったよ。」
抱きしめながらフィンは耳元で私にそう呟いた。
か、可愛い?!
フィンの行動に振り回され過ぎてもう思考が出来ない。
フィンは抱きしめていた私の肩に手を置いて、少し離れるように肩を押す。
ただしその行為のせいで私はフィンの顔をまじかに見ることになってしまう。
フィンの顔が目の前にあることにより、更に緊張してしまう。
これならまだ抱きしめてくれていた方が恥ずかしくなかった。
「ミーア、改めて言わせて。そのドレス、とても似合っているよ。」
ボン!
私の顔が真っ赤に爆発する音だ。
フィンは私をどうしたいのか。
もうフィンのことしか考えられなくなってしまう。
「こんな可愛いミーアをあの王子に見せるなんて本当はしたくないのに。」
私に聞こえないくらいの小声でブツブツなにか言っていたが、頭が真っ白の私には何も聞こえなかった。
「さて、最後の仕上げをしようか。」
これで終わりではないのか?
いつの間にか店員さんは個室から出ていき、二人きりになった部屋でフィンは改めて私にドレッサーに座るように言った。
「これは他の人にはさせられないからね。」
そう言うとフィンは私の頭にあるピンク色のスカーフを取り外した。
フィンにしか知られていないこと、それは私が鬼族であるといこと。
鬼族がいるのがばれたら街はパニックになってしまう。
「店員さんには髪のセッティングは僕がやりたいって言っておいたんだ。」
そう言いながらフィンは私の髪を触っている。
先ほどの店員さんとは違い、慣れた手つきではなかったが、フィンが私の髪を触っている事実にもう頭の中はパニックである。
私が混乱している最中にどうやらヘアメイクは終わったみたいだ。
「ミーア。どうかな。」
私はフィンの掛け声にようやく意識を取り戻し、目の前の鏡を見る。
髪は軽く巻いてくれて、オイルをつけてくれたのかいつもと違い艶艶に輝いている。
いつも巻いてあったスカーフはなくなり、代わりにピンク色の花が散りばめられたカチューシャが角を隠すようにつけられていた。
「か、可愛い。」
私は鏡に映った自分がまるで自分ではないみたい、とそう呟くのだった。
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