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魔王はなぜ死ななければならないのか  作者: For AP
第二章 始まりの村
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23話:幼馴染


 師匠の家で午前の授業を終え、帰ってきた俺は、何も予定が無かったので、惰眠を貪っていた。前世から寝るのが好きなんだ。それにこの時期なら成長のためっていう免罪符もあるし……今のうちにたっぷり寝ておかないと……


「アルガくーん遊びに来たよー!!」


 げ、この声は……


 我が幼なじみの声が開いた窓から響いて聞こえている。こりゃいつのもやつだな。一昨日も付き合ってやっただろうに……


「アルガくーん!アルガくーん!」


 何度も何度も繰り返し聞こえる声はとてもしつこかった。幼い声だから、ちょっと耳に響くんだよなぁ。うるせぇ……目が覚めちまったぁ。そう思いながらも、布団に潜り込み頑なに無視を決め込んでいたのだが……


(無視すんなよぉ〜君、妹ちゃんのときはすぐに飛び起きるじゃないかぁ〜)


 バカ鳥が髪をつついてきた。うざいなぁ。邪魔だったので枕元にあった鳥頭を掴んで、爽やかな風が吹く窓の外に投げ捨てる。


(アルガくぅーん酷すぎだぁーー!!)  ――――ドタドタ


 フィドが完成に従って吹き飛んでいくのと同時に、断末魔が脳内に響く。ん?なんか雑音が聞こえたような気がしたんだけど……気のせいか?


 そう思ったのも束の間、部屋のドアが蹴破るかのように勢いよく開かれた。


「あー!!やっぱりアルガくんいるじゃん!!無視しないでよ!!」

「無視なんてしてないって……寝てたんだよ!!」

「こんな時間から寝てると夜に眠れなくなっちゃうぞー!だから遊ぼっ!!」


 そういうと不埒な侵入者は俺が頭まで被っていた布団を無慈悲にも剥ぎ取った。暗いところに順応していた目が眩む。


「勝手に入ってくるなよエマ」


 こいつは俺の幼なじみで家族ぐるみの付き合いをしている〈エマ•ベネディ〉だ。俺と同じく4歳で、生まれた日も同じ、親同士が親友ってことでずっと一緒に育てられてきた間柄だ。


 幼なじみの女の子っていう存在を夢見る人は多いかもしれないが、最早妹みたいなものだ。それにエマは活発すぎて中々苦労をかけさせられている。まぁ可愛い妹分ではあるけど、流石にシトリーの方が可愛い。


(僕はエマちゃんも捨て難いと思うけどなぁ。白い髪で毛先がピンク色っていうゆるふわな容姿なのに、逆に活発的な性格のギャップがいいよね!シトリーちゃんに負けず劣らずの将来性があるよ!!)


いつのまにか外から戻ってきたアホ鳥が、そのように評論家ぶる。相変わらずだなこいつは……


(はいはい、お前の癖は後で聞いてやるから落ち着け。毎日のようにエマとは会ってるじゃねぇか)


 そうやって表現できる程度にはこの幼なじみは我が家に入り浸っていた。家が隣だし、昼間はエマの両親が、村から少し離れた町で働いているということもあり、両親同士の仲が良いうちに預けられていることが多い。


「いいじゃん!いつものことだし!」


 こいつは本当に能天気でわがままなんだから。元気が無いよりはいいけど、俺の体力を慮るぐらいはしてほしいものだ。



「フィドもこんにちは!!」


 チチチッ。チチチッ。


 エマはベットのヘリに留まっていたフィドを優しく撫でた。構ってもらえて随分嬉しいようで、鳴き声が漏れている。そんな邪悪な奴に優しくする必要なんてないんだぞエマ。


「はぁ……遊ぶって……ジルド達じゃダメなのか?俺予定があるんだけど」

「ジルドくん達は子供扱いしてくるからイヤ!2歳しか変わらないのにえらそーなんだもん。それにアルくんの予定なんてお昼寝でしょ!お昼寝なんていつでもできるけど遊べるのは今しかないんだよ!?」


 暇な時はいつも付き合わされてるから、俺の生活習慣を把握されてしまっているんだよなぁ。まだお子ちゃまなくせに生意気だ。


(そんなこと言っちゃって態々遊びにきてくれてだからそんなに邪険にすることないじゃないか!)

(邪険にしてるっていうか……子供の遊びをするのって疲れるんだよ……てか寝たいし……)

(そんなの理由にならないぞー!睡眠!断固反対!!)


「あそぼあそぼあそぼ!!!」


 脳内と耳元で同時にしつこく喋られるのはなかなかにストレスだった。なんでフィドは言動ほとんど4歳児と同じなんだよ……


 仕方ないなぁ、いつもシトリーと遊んでもらってる恩もあるし付き合うか……あんまり適当にあしらっていると母上から雷が落ちてしまうしな……

 

「うっさいなぁ……わぁったよ!遊ぶ遊ぶ。でもジルドと仲良くしろよなぁー態々俺が仲直り手伝ってやったってのに」


 ジルドっていうのはこの村の子供コミュニティのガキ大将的なポジションの子供だ。エマと昔一悶着あって険悪な関係だったんだけど、所詮は子供の喧嘩というか少し仲裁しただけで結局結構仲良くなっていたはずなんだが……


「もう!そんな風に人のこと言うけどジルドくんだってアルガくんが最近付き合い悪いって言ってたよ!!」


 ウッ……まぁ確かにここ最近は魔法と闘法の訓練にかかりきりだったからなぁ。人付き合いは大切だし、今日は仕方ないところか。まさかこの少女に図星を突かれるとは、将来が末恐ろしい。


「あぁ、分かった分かった。そのうち秘密基地にも遊びに行くって……それで?何して遊びたいんだ?」

「おままごと!」


マジか。それが一番心に来る遊びなんだけど。めっちゃ嫌だ。


「それ以外にしないか?」

「いやだ!アルガくんがお父さん役ね!私はお母さん役!」


 これは何を言っても曲げない強情モードに入ってしまった……シトリー変わってくれぇ!?


 そんな願いも虚しく、シトリーはここにはいない。おそらく母上と絵本でも読んでいるだろう。

 

(僕は僕は!?)


 ぴょんぴょんとシトリーの周りを跳ね回りながらフィドはシトリーに訴えかけている。コイツ……俺の苦労も知らずに……


「フィドはペットね」

(ガーン!!)


 シトリーにまでいじめられているのを見るとフィドは天性の弄られ役なのかもしれないな。……俺も心に傷を負うことは確定しているけどさ……


 現実逃避をしながら空を仰ぐ。しかしそこには青空はなく。あったのはよく見る天井だった。


  


 あぅ……

 

1時間後、死んだ顔をする俺が子供部屋で発見されたらしい。



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