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プロローグ

わたし、柳原亜衣奈は、アニメ好きの中学生。アニメをこよなく愛している。わたしにとってアニメというのは、命の次に大事な物である。


アニメって、とても素敵だと思う。実際にアニメの原作小説を買って、その小説の挿絵とアニメを比べてみたら、ほとんど同じなのだ。そりゃあ、原作とアニメの登場人物が違っているなんて、考えられない事だろうけど。

 その原作に登場する主人公とか登場人物が、アニメという映像作品の中で動いていたら、興奮しない?するでしょう?

 特にあの、そのストーリーの中に出てくる、登場人物の可愛さときたら!そんな事を少し考えただけで、顔がニマっとして、ふんふんと鼻歌を歌ってしまう。たとえその場が、授業中でも、帰り道でも、部活帰りにお腹が減って途中で立ち寄るコンビニの中ででも。

 もしこの世界が崩壊したとしても、今この瞬間に消えてしまっても。アニメだけは、わたしが心の底から愛している、アニメだけは。

 この世にあってほしいと、わたしは思っている。


 そんな事を考えながら、わたしは学校帰りにちょっと寄り道して、本屋にやってきた。わたしが今観ているアニメの原作の単行本の最新刊の発売日が今日だったはずなのだ。わたしはアニメに関する事だったらすぐにその話に乗っかるし、だったら少し苦手意識がある本だって夢中になって読む程だ。アニメに関わる事だったら何でもする。わたしのその性格を知っている周囲の皆には、アニメの為だけに、あんなに情熱を注ぐ人なんていたんだ、と変な目で見られている事は何となく分かっている。だが、そんな事はどうだっていい話だ。勝手にそうやってればいい。変人と思うのなら、勝手にそう思っていればいい。別に気にする程の事でもない。

「えっと、えっと……あった!」

 目当ての本を見つけてわたしは喜ぶ。わたしが手に取ったのは最後の一冊だったようだ。あぶないあぶない。この漫画、人気あるから、あと少し遅かったら今日買えなかったかもしれない。

「良かった。無事に本が手に入って」

 わたしは今日この漫画を読みたかったのだ。何故なら、わたしはあまり長く待てない人だし、アニメに間に合わせ、漫画や小説の挿絵とアニメを比較するのがわたしの楽しみだから。良かった。買うのが先延ばしにされなくて。

 そんな風に思いながら会計を済ませ、本屋を出ると、ピロリン!とスマホが鳴った。メールの着信?誰から?スマホの電源を入れて、LINEを開く。やば。お母さんからだ。『帰ってくるのが遅いけど、いつ帰ってくるの?』とメールに入れている。あぁ、本屋に行くって事、伝え忘れていた。たく、お母さんってば、本当に過保護なんだから。わたしは返信する。前に急いでいて既読スルーしてしまった時、お母さんは心配して、学校の先生に連絡して大騒ぎになった事があったからだ。あんな事は二度と御免だ。なので、『今から戻るよ』と入れた。返信したから大丈夫だろう。

 わたしは手元にある買ったばかりの本を見る。わたしは長く待てない人。だから家に着くまで待てなかった。わたしは本のページを開け、立ち読みしながら横断歩道を渡る。と、誰かの声が聞こえた。

「危ない!」

きっとわたしの事ではないと思っていると、わたしの周りに黒い影ができた。ああ、まったく、これじゃ本が読みづら……そう思って顔を上げると、大型トラックがこっちに突っ込んでくるのが視界に映った。

「へ……?」

 何が起きたのか分からなくて混乱している隙に、わたしの視界はプツンと途切れた。


 死ぬ直前、わたしはこう思った。

 神様、酷いよ。まだアニメを十分に堪能してない。最終話まで観てない。小説だってまだ途中なのに……本当に酷いよ。酷すぎるよ。神様。

 だったら転生して、もっとアニメを観たかったな。神様、お願い。わたしを転生させて。



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