18 大繁盛
「ミーアちゃんビール2つ追加で!」
「はーい!」
私はお客さんから注文を受けて厨房に駆け込む。
「マールおばあちゃんビール2つー!」
「はいよ!」
私のオーダー受けてマールおばあちゃんは酒樽からビールジョッキに上手に注いでいく。」
そしてカウンターに2つのなみなみと入ったビールジョッキをドン!っと置く。
「ありがとう!」
私はその二つのビールジョッキをお盆に乗せて、オーダーしてきたお客さんに持っていく。
「はーい!お待ちどうさま!」
それぞれの前にドン!ドン!とビールを置いていく。
置かれたビールをぐびぐびと飲んでいく。
「「ぷはー!!」」
半分くらい飲み干した後に大きな声で叫ぶ。
「やっぱり仕事終わりのビールをこんな可愛い子に持ってきてもらえるとうまいわ!」
「ミーアちゃんいてくれて嬉しいわ!」
最近常連になってくれた彼らはデレデレと嬉しそうにしている。
「ありがとう!私も二人がいつも来てくれて嬉しい!」
私は二人にお礼しつつ、他のテーブルにある食べ終わったお皿を回収しつつ厨房に戻る。
「ミーアちゃんがこの食堂で働き始めてからお客さんがたくさん来てくれて嬉しいよ。いつもありがとうね。」
厨房で次の注文の料理をしているマールおばあちゃんが話しかけてきた。
「こちらこそありがとうだよ!マールおばあちゃんがここで住み込みで働かせてくれるおかげで私も生活出来てるわけだし。」
二人で見合って笑いあう。
ここで働かせて欲しいと話してからしばらくたったのだが、その間に私は人間の常識を少し学んだり、たまにフィンとお出かけしたりしていた。
マールおばあちゃんはせっかくだからこのままここで住んでも良いと言ってくれてお言葉に甘えることにした。
毎日一緒に暮らして、一緒に働いている内にとっても仲良くなったのが嬉しい。
フィン以外にも優しい人はいっぱいいて、常連さんの知り合いも増えてきて私は今まで生きてきた中で一番充実した日々を過ごしていた。
「ミーアちゃん特性鬼絞りレモンサワーお願いしまーす!」
お客さんの一人が大きな声で注文すると、周りのお客さんもいいねー!と声掛けをする。
「おっけー!いくよー!」
私はマールおばあちゃんから受け取ったレモン丸ごと一個とジョッキに入ったサワーを持っていく。
そして注文してくれたテーブルに行きジョッキを置いた後、レモンを右手に掴む。
「ほい!!」
ブシャー!!!
私は掛け声と共に右手に力を入れてレモンを握りつぶす。
右手の中で潰れているレモンから果汁がボタボタと流れ落ちるのでそれをジョッキの中に垂らす。
「うえー!相変わらず握力えぐ!!」
「そんな可愛いのに力が強いってギャップが良い!」
「こっちでもやってー!」
食堂内のみんなが口々に賞賛してくれることにまんざらでもなく嬉しくなってしまう。
「ありがとー!どんどんやるよー!」
べちょべちょになった手を大きく振る。
こっちにレモン汁飛んでるからーって周りの人が笑いながら言う。
そんな誰もが楽しく食事をしているところで、
カランコロン。
と食堂の扉が開く音がした。
「あ、フィン!来てくれたんだ!」
扉をくぐってきてくれたのがフィンだとわかると私は嬉しくなってすぐに駆け付けた。
「ミーア。相変わらずに賑やかだね、ここは。」
フィンは最近たまに夕飯を食べに来てくれる。
「おーい、フィン坊。また来たのか!お前もミーアちゃん大好きだな!」
「違いねえ!」
がはははとフィンが子供の頃から知っているご近所の常連さんがフィンを笑い飛ばす。
「もう!二人とも酔っ払い過ぎ!フィンは優しいから私の様子を見に来てくれてるんだよ!」
私はプンプン!と二人を叱る。
「いいんだよ、ミーア。ミーアに会いに来ているのは確かだからね。」
「フィン!」
そんなこと言われたら胸がキュンとしちゃうよ!
優しいフィンの言葉に誤解しないように気持ちを落ち着かせていた時。
「ミーアはいるか!!!」
バーン!!とドアを大きく叩きつけながら入ってきた大男が入り口に立っていた。
その人物を見てフィンが驚く。
「ケヴィン?!」
そう、一番初めにフィンとお出かけした時に、腕相撲で私がボコボコにしてしまったあの大男のケヴィンである。
「どうして彼が?なんだか怒っているみたいだけど、あの時のことを恨んで?」
疑問に思っているフィンだが、周りの人たちの反応は違う。
「おいケヴィンまた来たのかよ!」
「お前も懲りないねー!」
「ミーアちゃんには勝てないでしょ!」
口々にケヴィンをはやし立てている。
フィンがその光景を不思議に思っている時、ケヴィンが口を開く。
「ミーア!俺と勝負して負けたら俺と付き合え!!今日こそ俺が勝つ!!!」
いえーい!やれやれー!
とこの食堂の風物詩の一つになっていることにフィンは驚くのであった。




