15 しょーとけーき
「こちらが本日のシェフお勧めのドルチェセットでございます。」
そう言いながら今度は女性の給仕さんが銀色のワゴンに乗せたどるちぇらしき物を運んできた。
女性の給仕さんの服装はメイド服と呼ばれるものらしく、フリフリの白いエプロンにピンク色のワンピースがとても可愛らしくて見ているだけで楽しい気持ちになる。
私とフィンの前にそのどるちぇなるものを置いた後、
「本日のシェフお勧めはショートケーキでございます。ミルクを濃厚に仕上げた生クリームと隣のアーバン領で今朝採れた新鮮な苺のハーモニーをお楽しみください。」
と説明してから去っていった。
しょーとけーき。
どるちぇ=しょーとけーきってことなのかしら。
白い三角の物体だが、側面はオレンジ色と白色がいくつもの層になっている。
上にはその白い部分の塊がくるくると薔薇のように重なっており崩すのがもったいないくらいとても綺麗だ。
そして白い薔薇の中央には自分が王様だと言わんばかりに主張してくる赤い苺。
苺は鬼族の集落の周りにも生えていたからわかる。
けれど私の知っている苺はこんな小ぶりではない。
私の身長くらいある苺は無害なフリをして、近づいてきたら大きな口を開けてこちらを逆に食べようとする半分魔物みたいなものだ。
鬼姉はその大きい苺を食後に食べるのが好きで根本から引っこ抜いて踊り食いしていたな。
懐かしいなって思い出に浸っていたけれど、いやいや、今は目の前のしょーとけーきなるものに集中!
私は横に置かれていたフォークを持ってしょーとけーきなる白い物体へと突き刺す。
するとしょーとけーきは思いのほか柔らかくてグシャリと崩れてしまった。
「あ、あわわ。崩れてしまったわ。」
私が一人慌てていると、
「ふふ、ミーア慌てないで。崩れても大丈夫だから、一口食べて見なよ。」
フィンは私が慌ていている様を楽しそうに見ながら語り掛けてくれる。
「わ、わかったわ。」
私は意を決して一塊だけフォークに差して口に運んでみる。
パクリ。
「!!!!!!」
甘い!!!
美味しい!!!!
本当は叫びたかったが、さすがにこの空間で大きい声を出すのは良くないと本能的に察知した。
「フィン、これすっごく美味しいよ!ふわふわしてて!」
私はなるべく声を抑えながらもすごく感動していることをフィンに伝えようと必死になる。
「見てればわかるよ。どうぞ楽しんで。」
僕のことは気にしないでいいよって言ってくれてフィンは本当に優しいって思いながらもう一口食べてみることにした。
!!!!
二口目でもこの感動!!!
もうどう表現すればいいのかわからない!!
窓の外を歩いている人たちにこれ美味しいですよ!って叫びたいくらい!
私は一口一口噛みしめながらついに中央に鎮座する苺に目を向けるのだった。
ごくり。
その赤色の宝石にフォークを刺す。
そして一思いに一粒丸ごと口に含んでみた。
!!!!!!!
あ、あまい!!
でその中にほんの少し酸味も交わっていて、甘い生クリームを口の中で中和してくれているようだ。
相性抜群じゃないの。
これはここのオーナーのお勧めって言ってたからオーナーが考えて作ったのかしら?
こんな至高の物を作ってくれてありがとう。
私は姿も知らぬオーナーに向けて手を合わせて合唱するのだった。
「み、ミーア、なんで手を合わせてるの?」
さすがに私の行動を不信を思ったのかフィンが問いかけてくる。
「あ、ごめん。あまりにも美味しすぎて神に感謝していたの。
なんて言っていると先ほどのメイド服の女性がまた銀色のワゴンを運んできた。
「大変お待たせ致しました。こちらセットのコーヒーでございます。」
白いカップに入れた飲み物をまた私とフィンそれぞれの前に置いてくれた。
「ではごゆっくりどうぞ。」
軽く会釈をしてからメイド服の女性は去っていった。何度見ても可愛らしい。
「これがコーヒー。」
私はその白いカップに入っている黒い液体を覗いてみる。
黒い。
まるで深淵を見つめているようだわ。
フィンが言っていたブラックって言うのはこの色のことを言っていたのかしら。
つまりレッドって言えば赤い色の液体、ブルーって言えば青い色の液体が出てきたってことね。
なるほど理解しました。
今日の私はとても冴えているわ。
コップの中を凝視しているとフィンがまた心配になって、
「ミーア?」
と声をかけてきたが何も心配することなんてないのに。
「フィン、私はもう大丈夫よ。」
決め顔をしながらそのコーヒーをグイっと一気に飲んだ。
フィンからしたらいったい何が大丈夫なんだって話だろうに。
喉をゴクリと鳴らして少し間を置いた後、
「に、に、にがいぃぃ。。」
涙を流しながら口をへの字に曲げてこの世の終わりだなんて顔をしたのだった。。
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