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魔王はなぜ死ななければならないのか  作者: For AP
第二章 始まりの村
19/32

17話:属性魔法

 


(よかったじゃんシトリーに気に入られて)

(よかったのかなぁ?もみくちゃにされて凄くくたびれたんだけど……)

(可愛がられるために態々可愛い化身にしたんじゃないのか……?)


 フィドとシトリーの初邂逅はフィドがシトリーに気に入られ、手で何度も撫で擦られるという結果に終わった。幼い幼児に加減という言葉はないらしく、猫可愛がりというか鳥可愛がりというか……父さんにシトリーが嗜められるまでなんとも哀れな扱いを受けていた。そんなファーストインプレッションは、女好きのフィドとは言えど流石に辛かったようで、しおらしい態度をとっていじけているのだった。


 一方で俺はと言えば、シトリーと母さんがフィドに対して全く同じ反応をしていたので、親子でここまで似るものなのだなと笑っていた。



 そんなわけで朝飯を済ませた後、早速魔法を練習しようと家の外に出てきたわけだが、いつもの如く人の多いこと多いこと……どこまで行けば人気がなくなるのか周囲を見渡しながら村を歩いていると、村の端の暗く湿った雑木林までたどり着いてしまった。


 ここまで来れば用事の無い大人たちはもちろん、子供たちも遊びに来ないだろう。魔物も村の中だから現れないし、この辺で魔法を練習しますかね。


(よぉし!早速風魔法を練習するかぁ!!)


 朝の凝り固まった体を深呼吸をしながら伸びをことによってほぐす。まだ若々しい体だから、骨がポキポキということもなく、凝り固まった筋肉がほぐされて気持ちがいい。


(教本は持ってきたかい?)

(当然!お前がシトリーと遊んでる時に持ってきたよ)


 かつて材木を集めるために伐採されたのだろうか、年季の入った大きな切り株に座り、よっこいせとわざわざ十数分かけて家から運んできた本を膝の上に広げる。


(どれからやってくんだい?その本には各属性の中級魔法までしかないみたいだけど)

(とりあえず初級の……これじゃないか?【風刃(エアル)】……基本の魔法みたいだし)


 ええと……『風の刃を打ち出すことにより攻撃する魔法』……か?ファンタジーではよくある風属性魔法だよな。ハリケーンとか台風を圧縮するイメージで小規模にしつつ切断力を上げていくと。いきなり覚えるにしては殺傷力が高いような気もするけど、想像はつきそうだしこれでいいか。


(まぁいかにもシンプルでし初心者用って感じだね)


 フィドは肩の上から本をのぞき込んで、印象を述べる。


(それで具体的な魔法の使い方は『魔力を制御し、体内から放出すると同時に魔法を発動させるためのイメージを持つ』……とこれまたやってみねぇと難しいそうだなぁ)


 今まで行ってきた魔力制御は、体内で循環させたり体の一部に集中させるような体内で完結した魔力の取り扱いだったから、いまいち体外に魔力を放出するイメージが掴みにくい。なんとなくでも試してみるか。


(ちょっと魔力を手から放出してみるからさ、確認してくれないか?)

(わかるかなぁ?)


 フィドが肩から羽ばたき、向かい合った木に留まったのを確認する。そして一晩で身に付き始めた魔力の体循環を行いながらも、手のひらに魔力を集中させていく。


(いくぞー!!)


 合図をしたのと同時に、手元に集めた魔力に対し、循環させていた魔力を打ち付けた。空気砲の要領で魔力を体外に出せないかと考えてみたんだけど、どうだろうか?


 ——————————手のひらから魔力が抜けていっている。タイヤがパンクした時のように、プスプスと魔力が大気に溶けていくように力が放出されていく。


(おお!アルガ君なんか赤い透明な靄みたいなのが手元から出ていたよ!)

