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1 鬼だって

「恋がしたい!」

私は左手を腰に右手を天にかざして高らかに叫ぶ。


「あそう。」

心底呆れた声で答えるのは姉である。


少しだけこちらに意識を向けたかと思うとすぐに目の前に作業に戻る。

「どうでもいいけど手を動かしなさいよミーア。」


ミーア。それが私の名前。

私は姉に言われた通り目の間にあるウサギの皮をはぐという作業に目を向ける。


「もう嫌なの!獣をとっては皮を剥いで肉を焼く作業!」


「じゃあ川に洗濯に行く?」


「そういうことじゃなーーーい!」

私の言うことを全然理解していない姉に私は腹をたてる。


「町に行くとね、女の子はオシャレしたりキラキラした甘いすいいつ?みないなものを食べるみたいなの!それでね!それでね!素敵な王子様と大恋愛の末結婚するんだって!!」

私はキラッキラした目で思っていることを話す。


「オシャレなら鬼族だってするわよ。このトラ柄の洋服オシャレじゃない。」


「いやトラ柄じゃなくて本当に虎を狩って皮を剥いだから本物の虎の皮なんですけど!しかも365日同じ柄着るってどんな縛りなの?!」

隣町の人間の街の情報に詳しい友鬼が言っていた。

人間の女の子は色とりどりのカラフルな洋服を着たり、特別な日にはフリル?のついたフワフワしたドレスを着たりするって。

私も着てみたい!

オシャレしたい!


「すいいつがよくわからないけど要は甘味ってことでしょ?最近村の近くで蜂を飼いならしている鬼がいて蜂蜜をたくさん集められるようになったて言っていたわよ。蜂蜜飲んできなさいよ。」


「いや蜂蜜丸呑みって熊と一緒じゃん。。そんなんじゃないんだよすいいつって。」

とは言ってもこれも鬼友に聞いた話だからどんな物なのかはわからない。

でもキラキラしたってことだから、きっとすっごい黄金色に光り輝く不思議な食べ物に違いない。


「んで、王子様と恋だっけ?王族と結婚できるのなんて同じような貴族だけでしょ。物語の見過ぎ。」


「ぐぐ。」

それは自分でも理解している。

王子様との恋が夢物語なことだなんて。


そもそも私たち鬼族は人里から離れた森の奥深くにある。

森の中には魔物がはびこっているため人間はそんな簡単には足を踏み入れられない。


森の入り口付近や人間の集落がある近く場所にいる魔物はそんなには強くはないが。

森が深くなるにつれ魔物も強くなっていく。


私たち鬼族はその森の中の最深部と言っても過言ではないところにいるので人間と会うことはほとんどない。

仮にいたとしても大抵は強い魔物にやられてしまって可哀そうな死体。

私はその死体が持っていた物語が書いてある書物を集めている。

お金や衣服を剥ぐのは鬼族といえどもプライドがあるためそんな下賤なことはしない。


その空想上の物語でも自分にとっては大変刺激になり、いつの頃からか人間の世界に行ってみたいって思い始めた。


「ばかなことは考えないようにね。」

そんな私の考えをわかってか釘を刺す姉。


「なによ!私の気持ちなんてわかってくれない!そんなんだからお姉ちゃんは筋肉もりもりになるのよ!」


「筋肉は鬼族の誇りだろ。悪口にはならない。」


そう、鬼族のみんなは強さこそ誇りだと思っている一族だ。

こんな森の奥で誰が襲ってくることもないのに。

狩りで獲物とるときくらいしか使い道ないし。

それなのにみんな競うように体を鍛えてもれなく筋肉ムッキムキよ。


「そんな枝みたいな体してんのミーアくらいよ。あんた風吹いたら折れちゃうわよ。」


「いや折れないから。」


たまに見る人間の死体はみんな細かった。

きっと細い女の子が基準なんだろう。


私は鍛えればすぐに筋肉ムキムキになってしまう鬼族の体質を考えてなるべく力を使わないようにする。

そんな私の気持ちはどう言ってもこの無神経なマッチョ姉には伝わらないらしい。


私がプリプリしていると、ドシン!ドシン!と大きな音と共に地響きが起きる。

音の方を見るとそれはそれは大きな体をした鬼が目の前に。

その鬼は私を見た後


「ミーアちゃーん!パパ帰ってきたよー!」

でれーっとした顔と共に声をかけてくる。


「パパお帰り。」

まだムスッとしている私は簡素に答える。


「あれ、どうしたのミーアちゃん。お腹でもいたいのか?」

不機嫌な私を心配する優しい鬼父。


「違うのよ、なんかこの子トラ柄の服が気に入らないとかなんとか言っているのよ。」

姉が手元で作業をしながら答える。


「え!なんで!このトラ柄のパンツは人間たちの間で強い!って歌も作られるくらい丈夫なのに!」

そういう問題じゃない!


「あ、それならこの熊はどう?さっき襲われかけたから捕まえてみたんだけど。皮を使って熊柄のパンツ作ろうか。」

ニコニコ笑顔で答える。

背中になにか背負っているなと思ったら熊だったみたいだ。


「今日は豪華に熊鍋ね。」

夕飯が豪華になったことを嬉しそうに話す姉。


・・・違う。


・・・ちっがう!


「私が求めているのはそういうことじゃなーーーい!!」

私は本日何度目かの悲痛な叫びと共に村を勢いよく飛び出して行くのだった。


「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします! して頂けると作者大変喜んで更新が早くなるかもしれません! ぜひよろしくお願いします!

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