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17 お手伝い

素敵なお店でこれ以上ないくらい幸せな気持ちにしてくれたフィンに感謝する。


お店を出てゆっくり歩きながら、

「スイーツはお気に召しましたか?お姫様。」

フィンは私をからかってくる。

でもそんなフィンも恰好良くて王子様に見えちゃうんだ。


「うん。とっても幸せだった。私の夢をいっぱい叶えてくれてありがとう。」

私は満面の笑みで答える。


今日だけで、オシャレな街を散策する、可愛い洋服を着る、キラキラしたスイーツを食べるという私の夢がいくつも同時に叶ってしまった。

私がフィンにしたこと以上の恩返しをされているのでは、と思い少し恐縮していまう。


「ミーアさえ良ければ、また一緒に出掛けよう。スイーツだけじゃなくて、楽しいこといっぱいしよう。」

笑顔でそんな素敵なこと言われたらフィンのことしか考えられなくなっちゃうよ。

フィンは優しいから誰にでもこうやって優しくしてくれるのかも。


私は顔も知らないフィンに優しくされる女の子を想像して一人心の中でやきもちを焼いてしまう。

そんなこと言ってもフィンに呆れられちゃうから、そんなことは表には出さずに、

「フィンと一緒ならなんでも嬉しいよ!」

と言うのだった。


行きとは少し違う道で帰ろう、とフィンが言ってくれたのでまた違う街並みを楽しみながらマールおばあさんが待つフィンの実家まで歩いていく。


そう言えば、フィンとマールおばあさんのご厚意で泊めてもらったけど。

これからは自分のお家を探さないといけないのよね。

偶然にも今日少し硬貨を得ることが出来たからそれを元手にどうにかしなきゃね。


フィンと会話しながらも、私はこれからどうするかを考えていた。



「あれ?今日も食堂はお休みなの?」

マールおばあさんの食堂に着いて思ったのは、昨日と同じく今日も「CLOSE」という看板が立っていたことだ。


「本当だね。昨日はたまたまだと思っていたんだけど。」

フィンにも心当たりがないらしく疑問に思っているようだ。


私たちはとりあえず食堂の中に入ることにした。


「マールばあちゃん。戻ったよー!」

フィンが奥にいるであろうマールおばあさんに向かって、昨日と同じように声をかける。

しばらくするとマールおばあさんは今朝と同じような笑顔で出迎えてくれた。


「ああ、おかえり。ミーアちゃん街歩きはどうだったかい?」

マールおばあさんには私が初めて街へ行くと朝食の時にお話していたので、どうだった気になっていたようだ。

「とっても楽しかったです!」

私が素直な感想を述べると、それは良かったと更に笑顔になってくれた。


「マールばあちゃん。食堂の営業はしていないのかい?」

フィンは先ほど疑問に思ったことをストレートに質問していた。


「ああ、そのことなんだけどね。ずっと働いていた子が結婚するってことでこの町から引っ越すことになったんだよ。私一人ではお店を切り盛りするのは難しくてね。これを機に閉店しようかと思っているんだよ。」

思いもよらない話に私はもちろん、ここで生まれ育ったであろうフィンはもっと驚いている。


「新しい人を雇うんのではダメなの?」

フィンはどうにかならないか提案をする。


「うーん、それも考えたんだけどね。難しいところなんだよ。」


「難しいって?」


「この町もね。若者がもっと華やかな街の中心街に引っ越して行ったりしていてどこも人手不足なんだよ。街と同じ賃金にしないと募集しても人は来ないし。かと言って高い賃金で雇っても赤字になってしまうから。」

マールおばあさんも食堂を閉店したくてするわけではないのがヒシヒシと伝わってくる。


「そんな。。」

フィンは項垂れているがどうにかならないか必死に考えているようだ。

しかし先ほどのマールおばあさんの話からすると、安い賃金でいっぱい働いてくれる子を探すしかないのではないか。


そんな安い賃金で、華やかな街でなくても良くて、いっぱい働いてくれるような子なんて。。




。。。。ん?




「じゃあ私が働くよ。」

私は自分で自分を指差ししながら、ふと思ったことをポンっと言ってみる。



私の発言と同時に二人はきょとんとこちらを見る。


「私働くところ探そうと思っていたの。ここで暮らしていきたいから。もしマールおばあさんが良ければ働かせてくれないかしら?」

私は先ほどまで考えていた働き口を探す、ということがとても良い場所で見つかってたことで嬉しそうに提案する。


「い、いいのかい?ミーアちゃんが良ければこちらとしても嬉しいけど。」

本当にいいのか?と疑ってこちらに確認をしてくる。


「ええ!むしろ働かせてください!私も働けるの助かるし、大好きなフィンが困っているのも助けられるし!」


「ミーア。君は僕が困っていると救いの手を差し伸べてくれるね。ありがとう。」

フィンは私の手を取って、その手に頭をつけてお礼を言ってくれた。


フィンがお礼を言うことなんてないのに。


私の方こそフィンにたくさんお礼をしなきゃいけないのに。



私はまだ自分がどんなことをするのかはわからなかったが、自分のため、フィンのため、マールおばあさんのために頑張っていこうと心に決意をするのだった。


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