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モブキャラでも助けたい  作者: 楸の月
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最高の恋愛とは

足をぴたりと止める。

やっぱりこの人、俺の気持ちに気づいてたか……

この人何気に鋭いし、そうじゃないかと思ってたけど――



「いつから気づいてましたか?」


「割と最初からよ?――安心して、この事は私以外誰も気づいてないから」



さすが、俺の化粧見破った人だな。

それすら分かってるってことは……



「なら、妹ちゃんが誰が好きなのか、あなたならもう知ってますよね?」


「司ちゃんでしょ?さすがに気づかない方が難しいわよ」



それ分かってて、俺に押し付けようとしたのかこの人……

この人もしかして――



「性格悪い女だなぁ――と思ったでしょ?」


「――いや、好きな人取られたくなくてしたことだろ?俺に気遣って悪者ぶらなくていいですよ」


「あらあら、逆に見破られちゃったわ――」



優しい笑顔には計算があった。

それ自体俺は疑問に思わない、だって好きな人にいい顔したいっていうのは誰でも思うことだ。

恋する少女の行いを誰が止められようか、例え神様でも止めることなんてできないだろう――



「あなたの事は応援しますよ?司も誰か頼れる存在がいて欲しいと思ってるはずですから」


「あらあら、それは……私に紬ちゃんの恋を終わらせて欲しいってことかしら?そしてあなたが紬ちゃんに迫ると――中々あくどいわね?」


「誰がいつそんなこと言ったよ!?」



好きな人から振られた女の子に迫るとかどこの外道だよ!

俺って、はたから見たらそんなこと平気でする男に見えてるの?

何気にショックだ……


佐藤さんが首をかしげる。



「あら、違うの?」


「応援はするって言ったけど、妹ちゃんの恋を応援しないなんて言ってないでしょうが!?――俺は2人のどっちの恋も応援しますし、どっちかだけの味方になったりしませんってだけです。最終的にどちらを選ぶのは司なんですから、俺がとやかく言える立場にはいませんから――」



俺が口出しできるのは、前段階までだ。

恋愛相談やアドバイスはできても、結局当事者たちの問題であって、俺は背中を押すことしかできない。

結局恋愛なんて当人同士の問題なのだから――


佐藤さんは俺に悲しい目をして語りかける。



「あらあら、ならあなたは自分の恋は諦めるの?」


「――誰が諦めるって言いました?」



佐藤さんは俺の発言に驚いたようだった。

そんなにおかしなこと言ったかな?



「えっ……だって応援するって……」


「応援しますよ?それに自分の恋だって諦めません」



佐藤さんは珍しく困った顔をする。

うまく俺の言いたいことが伝わっていないようだ。

人に説明するのって難しいな……

頭の中で整理して、伝わるように話さないと――



「え~とですね、俺が思う最高の恋愛っていうのは、本気でぶつかって悔いの残らない恋愛だと思うんですよ?――自分の全てを使って、好きになってもらおうと精一杯努力して、告白が成功して付き合ったりできたら努力が報われたってことで喜んでいいですし、失敗して振られたりしても自分は全力出したんだ!だから後悔はない!!……って言えるようなのが俺の考える最高の恋愛だと思うんですよ」


「でも、それは……」



佐藤さんは言いよどむ。

分かってる……きれいごとだっていうのは重々承知だ。

だからこそ挑むんだ。

――俺はニコリと笑う。



「だけど、俺はやりますよ?――妹ちゃんは泣かせない、あなたも悲しませない、そして俺の好きな気持ちも諦めたりしない、そんなハッピーエンドを目指します」


「そんな都合のいい――」


「都合がよくていいんだ!――だって、恋愛なんて、世界の78億人から自分を好きになってくれる人選ぶんですから、奇跡に近いそんな確率をあてる事を自分勝手に願う、都合のいいものなのに、今更ハッピーエンドを望むくらい、ご都合主義にならなくてどうするんですかッ!!」



佐藤さんは黙ってしまう。

たしかに俺も妹ちゃんのために身を引こうとも思った。


だけど、俺はいつかそんな自分を後悔する。

あの時こうしておけば、どうして俺は……とか色々考えるのだろう。


もう難しく考えるのはやめた。

司は俺の幸せも追及していいと言ってもらえたんだ。

――なら俺はみんなを悲しませない!俺の心も捨てないッ!!


みんな幸せな未来をつかむために俺は今自分のできることをするだけだ。

だから妹ちゃんの恋を応援するし、佐藤さんの恋を止めたりしない。


幸せになるんだ!みんなで!!


例えこの恋の結末が実らないと分かっていたとしても、全力で恋愛に向き合って気持ちよくふられてやるんだ!



「俺はもう逃げません!この恋から、感情から!!――例えふられると分かっていたとしても自分の感情から逃げたくありませんッ!!!」


「――あなた、強いのね……それだけ思われてる紬ちゃんがちょっぴり羨ましく思うわ……」



強くはないさ……みんながいたから、今でもこの恋に胸を張れるだけだ。

俺を追い越し、佐藤さんは前へ出る。

その顔は悲しみと嬉しさの両方が混ざったような複雑な表情だった。



「そろそろ到着しそうだし、最後に聞いていい?――紬ちゃんのどこに惚れたの?」



佐藤さんから飛び出した質問はありふれた恋バナだった。

思わず面食らってしまう。


どこに惚れた……ね?

改めて考えると難しいな。

出会った時から好きだった、多分一目惚れだったと思う。

あえて一目惚れの理由をあげるとしたなら――



「自分のためじゃなく、人のために怒ってあげられるところ――ですかね?」


「――なるほどねぇ……容姿が最初に出てきたら何か言おうと思ってたけど、あなた根っからのいい人なのね」



つまらなそうに俺から顔を背けて神社を向かう佐藤さん、表情は分からないがその足取りはとても軽かったように見える。

もしかして……俺、試されてた?


これ以降佐藤さんと会話もなく、全員が神社から林に戻って、肝試しを終えた。

その後は何事もなく皆が就寝する。


こうして俺たちの別荘での最後の夜は静かに過ぎて行ったのだった。

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