21 フィン マックベル②
「嫌ですよ。」
僕はその青い髪の美青年に向かってハッキリと告げる。
普通ならば第二王子相手にこの態度は不敬罪であろう。
しかし彼はそんな態度に対しては何も気にしない。
「何故だ!私を助けてくれた人に対してお礼をするのは当然だろう!」
普段から無茶ぶりをするこの王子様だが、今言っていることについては何もおかしいことはない。
おかしいのは僕の方だ。
僕が彼をミーアに会わせたくないだけだ。
「彼女はあまりお礼とかされたくないって思う子だから。」
半分は本当だ。
ミーアはお礼なんて良いって最初から言っていた。
「あの時私が意識を失っている間に何があったんだ?あの石のゴーレムは倒れていたし。」
怪訝な目で僕を見てくる。
僕とエイリーク王子、そして護衛の2人を合わせて4人で倒せなかったあの石のゴーレムが、目を覚ましたら倒されていたんだ、不思議に思っても仕方ないだろう。
「私は命を救われたんだぞ?お礼をしたいと思って普通だろう。」
どうしてもミーアに会いたいエイリーク王子は、お城に戻ってからも何回かこの話はしていた。
その度に僕が拒否してきたんだ。
「ですから、彼女はそんなお礼なんて必要ないって言っているのです。」
僕の言い分には絶対に納得しない王子。
今まではこの王子相手に拒否すれば良かったのだが、今回はもう一人いる。
「フィン。俺からもお願いする。その女性に会わせて欲しい。俺と、俺のために犠牲になりそうになった友人達を救ってくれたお礼をしたいんだ。」
エイリーク第二王子付きの護衛をしているダニエルが一歩前に出て僕に言う。
ダニエルの気持ちも至極当然だ。
僕は少しの沈黙をした後に、
「わかった。ダニエルだけならいいよ。」
と自分勝手な返答をする。
「はあ?!なんで私はダメなんだ!おかしい!不公平!」
おおよそ王子様に見えないくらいブーブー!とブーイングをしてくる。
「フィン、何故エイリーク王子はダメなんだ?確かにこの王子は少し変な王子だが。」
「おい。擁護しているようで私をちょっとけなしているぞダニエル。」
この二人のやり取りも子供の頃から変わらないのが嬉しい。
今この部屋に三人しかいないから出来ることだ。
「とにかく。エイリーク王子はダメです。ダニエルだけ彼女に紹介します。」
「ずるい!おかしい!フィンの様子がおかしいぞダニエル!もしかしてこのフィンはあの時別のフィンに入れ替わっているんじゃないか?!」
また突拍子もないことを言うエイリーク王子。
「え?!本当ですか?!」
エイリーク王子の言葉に反応して僕に身構えるダニエル。
ダニエルは純粋な良い奴なのだが、少し天然なところもあり、よくエイリーク王子にからかわれている。
「そんなわけないじゃないですか。」
僕はやれやれと肩をすくめる。
「じゃあ何故だ!何故私だけダメなんだ!いきなり僕がお城に招待しても困ると思ってフィンを介して話そうと思ったけど!それならもう気を遣わずに直接呼びつけるぞ!」
エイリーク王子はもう知らん!と言わんばかりに僕の眼の前まで来て、
「何故私がダメなのか言え!!」
と僕に指を突き刺しながら言う。
「あんたが王子様だからだよ!」
僕はあまりの圧に思わず本音をこぼしてしまった。
「は!」
しまった!と思った時にはもう後の祭りだった。
とんでもない玩具を見つけた!とこれ以上ないくらいニヤニヤしているエイリーク王子。
「私が王子様だから?だからなんなのだ?」」
僕の反応を見て楽しんでいるが見て取れる。
「私が王子様だと何故フィンが困るのだ?!」
興味津々と矢継ぎ早に質問してくるエイリーク王子をなだめるが彼はもう止まらない。
「フィン。諦めろ。こうなったエイリーク王子が止まらないのはフィンもわかっているだろ。」
ダニエルが諭すように僕に言う。
「だって。。」
仕方ない。
僕は意を決して言うことした。
「女の子は皆王子様が好きじゃないですか。」
第二王子の執務室が静寂に包まれる。
元々三人しかいなかったのだから、三人が黙れば静かになるのは当然なことなのだが。
「え。つまり。フィンはその女の子が私に惚れないか不安で紹介出来ないって言っていたってことか。」
エイリーク王子は言われたことを確認するように話す。
「そういうことになりますね。王子。」
いつもは人を茶化したりしないダニエルまでもが王子側についてしまう。
それくらい僕が言った言葉がおかしいってことらしい。
いや、おかしいのはわかっていたよ。
ミーアがあの時叶えたいって言っていた夢。
街をお出かけしたいとかスイーツを食べたいって言っていた夢の一つ。
王子様と恋がしたい。
僕はそれは出来ないって言ってしまったけど、実は王子様と会わせてあげるチャンスを作ることは出来たんだ。
僕がそれをしたくなかっただけ。
だって、このおとぎ話から飛び出して来たような美青年の王子様を見てしまったら。
ミーアが好きになってしまう。
それが嫌だったんだ。
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