出ました!悪意三種の神器!
蓬莱博物館、ここ蓬莱市に伝わる伝承や出土品などを展示する博物館で、見学料は大人1000円子供500円、地元にある学生証があれば無料で入ることができる。地元の数少ない名所である。だが平日にくるお客は少なく閑古鳥が鳴いている。そのせいか所々さびているため、古い洋館のような外装になっている。
というのが表向きというか普通に知られてる蓬莱博物館の情報なんだが、 設定資料だとここに神具と魔具が一つずつ、そしてナンバーシリーズがあり計三つ置かれている。
俺の目当てはナンバーシリーズ、これなら本来の力を発揮させることができなくても十分力になる。
そこの読者諸君!お前また意味不明な単語増やしやがって説明しやがれという念をひしひしと感じたので説明するぜ。
簡単に言うと神具、魔具、ナンバーシリーズは契約すると精神力つまりMPを消費して、超常の力を使う道具のことである。まぁ簡単に言っちゃえば、超能力者になれる。
神具は異世界の神が作りし道具、魔具は異世界の魔王が作り、ナンバーシリーズはこちらの世界で作られた不思議な道具たちのことをさすらしい。
制作者が違うだけで、MP消費で発動するっていうところは変わらないみたいだな、よい子のみんなは分かったかな?
以上説明コーナーでした。
と誰に解説するわけでもなく、再確認のため教育番組風に紹介してみた。
さてそれじゃ契約済ませてさっさと帰りますか。
俺は博物館の中をぐるっと回る。
骨やら、壺など歴史順などではなく発掘した時期順のようで、統一性などほとんどなくショウーケースの中に並べられていた。
その中に目当ての物を見つける。
「ていうよりお目当て以外も二つ並んでるし…」
思わずため息をつきたくなった。
設定資料集であるのは知ってたけど普通この三つを並べるか?
ショウケースの中には右から禍々しい角の見た目をした魔具、羽根の化石の見た目をした神具、そして宝玉の形をしたナンバーシリーズの以上三点セットとなっております。
「いや悪意たっかいな、おい…」
だってこの三つどれも主人公達を苦しめることになる道具なのだから。
悪意三種の神器!!ってロゴをつけたくなるね。
そのうち一つと契約する俺ってある意味悪役かな?
気にしたら負けだと思ったのでさっさと済ませよう。
閑古鳥が鳴く人気のなさとは言え、人目が気になるので一応あたりに人がいないことを確認し、俺は〈ナンバーシリーズ〉に手をかざす。
「俺と契約しろ!!〈サード〉!!!」
言い終わるタイミングで俺の意識は薄れ、プツリと切れた。
気が付くと白い部屋、その中心に俺は座っている。
ここまでは計画通りというよりシナリオ通りかな?
なら次に来るのは
『汝、我を求め、何を成す』
とこからともなく中性的な声のアナウンスが響き渡る。
〈サード〉は質問の答えに満足いけば誰とでも契約してくれるという何ともチョロ…初心者向きなやつなのである。
えっと?確かシナリオで契約者だったあの子の回答は確か
「誰も俺を知らない世界に行きたい」
はっはっは!完璧!これで契約もかん…
『それは汝の答えではなかろう』
うんダメだったぽい。いや人の回答まるパクリしたのがだめだったかぁ…
いやどうすんだ!この後何も考えてないだけど!!
どうしようどうしようどうしよう
そんな返答されるなんて聞いてないよぉぉぉ!
とりあえず答えなくちゃ!
「えっとじゃあ世界平和?」
『汝の力では無理だな』
「じゃあ世界征服!」
『なお無理であろう』
「彼女が欲しい」
『………我に求めることか?それは?』
「ぐぬぬぬ…」
思いつかん、というか俺じゃ無理ってさらっとディスられたんだけど…辛口か?〈サード〉ちゃん以外と辛らつなのね。
『汝、我を求め、何を成す、答えが出ぬようならば、汝との契約は無しだ』
まずいまずいまずい!?
何とか満足のいく回答しないとほんとに無駄骨になっちまう!
何かないのか何かないのか何かないのか、この世界で俺が成したいことは!アルケミストツールズの世界で俺が一番やりたいことは!!
とある少女の姿が頭がよぎる、金髪をたなびかせる俺の推しの…あの少女の姿が……
「………に…い……」
『よく聞き取れんぞ』
「俺の推しに会いに行きたいっつったんだよ!!!」
もうこの際やけくそだ!思いの丈全部ぶちまけて、負けてやろうじゃねぇか!たとえ契約できなくても最後に爪痕くらいは残して次誰かと契約したくなくなるくらい、人間って愚か…って思うくらいドン引かせてやるよ!30歳童貞のキモさなめんなよぉ!?
「俺の好きな人は異世界にいんだよ!!だからお前と契約したいっつったっんだよ文句あっか!!!私利私欲ですがなにかぁ!?」
『…………』
これにもさすがのサードも沈黙、いや分かってたけど…分かってたけどさぁ…無視はやめよ無視は…心に!心に来るからさぁ!?
いや自分でもキモいなと思うんだけど、あのキャラは今でも好きだし本当に心のそこから好きって言えるんだけどさ、これ口に出してどんなところが好きかとか、ことこまかに言ったらさらにキモさ増すかな?よし今のうちに畳みかけ…
『あはははははは!!!!!』
俺がさらにキモイ発言をしようとした時、沈黙した〈サード〉からの返答は爆笑でした。何を言ってるのかわからねぇと思うが、俺も分からん。
『ワタシの使用用途がぁ会いに行きたいからってぇ、あはははは!』
いやあのサードさん?キャラ崩れてません?我とか言ってたの私になってるし、さっきの威厳どこ置いてきたの?
『何千年とぉ人間のぉ契約者とぉ契約してきたけどぉ君みたいなのはぁ初めてだよぉ!面白いねきみぃ?いいよぉ、ワタシとぉ契約させてぇあげるぅ』
その瞬間俺はサードと繋がったような言葉に表せない不思議な感覚を得た。それと同時に意識が薄れる感覚が襲う。まぶたを開けていられず、そのまま意識が遠のいていく。