孤児
それから何ヶ月経ったのだろうか。わたしは今、孤児院の部屋の掃除をしている。あの後、籠に閉じ込められた。
此処の街に来る途中の道にペイッと降ろされ、降ろされた場所は街のすぐ近くで、その男達は施設に連れていき、「この子供を助けてやってください」と善人ぶった様子で女性に言う。なーに考えてんだ、こいつ。その女性は「分かりました」と言うと男達にお金を渡す。おいおい、何であっさり騙されているんだよ。こいつら明らかに金目当てだろ?
こうして、わたしは孤児院に入る事となった。名前は勝手にあの男達に「蘭蘭」と、替えられたから、お父さん達は見つけられないだろう。
こうして、わたしは孤児院に入る事となった。 最悪。
この国では平民や孤児の者達は、十歳になったら職業や仕事を持つようになる。仕事の場合、一年はアルバイト&教育期間、それ以降は本格的に働く事になる。ちなみに、アルバイト期間の時は、掃除をしたり等をするらしい。お手伝いと思えばいいのだろうか。
そして、先輩に仕事の仕方等色々教えてもらいながら、経験を積むとの事だ。正直、わたしにできる気がしない。だって、前世でもアルバイト経験ゼロ、のわたしができるわけがない。お手伝いだってそんなにしてこなかったし。
でいうか、そんな事を考える前に、もっと重要な事がある。そう。これが決まっていなければ何も考えようがない。さて、重要な事とは一体何なのか。はい、それはもう、就職先です。わたしはもう十歳なのに、就職先が全然決まっていません。でも、孤児院の孤児に仕事を与える職場なんて、この世にはほとんど存在しない気がする。だったら、このままでも別にいいだろう。というか、そんな事よりアニメが欲しい。くださぁい。だなんて呑気な事を考えていられるのは今の内だという事を、この時のわたしは知らなかった。
ある日。今日も平和な日常だなあ、と思いながら起きて食事をする。孤児の食事は平民と同じ、市場で買ってきた野菜、肉を使って料理をする。でも朝はみんな掃除やら何やらで忙しいので、朝食はパンと牛乳という、簡素な食事を摂る事が多い。今日もパンと牛乳だ。みんなで「いただきます」と言って食べる。モグモグと食べていると、孤児の世話をしている女性が、「蘭蘭、後で来てくれる?」とわたしに言ってきた。「はい」と言うと、わたしは急いで食べ始める。食べながら思う。え?わたし、何か悪い事でもしたかな?怒られる事でもしたかな?記憶に無いんだけど。
食事を終えて行くと、女性は言った。
「蘭蘭ちゃん、もう十歳でしょう?そろそろ就職先を決めた方がいいかなって思って、色々探した結果、リノちゃんの就職先が決まりました————!」
え?
「あ、あの、わたし、孤児なのに、仕事が見つかったんですか……?」と質問する。何故かというと、びっくりしたからだ。平民ならまだしも、孤児に仕事を与えてくれる職場なんて無いし。というか、一生仕事に関わりたくなかったし。
「どうも蘭蘭ちゃんの行く就職場は人手不足らしくてねえ。平民じゃ足りないらしいから、孤児も駆り出される事になったらしいの」
ああ、なるほど。孤児を雇うのはやっぱり理由があるのか。
「あの、就職先は何処ですか?」
すると、女性は一枚の紙を取り出してわたしに渡した。紙には、『孤児 蘭蘭 就職場所 花の都 後宮」と書いてある。え?花の都って、大都市の所じゃあ……?
女性はにっこり笑っている。え?嘘でしょ、わたし絶対行きませんからね、そんな場所に!行かないって、決めたからな!てか、そんな事よりアニメが欲しいんですけど。もう嫌だ。
この檻から、抜け出そう。脱獄しよう。