(……ステータスを見てみたけど魔力も減ってるし、多分魔力の放出ができているな)


 ……なんだか、昨日から妙に魔法がうまくいくな。俺ってこの感じだと魔法に関する宿命を持っているのかもしれない。


(この分だとスキルもあるし、属性魔法もうまくいきそうだね)

(だといいけど。とりあえず最初は呪文を使ってやってみるとするか)

(うーんと……本に書いてある例文は『風よ、刃となりて敵を切り裂け』だね)


 切り株からひょいと立ち上がり、足を肩幅間隔に広げ楽な体勢をとる。そして昨日今日で、もはや体に染みつきかけている魔力循環を今一度施していく。


(ふぅーー一もはや慣れたもんだな)

(確かにねぇ。あんなに魔力の知覚は苦戦していたのに、もう魔力を放出するところまでできているんだものね)


 切り株に器用に座りながらこちらを見つめるフィドがそう宣う。ムカつく野郎だ、全く。


(うっせ!人には向き不向きがあるんだよ!)

(ハイハイ、早く【風刃】を使ってみてよ)


 魔法を発動するイメージだな……風刃は空気を圧縮して敵に飛ばす魔法だから、手の中に発生させた台風と魔力を右手で握りつぶして圧縮して……ぶん投げるイメージでどうだろうか?右手に溜め込んだ魔力を呪文の詠唱と共に放出する……なんかそれっぽいな。


(そこで空気の刃を飛ばすイメージだ!呪文は『風よ、刃となりて敵を切り裂け』だよ!)


 早速の話を復唱するようにフィドが脳内で大声をだす。そのぐらい覚えてるっての。


 右手を地面に向けて垂らし、魔力と空気を集めていくイメージを持ちながら指を握りこむ、。そして左手を右手に添え、魔法が暴発しないように抑え込む。そしてなんだか恥ずかしいポーズだな、そんな心も押さえ込んで呪文を詠唱していく。


「風よ、刃となりて敵を切り裂け!!!」


 すると、手首の周りを囲うように突如緑色の紋様が刻まれた魔法陣が浮かび上がり、光を放った。これは村で魔法を見かけるときと似通った光景だ。間違いなくうまくいっている。好機を逃してはいけない!!


(よし!ここで手を開いて魔力を放出だ!!)


「風刃!!」


 今までにない倦怠感が身体を襲うのと同時に、半月状の魔力が右手から放たれ、雑木林に向かって飛んでいった。魔力の塊は雑木林に繁茂した枝を切り裂きながら、木に大きな傷を残して消滅した。




「かっけぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!」

(声でかいよ、アルガ君)



(しょうがないだろ?夢にまで見た魔法を始めて使ったんだぞ!?)

(魔力強化のことを忘れないで上げておくれよ)


 だってちょっと地味だし……実はあんまり魔法って感じがしていなかったのだ。……そんなことはいいんだ。ちゃんと魔法は成功していたのか確認するためにステータス画面を開く。

 

(ステータスを確認したけど、ちゃんと風刃が表示されていたし、成功ってことで良いな)

(おっ!じゃあこれで風刃は覚えられたってことだ)

(そうみたいだな。これもまさか一度で習得できるとは)

(多分スキルの効果あると思うよーん)

(だとしたら、どのぐらい効果があるのか調べるためにも、他の属性は心得スキルをとらないで練習してみるか)


 

 ——————————フィドには悟られないように何とか包み隠していたが、俺の心は揺れ動いていた。初めて発動した属性魔法は思った以上の威力を誇っていたのだ。使い方を誤れば、人一人を殺しかねないという実感と世界が広がる好奇心が内包された心境はなんとも複雑だった。これが力を手に入れるということなのか、決して力に溺れてはいけないと心に誓った。まぁそんな悩みは魔法の練習を楽しんでいるうちに忘れてしまったけどな。


 



 ――――――――――――――――――――――――――





(喉が渇いてきたし、腹も減ってきたし、何よりまりょ欠だし帰ろうか)

(ま、まりょ欠??何のことだい?)

(ガス欠みたいに魔力が無くなりかけていることを表現しただけだよ。わざわざ説明させんな!)

