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魔王はなぜ死ななければならないのか  作者: For AP
第二章 始まりの村
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9話:神王国

9話、10話はガッツリ設定回なので、簡単に読んで頂ければと思います。

 「美味しいです。これってスコーンですよね?」


 師匠とお茶を準備した後、師匠がどこからともなく持ってきた焼き菓子をいただいていた。


 「そうだよ。よく知ってるね」

 「もしかして手作りですか?」

 「菓子を売っている店なんてこの村にあるかい?


 思わず額に手を当てて考え込むもやっぱりこの村にはスコーンを売っていそうな店なんてものは存在していなかった。この村にある店は生活必需品を売っている商店や金物屋、大工ぐらいなものだ。大体が物々交換で成り立っている社会だから、貨幣を使うのも村からでて町に行く時ぐらいだしな。


 「やっぱり手作りなんですね」

 「そうさ、昔帝国の方で学んできたんだ。時間つぶしの趣味のようなものだけどね」


 にしてはめちゃくちゃ本格的だなぁ。前世でそんなに食べたことがあるわけじゃないけど、すごく美味しそうな色と香りが漂っている。正直早く食べたい。


 「それじゃあいただきます」

 「どうぞ、たくさんあるから好きなだけ食べてね………あ!この後ちょっと動くだろうから食べ過ぎはダメだよ?」


 サクサクとした食感と共に、バターの豊かな香りが鼻腔をくすぐる。うーんめちゃくちゃ美味しい。本当に師匠はなんでもできるんだなぁ。師匠が淹れてくれた美味しい紅茶と一緒にスコーンを楽しんでいると、ペロリと1つ食べ切ってしまった。


 「師匠!美味しいですー!!食べすぎちゃいますよ!」

 「ハハッ!嬉しいなぁ。長いこと人とお茶をする機会なんてなかったからね。大人衆での話し合いは大体酒盛りになってしまうからさ」


 ……父さんも会合に行くといつも酔っぱらって帰ってくるからな。まぁ15歳ぐらいから酒を飲む世界だし、前世よりもっとアルコールが身近なんだろう。


 師匠は久々のお茶会がさぞかし嬉しかったのだろう、笑顔を浮かべながら紅茶を飲む。紅茶もめっちゃいいやつなんだろうなぁ。おいしいとは思うけど、違いがわからん俺が飲んでしまうのが勿体無い。


 「あ、ありがとうございます師匠!」

 

 黙々と食べ進め、いつのまにかなくなってしまった紅茶を師匠が注いでくれた。


 「この紅茶はどこのものなんですか?」

 「これは神王国産のものだね。昔、神王国に住んでいた時に見つけた品種でね、お気に入りなんだ。神への供物として扱われることもある嗜好品だからモノはいいと思うよ?」


 ひぇーやっぱりめっちゃいいものじゃないか。紅茶は神王国産かぁ……帝国の方お菓子作りを学んできたっていうけど、師匠はどこの出身なんだろうか。


 「師匠は帝国と神王国どちらの出身なんですか?」

 「僕は共和国の出身だね。この村に似たすごく長閑な村の出身さ」

 「共和国というと、オルザディオ共和国のことですよね?」

 「そうだね。アルガはあまり地理に自信はないのかな?地理について簡単に教えてあげようか?」

 「是非ともお願いしたいです!」


 ——————————よし手短に三大国について説明しよう!そう言った師匠は手をナプキンで拭き、メガネをクイっと掛け直した。


 「じゃあます僕たちが住んでいるこの村、オリガン村に1番近い国であるオルザディオ共和国について話していこうか」


 「オルザディオ共和国はこの世界、人界(ミズヘイル)の西側に位置する大国だね。国力的に2番目の地位にあるとされる大国で、首都ガマドは世界一の商業都市として有名だ。すごい賑わいで面白いから、いつか旅をしてみるといい」

 「どんな場所なんでしょうか?村から出たことないので想像もつきません!」


 まぁ東京に住んでいたから人混みには慣れているけど、異世界ということもあってコンクリートジャングルとは違う趣が楽しめそうだ。個人的には露店巡りみたいなことをして、買い食いをしてみたい。


 「なら尚更楽しめるかもね。色々な国の特産品や人が一ヶ所に集まっているから、街を歩き回るだけでも楽しいよ」


 「後ははなんと言っても多様性の豊かさだ。様々な氏族が集まってできた国だから、まさに人種の坩堝と言える国だね。だけど、その分纏まりがなくて国としての体裁を保つことがギリギリだったんだけど、数十年前にリーダーシップのある獣人が出てきて、一気に成長しているんだ」


 獣人だったり、森人だったり……会って話をしてみたいなぁ


 「当然歴史も短くて、貴族みたいな特権階級も少ないから格差の小さい国と言えるかもね」

 「なんか良さそうな国ですね。いや、それはそうか!師匠の故郷なんですもん」

 「そう言ってもらえると嬉しいな。しばらく帰っていないけど、久しぶりに帰ってみようかな」


 懐かしむように目を細めた師匠は窓の外を見つめる。望郷の念に浸っているようだ。


 「僕も連れて行ってくださいよ!」

 「あぁ、是非ともついてきてくれ。1人で旅行するのも寂しいからね」



 常々村の外に出てみたいと思っていたんだ……まぁ両親が許してくれるとは思えないっていうところがネックではあるけど。


 「後はそうだなぁ…アカシアの樹とアカシア学園についてかな?」


 師匠の家の本で知ったんだけど、アカシアの樹というのは確か……人類が生まれる前から存在していると言われる大樹のことだったかな?色々な言い伝えがあったけど、どれも世界を揺るがすような宝物がその根元には埋まっているということで一致していた。何ともワクワクする話だ。


 「どのぐらいの大きさなんですか?」


 その本でもすごく大きいということしか描写されていなかったけれど、ファンタジー世界の樹なんて総じて馬鹿げた大きさをしているものだとは思うのだが……


 「一つの都市を覆ってしまうぐらいの大きさだね。そんなアカシャの樹の根元に創立されたのがアカシア学園なんだ。世界中から優秀な人材が集まって、一ヶ所で勉学に励む。平和の象徴のような場所だよ。どうだい?アルガ入学してみたいかい?一応伝手はあるんだけど」

 「うーーん興味がないと言ったら嘘になるんですけど、師匠にこうやって教えてもらう方がタメになりそうです」

 「嬉しいことを言うねぇ。口が上手なんだからアルガは」


 師匠はシワの刻まれた手で俺の頭を撫でる。照れくさい感覚だが、今生の両親にもよく撫でられることで耐性ができてきた。なんでも撫でごごちがいいのだそうだ。にしてもアカシャ学園って東大とかハーバードみたいなところだよな?なんでそんなところに伝手があるんだ?


 「それと、アカシア学園には三大迷宮のうちの一つ、『アカシアの根幹』があるんだ。だからその特色を活かして、カリキュラムの一環として迷宮に挑戦することが決められているね。まぁ例外を除いて学生しか入れない場所だからあまり説明しないけどね」

 「学生しか入れないって聞いたら急に入学してみたくなってきたんですけど……」


 三大迷宮ってなんだ?すごく興味を惹かれる響きなんだけど。いかにも

 

 「…………」


師匠が悲しげに表情を歪める。しまった、思わず本音が出てしまった。別に師匠より学園の方が良いって言ったわけじゃあないですって!



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