和解?
前回のあらすじ!親友にボコられたぜ!
「あのさ、色々言い過ぎたし、殴り飛ばしたことも謝るからさ、機嫌直してくれない?」
「いやです~どうせ口先だけの男です~かまわないでくださ~い」
時間が経ち休むこともできたので、少し体も動かせるようになった。
公園のベンチの端にそれぞれ座り、俺はふてくされて、司からそっぽを向いてる。
いや知ってたけどね、親友からそんな風に思われてたことなんて、分かってたことですし?
別に?気にしてないし?
「悪かったってば!本気で思ってないから!九割くらしか本気じゃなかったってば」
「一割しか冗談になってないのですが!?」
俺が振り返ると、クスクスと笑っている司がいた。
その顔には先ほどの暗い陰りは見えない、もしかしたらうまく隠してるだけかもしれないが、それでも前の世界で最後にしゃべった司に戻った気がした。
多分さっき話していたことも司の本音で、俺が前世で友達だったから矛を納めてくれているに過ぎない、いつかほんとの意味で司を助けたいと、そう思った。
司を守る、この世界でなら俺はその言葉を体現できるとそう信じて…
「まぁいいか、とりあえずさっきまでのことはお互いに忘れよう、情報交換しようぜ」
「そうだね、この世界の事ならまもちゃんの方が詳しそうだし」
俺たちは知っている情報を出し合った、司がこっちに来た理由も俺とあまり変わらなかった。仕事中に意識がこっちの方に突然来た。
こっちの世界に来たのが今日の午後5時で自宅の部屋にいたらしい、俺が来た二時間後にこちらに来ていたってことだな。
「そう言えばアルケミストツールズどこまでプレイしたことあるんだ?情報が中途半端というか、あんま分かってみたいだけど?」
「共通ルートと美鈴ルートだけだね、だって容姿自分のエロゲって複雑じゃない?途中でやめちゃった」
「ほぼ道具と関わらない日常続くルートじゃんかそれ」
佐藤美鈴、5人いるヒロインのうちの一人だ。
主人公と幼馴染で、一つ上の先輩で、ヒロインの中で一番の巨乳で茶髪ショートの美少女、包容力がありプレイヤー界隈だとよくママという通称で呼ばれている。
親友が癒しを求めるくらい疲れてこのルート選んだ感がある。
なんか泣けてくる…
「というかまもちゃん?なんで自分の親友によく似たエロゲプレイしてるの?まさか僕にそういう感情あるの?ごめんなさい僕見た目中性だけど、のんけなので許してください」
「なわけねぇだろうが!ストーリーが好きでやってただけだっての!エロシーンは全部飛ばしてたからな!引いてんじゃねぇよ!!」
自分の体を守るように後退する司
一発ぶん殴ってやろうかこの野郎!
「ごめんごめん、まもちゃんの性癖は貧乳の女の子が好きだってわかってるし、からかっただけだよ」
「性癖て…つかさっちも相変わらず、巨乳好きなの変わってないだろ?」
司は昔から巨乳好きだったの知ってるし、変わってないというかなんというか。
美鈴ルート選んでる時点で性癖がもろばれだったと思うが…
「だって大きければ大きいほどいいでしょ?」
「その見た目で言うからギャップすごいんだよなぁ…」
こんなバカ話するのは何年ぶりだろうか。
何もかもが懐かしく感じる。
司は手を鳴らして、仕切りなおす。
「話し戻そうか、まもちゃんは全ルート攻略してるってことでいいのかな?分かってるならゲームのシナリオから外れて、2人で逃げるっていうのはどうかな?」
「それはあまりおすすめしないな、逃げるならもう本当につかさっちが言った自分を知らない世界に転移だけど、MPの関係で俺には無理だし、元々契約するはずだった子に返すと多分つかさっちは送って行ってもらえないと思うぞ?最悪つかさっちが監禁される」
「物騒すぎない!?」
いやこれ冗談でも比喩でもなくマジで監禁される。
とあるルートで監禁エンド迎えたことあるから、あれは色んな意味で心が苦しくなるんだよな、一概にその子が悪いといえないところがまた絶望感がすごかった。
ヤンデレ属性だから絶対に主人公手放さないどころか、あなたと一緒に私も死ぬわ!ってなるのが目に浮かぶんだよ…
「ちなみに元々契約するのって誰だったの?」
「お前の妹だよ…」
「………マジで?」
そうサードの元々の契約者は主人公の妹にして、裏ルートのヒロインでもある。
それが、時乃紬である。
主人公と同じ一年に通う、黒髪ロングの美少女で、同学年の男子からも人気がある。
ヤンデレでブラコン、兄につく害虫は、地獄送りにしてやる系妹なのだ。
「えっ、僕帰るの怖くなってきた…」
「安心しなよ、俺がそのヤンデレになる原因のナンバーシリーズのサードとは俺が契約したし、俺がサードと契約してる限りは少なくとも大丈夫だと思うぞ、ほら道具は契約すると次元がずれるから世界の強制力の影響受けないし」
紬がヤンデレになる原因は、契約したサードが暴走し、異世界に強制転移したことである。
右も左も分からない状態で異世界をさまよい歩き、盗賊に襲われ、モンスターに襲われ、身も心も汚された。
彼女は、兄にもう一度会うという心の支えだけを頼りに異世界にある神具や魔具と大量に契約し、その力で生き延びながらMPの回復を待った。
そしてMPが転移できるところまで回復したところで、転移した時間と同じ時刻にこの世界に戻ってきた。
はたから見れば、転移したことなど分からない、だが心に闇だけを抱えて戻ってきた。
兄への異常な執着はここから始まった。
その後は大量に契約した神具と魔具で他のヒロインを妨害をするっていうのがシナリオ上での彼女の役目だった。
だがそれを俺は阻止しようと考えた。
だってこんなのあんまりだろ、高校生の少女にしていい仕打ちじゃない、
どうやって助けるかと言えば、具体的には契約して暴走するなら先に契約しちゃえばよくね作戦だ。
そんな感じの内容を俺は司にも話した。
「なるほどね、けど大丈夫なの?世界の強制力とか、確か特異点もしくは契約者じゃないと強制的に元の歴史に戻るとか、ゲームで言ってなかったっけ?契約した後ならいいけど契約前はそうじゃないんだろ?それをかいくぐってどうやって契約までもっていったんだ?」
司の言うことは一部語弊があるが概ね当たってる。
特異点、人間の中でも世界の未来に大きく干渉できる存在のことをさす。
普通の人だと変えられても過程だけで、結果は変えることができない、結果すら変えうるのは特異点のみで、契約者は世界からの干渉を受けなくなるだけと、ゲームの説明書に書いてた気がする。
ゲーム内だと特異点は確か、7人くらいいた気がするな、いや多いな…改めて思い返すと多すぎない?世界にそんな干渉したら、めちゃくちゃになりそうなんだが今は置いておこう。
俺も契約前は一番の鬼門だと思った。
「まぁそれはちょっとした裏ワザというか、逆の発想をしたんだよ」
「逆の発想?」
まぁ俺も成功するとは思わなかったんだけどな。