(なんかアルガ君おかしなテンションになってるなぁ)


 数時間もひたすら魔法の練習をしていたのだ、多少の疲れはあって然るべきだろう。


(でも、水と土属性の魔法はできなかったかー)

(理由が俺の魔法適正の偏りなのか、心得スキルの有無なのかはわからなかったけどな)

(まぁ心得スキルは全部取っておくのがいいんじゃないかい?アルガ君も言っていたけど、そこまでコストが重いわけじゃないしね)


 ……心得スキルは取ってしまおうか。全属性とっても45ptなわけだし。早いとこ魔法をたくさん覚えてしまって、師匠から無詠唱魔法を教えてもらうために時間を割きたい。


{いてっ…頭に乗るなよ!」


 帰るために本を袋にしまおうとしているとフィドが徐に額に飛び乗ってきた。

 

(そうだ!僕も魔法を使えるようになったかも試していいかい?待っていたんだよ!)

(何を言ってるんだ?)

(君の魔力を使って、僕が魔法を並列してつかえるよぉ!)


 いろいろ聞きまくっていたからか、フィドの説明が端的にわかりやすくなってきたな。俺の体には俺の意識とフィドの意識が存在しているから、それぞれの想像力で魔法分担して扱うことができるというわけだな。


(……おもろいな……お前が魔法を使えるのなら、俺には魔力以外の負担がないから、擬似的な無詠唱が可能になるってわけか)

(わかったか……面白いでしょ?)

(めっちゃ強そうではある。……でも今日は無しな?MPもうねぇわ)

(なんと殺生な!)

(しゃあねぇだろ?魔力がまだまだ全然足りてないんだから。魔法を覚えるだけじゃなくて、魔力も鍛えていかないとなぁ)

(魔力量を増やす方法は、教本に書いてないのかい?)

 

 確かにそれもそうだと納得した俺はペラペラと教本を捲り、該当するページを探していく。


 ……おっ!ここかな?


『魔力量は魔物を討伐や鍛錬によって成長していく。成長の度合いは人それぞれであるものの、魔力量を増やしたいと考える者は、日々の魔力の消費を伴う鍛錬を怠らないようにするべきである。一例として、魔力を循環する瞑想を行い、魔力強化による魔力の消費を図ることも有効である。』


 ふむふむ。魔力が溜まり次第、魔力強化で魔力を消費していくようにしよう。師匠からもらったブレスレットがあって本当に良かった。ってこんな話をしている暇なんてないんだってば。ここ結構家から離れている場所なんだよ!


(とりあえずほんとに時間も無くなってきたし、急いで帰ろう)

(なんだかいっつもご飯の時間に追われているよねアルガ君ってば)

(時間が経つのが早いのが悪い)




 今日は魔力放出も風属性魔法も習得することができたし、大きな収穫を得た。それに伴って努力しなければいけないことも増えたけど、あいにく俺のモチベーションは無尽蔵だし、ゲーマーの性からして、育成は大好きなのだ。早く強くなるためにも、苦労は惜しまない。





―――――――――――――――――――――――――

【アルガ•リベルタ】 (4歳)

 (称号)ませた子供

(Level )3 次のレベルまで〈17rp〉  Spt〈11Pt〉

 HP 16/21

 MP 2/16

 SP 44/52

 筋力 11

 耐久  9

 敏捷 12

 魔法力 8

 運命力 9

 アルフィドの瞳 クラス 1 (Cond Lv10)


〈戦闘技能〉

 Active

 [魔法]

 ・魔力強化(ウィスマギア) 無・初

 ・風刃(エアル)      風・初

 

 Passive

 ・風魔法の心得 風属性魔法習得速度の向上 


〈非戦闘技能〉

 Active

 なし


 Passive

 ・家事見習い 家事を行う際の効率向上

 ・目覚ましい成長  6歳までの成長補正

 ・異界言語 異界の言語を理解できる

 ・初級演技 演技が少しだけ上手くなる

                      +

――――――――――――――――――――――――



 

魔法を覚えるプロセスを表現しましたので、今後はどんどん魔法を習得していきます。

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